TVアニメ「【推しの子】」OP主題歌の歌詞を徹底考察!
音楽ユニット・YOASOBIが2023年4月12日に配信リリースした新曲『アイドル』は、4月クール放送アニメ『【推しの子】』のテーマソングとして書き下ろされた楽曲です。『【推しの子】』は「次にくるマンガ大賞2021」コミックス部門1位に選ばれた赤坂アカ、横槍メンゴによるマンガを原作としたTVアニメ。
田舎で産婦人科医をしている主人公のゴローの元に、人気アイドルグループ・B小町のセンターでゴローの“推し”である星野アイが双子の出産のために来院したところから物語が始まり、芸能界の表と裏を描きながらとある謎を追うお仕事サスペンスです。
その主題歌『アイドル』の原作小説は、原作者の赤坂アカが書き下ろした短編小説『45510』を基に制作されました。
『【推しの子】』のスピンオフで、アイが芸能界を去ってから16年後を舞台にアイと共にB小町で活動していた元メンバーの視点でアイの人物像を描いた作品となっています。
作品の世界観を忠実に描いた『アイドル』の歌詞の意味を考察していきましょう。
ファンから見た星野アイの姿
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無敵の笑顔で荒らすメディア
知りたいその秘密ミステリアス
抜けてるとこさえ彼女のエリア
完璧で嘘つきな君は
天才的なアイドル様
≪アイドル 歌詞より抜粋≫
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1番は星野アイのファンの目線で描かれています。
アイは「無敵な笑顔」でメディアを黙らせ「ミステリアス」な雰囲気でファンを惹きつけていて、少し「抜けてる」ところさえも彼女の魅力です。
ファンは「完璧で嘘つきな君は天才的なアイドル様」と称えています。
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今日何食べた?
好きな本は?
遊びに行くならどこに行くの?
何も食べてない
それは内緒
何を聞かれても
のらりくらり
そう淡々と
だけど燦々と
見えそうで見えない秘密は蜜の味
あれもないないない
これもないないない
好きなタイプは?
相手は?
さあ答えて
「誰かを好きになることなんて私分からなくてさ」
嘘か本当か知り得ない
そんな言葉にまた一人堕ちる
また好きにさせる
≪アイドル 歌詞より抜粋≫
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この歌詞は『45510』で描かれている、人気絶頂中のアイのライブ配信の様子を表しているようです。
アイはファンからコメントで何を聞かれても、のらりくらりとかわしていきます。
しかしファンにとっては「見えそうで見えない秘密は蜜の味」で、彼女の秘密を知るためにさらに彼女にのめり込んでいきます。
そして語られる「誰かを好きになることなんて私分からなくてさ」という言葉。
アイドルらしい発言の真偽はファンには分かりませんが、この言葉でまた彼女のファンは増えていきます。
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誰もが目を奪われていく
君は完璧で究極のアイドル
金輪際現れない
一番星の生まれ変わり
その笑顔で愛してるで
誰も彼も虜にしていく
その瞳がその言葉が
嘘でもそれは完全なアイ
≪アイドル 歌詞より抜粋≫
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彼女は「完璧で究極のアイドル」で、「金輪際現れない一番星の生まれ変わり」。
彼女が笑顔で「愛してる」と言うだけで、全ての人が虜になっていきます。
たとえその瞳に込められた感情や「愛してる」の言葉が嘘でも、ファンにとってはそれが完全な“星野アイ”の姿。
ここで「瞳(eye)」と「言葉(愛)」と「アイ」のトリプルミーニングになっているのも印象的です。
元メンバーが抱く想い
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はいはいあの子は特別です
我々はハナからおまけです
お星様の引き立て役Bです
全てがあの子のお陰なわけない
洒落臭い
妬み嫉妬なんてないわけがない
これはネタじゃない
からこそ許せない
完璧じゃない君じゃ許せない
自分を許せない
誰よりも強い君以外は認めない
≪アイドル 歌詞より抜粋≫
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2番の歌詞は『45510』の主人公であるB小町の元メンバーの視点で描かれています。
