タイトル「惑う糸」に込められた意味を考察
菅田将暉が音楽アーティストデビュー5周年の記念日である2022年6月7日にリリースした新曲『惑う糸』は、令和を代表するマルチアーティスト・Vaundyが作詞作曲を務めた楽曲です。
日本テレビ系情報番組『news zero』のテーマソングとして、3月28日よりオンエアされています。
世界各地の様々なニュースをお茶の間に届ける情報番組を彩る楽曲として、どんなメッセージが込められているのか、さっそく『惑う糸』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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惑う糸は今日も、心の隙間を縫うように
ほつれにぶる感覚を注いだ
歩くために
≪惑う糸 歌詞より抜粋≫
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冒頭からタイトルの「惑う糸」というフレーズが登場します。
その糸は「心の隙間を縫うように」とあるため、主人公の日々の心の傷を修復するもののようです。
明日もまた歩き続けるためには、心の傷をそのままにしていてはとても耐えられません。
だから毎日糸で縫い、傷を塞いで何とか耐えています。
しかしその重要な糸が「惑う」とあることから、先の見えない未来を思って不安に駆られている様子が読み取れます。
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何も
「今」は、この先を怖がるあなたを抱きしめている
見るために今日も目を塞ぐ
≪惑う糸 歌詞より抜粋≫
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この部分は主人公からリスナーへのメッセージです。
「あなた」と同じように誰もが未来への不安を抱えていること、痛みに耐えながらも懸命に生きている「今」は、その不安を受け止めてくれていることを教えてくれます。
「見るために今日も目を塞ぐ」という言葉は、主人公が眠って夢を見る姿を表しているのでしょう。
主人公自身も苦しい現実から逃れたいと思っていることが伝わってきます。
過去に解けた人間関係への後悔
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惑う糸は今日も、人の隙間を縫うように
曇り濁る望遠鏡覗いた
探すたびに
「涙で流せるだろうか」
後悔ばかりが映り込みまた濁ってく
≪惑う糸 歌詞より抜粋≫
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「惑う糸」が次に縫い合わせるのは「人の隙間」です。
糸は傷を縫うだけでなく、別々に生きている人たちを結び合わせてくれるものでもあります。
主人公は「曇り濁る望遠鏡」で何かを探しています。
「涙で流せるだろうか」と後悔していることを考えると、これまでの人生で糸が解けてしまった人間関係を見ているのかもしれません。
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流すたびに何故か
「傷」は、この先を怖がるあなたを抱きしめている
見失うために目を塞ぐ
≪惑う糸 歌詞より抜粋≫
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後悔で涙を流す度に、負った傷が「あなたを抱きしめている」と歌っています。
痛くつらいだけの過去の傷が未来を怖がる気持ちを支えていることは、主人公にとっても不可解なことのようです。
そのせいか、過去を忘れようとして目を塞いでしまいます。
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夢見に映るその希望は、叶わず消えていく理想だ
先に映るその希望は、叶うのを待ってる未来だ
≪惑う糸 歌詞より抜粋≫
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夢の中で映し出される希望は「叶わず消えていく理想」で、決して手の届かないもの。
その一方で、現実的に未来を考えた時に浮かぶ希望は、「叶うのを待っている未来」です。
確かに未来への不安は簡単にはなくなりませんが、夢に逃げず自分自身の人生を受け入れて進むなら、願う希望を現実のものにできるでしょう。
一度は全てから目を逸らそうとしていた主人公が、前向きになったことが感じられますね。
光を灯すような人生を歩みたい
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僕らはこうして
忘れて、道を進んでいく
未来で振り返って
もう2度と迷わないように
僕らはそうして
忘れて、夜を進んでいく
最後に振り帰って
光を灯すように
≪惑う糸 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞は人生そのものを歌っていると解釈できます。
「僕ら」つまり全ての人は、日々たくさんのことを忘れながら暮らしています。
決して忘れられないと思っていた嫌な過去も、今抱えている未来への不安さえも、気づけば薄らいでいるものです。
そうした苦い記憶は未来で「もう2度と迷わない」ための道しるべになります。
そして、いつか人生の「最後に振り帰って光を灯すように」生きたいと思っているようです。
今は迷ってばかりいるけれど、その先に誰かの人生に光を灯し、道しるべとなれるような日々があればいいと、前向きな想いを言い表しています。
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頬どくように
溶かすように
何度も終わりを探していても
契るように
愛すように
それは硬く縛られた。
見えぬように
≪惑う糸 歌詞より抜粋≫
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「頬どく」「溶かす」はどちらも糸と関連して「解く・解かす」という言葉に当て字をしたものと思われます。
この変換は人の温かみを表しているのではないでしょうか。
後半の歌詞にもあるように、友人や恋人など本当に大切な人間関係は「何度も終わりを探していても」切れない絆で結ばれています。
頬の温もりや心を溶かすような温かさは、独りでは味わえないものです。
「契るように愛すように」硬く縛られた関係は一見窮屈そうにも思えますが、それほど大切に思える人がいるということは優しく心を支えてくれます。
惑いながらも人生を歩き続けるために必死で進めた糸は、きっと素敵な明日を繋いでいってくれるはずです。
疲れた心に沁みるポップソング
菅田将暉の『惑う糸』は問題だらけの世の中で不安や迷いを抱える全ての人を肯定し、前向きな気持ちで生きるための力を与えてくれる楽曲です。Vaundyが監督を務めたMVでは、菅田将暉扮する男性が夢の中でポップスターに変身し、夢を忘れた現実で日常を進んでいく様子を印象的に描いています。
きっと忙しい一日の終わりに聴けば疲れた心を軽くしてくれるでしょう。