ショックに飢えている世間に向けられた歌詞
サカナクションのボーカルの山口一郎は以前ラジオに出演した際に、この『ショック!』という曲を作った経緯について話していました。
「コロナ禍でやりたいことができない制限のある生活を送っている中で、みんなショックに飢えている、刺激を求めてしまっている。」と。
このようなショックに飢えている世間を描いたのが、『ショック!』です。
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夕方に酸っぱいサイダーを
急に飲みたくなった
哀れな僕は
もう
何も感じはしない
≪ショック! 歌詞より抜粋≫
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この「酸っぱいサイダー」というフレーズは、刺激の強いものを表しているのでしょう。
また、ショックに飢えている自分のことを「哀れな僕」と表現しています。
ショックに飢えて、つまらない日々を送っている自分が哀れに見えたのかもしれないですね。
そしてそんな「哀れな僕」は、刺激の強いものを飲んでももう何も感じません。
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ショックが足りない今日も
ゆっくり固まる感情
哀れな僕は
だんだん
機械になるだけ
≪ショック! 歌詞より抜粋≫
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「ショックが足りない今日も」という歌詞から、今日だけでなく昨日も一昨日もショックが足りない日々だったということが読み取れます。
そんな日々を繰り返した「哀れな僕」の感情は、ゆっくり固まっていき最終的には機械のようになってしまったようです。
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ショックで目が開いた
僕は痺れて感電中
ショックをただ虚ろに浴びるだけ
≪ショック! 歌詞より抜粋≫
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サビの部分では、タイトルにもなっている「ショック!」という歌詞が繰り返されます。
感情が固まって機械みたいになったはずだった「僕」が、大きなショックを受けているようです。
「ショックで目が開いた」「僕は痺れて感電中」ということは、ショックに飢えている「哀れな僕」ではなくなったのでしょうか?
しかしサビの最後には「ショックをただ虚ろに浴びるだけ」というフレーズが。
おそらく大きなショックを受けたにも関わらず、目は虚ろなまま感情のないままの「哀れな僕」がそこにはいたのでしょう。
どうやら機械から人間には戻れなかったようですね。
少女がショックの方へ歩いていく理由とは
2番になると主人公が変わり、今度は「少女」が出てきます。
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夕方に酸っぱい青春を
急に舐めたくなった
哀れな少女
もう
何も感じはしない
≪ショック! 歌詞より抜粋≫
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青春には、良い思い出もあれば、悪い思い出もあります。
このような青春を「酸っぱい」と表現しているようです。
少女は衝動に駆られるように、酸っぱい青春にすがりついているのかもしれません。
そんな衝動に駆られながらも何も感じることがない自分を、少女は「哀れ」だと思っているようです。
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ショックが足りない今日も
夢の中で無表情
哀れな少女
徐々に
奇怪になるだけ
≪ショック! 歌詞より抜粋≫
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少女も1番で登場した「僕」と同様に、ショックが足りない日々を送っているのでしょう。
少女の場合、「ショック」というより「刺激」といった方がしっくりくるかもしれません。
そんな少女は「夢の中で」さえも何も感じることがなく、自分の感情がわからなくなり「徐々に奇怪に」なっていきます。
まるで自分が自分ではなくなってしまうような感覚、と表現できそうです。
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ショックでうずくまった
君は涙で充電中
ショックのほうへ虚ろに歩くだけ
≪ショック! 歌詞より抜粋≫
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サビ終わりの歌詞で「君は涙で充電中」とありますが、少女の感情を示す唯一の方法が「涙」だったのかもしれないですね。
涙を流すことによって、感情のある自分を充電していたのでしょう。
しかし少女は「ショックのほうへ虚ろに」歩いて行ってしまいます。
これは酸っぱい青春にすがりついていたときのように、無意識にショックや刺激にすがりついている、と解釈できるでしょう。
少女は徐々に奇怪になり、ついに自らショックの方に歩み寄るようになったのだと思います。
サカナクションの凄さを感じずにはいられないMLVに注目
サカナクションの『ショック!』はYouTubeに公式から動画が上がっていますが、よく見るMV(ミュージックビデオ)ではなく、MLV(ミュージックライブビデオ)とあります。
「ショック!」が初めてフルで披露されたのは、サカナクションが2021年11月に開催した、オンラインライブ「SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE」の中でです。
そしてそのオンラインライブの映像を、そのまま使ってできたのがこのMLV。
つまり、ノーカットの一発撮りというわけです。
あまりのクオリティの高さに、サカナクションのメンバーはもちろん、出演している俳優さんや、カメラマンなどの裏方さん、関わっている全員が天才なんじゃないかと思ってしまいますよ。
そしてこのMLVで印象的なのが、サビ部分のワキワキダンス。
ストーリー性があってコメディー要素もあるMLVですが、ここにも山口一郎のメッセージが込められてるようです。
このMLVではマスコミや報道の薄っぺらさ、そして流行に乗っかることが正しいという、“不確かな”常識を表現しているように見えます。
カメラに写っていない間にスマホをいじるレポーター、世間の流行だと知って急に踊りだすキャスターたちなど、山口一郎から見る「現代」を皮肉を込めて伝えようとしているのかもしれません。
「ショック!」は山口一郎の目に映るコロナ禍が詰め込まれた作品だった
今回はサカナクションの『ショック!』の歌詞の意味を考察しました。
コロナ禍に入ってつまらない日々を送っている方や、何が普通なのかわからなくなってしまった方に、ぜひ聴いてほしい1曲です。
きっと普段気づくことができない、コロナ禍の世間の歪みや、いつの間にかひねくれてしまった考え方に気づかせてくれるでしょう。
ぜひMLVの細かい部分にも注目しながら聴いてみてください!