序盤から皮肉っぽく「はいはいあの子は特別です 我々はハナからおまけです」と語られます。
絶対的センターのアイと、彼女のバックダンサーとして引き立て役にさせられている自分。
グループの人気は「全てがあの子のお陰なわけない」と思い込もうとしてます。
とはいえ激しい嫉妬心は「ネタじゃない」からこそ、アイが弱音を吐いて本心を見せることは許せません。
弱い彼女を見てしまうと、そんな彼女に負けている自分が許せなくなるからなのでしょう。
だから常に完璧で「誰よりも強い君」でいてほしいと願っています。
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誰もが信じ崇めてる
まさに最強で無敵のアイドル
弱点なんて見当たらない
一番星を宿している
弱いとこなんて見せちゃダメダメ
知りたくないとこは見せずに
唯一無二じゃなくちゃイヤイヤ
それこそ本物のアイ
≪アイドル 歌詞より抜粋≫
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アイは元メンバーから見ても「誰もが信じ崇めてるまさに最強で無敵のアイドル」です。
「弱点なんて見当たらない」と言いつつ、本音は彼女の弱点を見たくないだけ。
「アイドル(idol)」という言葉はそもそも「偶像」という意味があり、崇拝の対象となるものを指します。
本当の彼女なんてどうでもいいから、いつでも自分たちの思い描く唯一無二の「本物のアイ」でいてほしい、という想いを表現することで“偶像”としてのアイを描いているのです。
人気アイドルの本心は?
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得意の笑顔で沸かすメディア
隠しきるこの秘密だけは
愛してるって嘘で積むキャリア
これこそ私なりの愛だ
流れる汗も綺麗なアクア
ルビーを隠したこの瞼
歌い踊り舞う私はマリア
そう嘘はとびきりの愛だ
誰かに愛されたことも
誰かのこと愛したこともない
そんな私の嘘がいつか本当になること
信じてる
≪アイドル 歌詞より抜粋≫
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3番は星野アイ自身の言葉が綴られています。
メディアを「得意の笑顔で沸かす」のは、隠しきりたい秘密があるから。
その秘密こそが子供の存在です。
ファンへの「愛してる」という嘘の言葉でキャリアを積むことにより、彼女は子供たちへの「私なりの愛」を示しています。
ここで出てくる「アクア」と「ルビー」は、彼女が産んだ双子の子供の名前です。
2人のために真実を隠して「歌い踊り舞う私」は聖母のような存在だと、自分の愛の強さを確信しています。
複雑な生い立ちを抱え「誰かに愛されたことも誰かを愛したこともない」アイですが、いつか自分の「愛している」という言葉が本当になる時が訪れるはずだと信じて活動を続けていました。
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いつかきっと全部手に入れる
私はそう欲張りなアイドル
等身大でみんなのこと
ちゃんと愛したいから
今日も嘘をつくの
この言葉がいつか本当になる日を願って
それでもまだ
君と君にだけは言えずにいたけど
ああ やっと言えた
これは絶対嘘じゃない
愛してる
≪アイドル 歌詞より抜粋≫
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他者からは完璧なアイドルと評価されていますが、アイは自身のことを「欲張りなアイドル」と表現し「いつか全部手に入れる」と決意しています。
つまり彼女本人にとって人気絶頂の“星野アイ”はまだ未完成なのです。
「ちゃんと愛したいから今日も嘘をつくの」という言葉が、彼女の実直さや愛を求める気持ちの大きさを表現しているように感じます。
「君と君」は双子の子供を指し、アイが作中で2人に本心から愛を伝えたシーンのことを表しているようです。
これまで語ってきた愛は嘘だったけれど、2人に伝える「愛してる」の言葉は「絶対嘘じゃない」と力強く伝えて締めくくられます。
主題歌を読み解けばアニメがもっと面白くなる!
YOASOBIの『アイドル』は様々な視点から1人のアイドルの姿を浮き彫りにしていました。アニメ『【推しの子】』を制作する動画工房が手がけた公式MVは、公開から6日で2000万回再生を突破し大きな注目を集めています。
これまでのYOASOBIの楽曲では珍しくラップで勢いよく語られるメッセージを読み取って、アニメの世界観とのリンクを楽しんでくださいね!