ジャパレゲ界の名曲「みどり」
2000年代よりジャパレゲ(ジャパニーズ・レゲエ)界を牽引してきたレゲエDeejay・CHEHON。
2022年5月には「THE FIRST TAKE」で代表曲『韻波句徒(インパクト)』を披露。
圧巻のラップパフォーマンスで多くのファンを熱狂させました。
今回考察する『みどり』は、2006年にリリースされたCHEHONの初期代表曲の1つ。
CHEHONの名を世に知らしめた愛の歌で、「みどり」という恋人への想いが綴られています。
一方、『みどり』の歌詞にはちょっと危険なダブルミーニングがあるといううわさも…。
そこで今回は、2つの仮定のもとで『みどり』の歌詞の意味を考察したいと思います。
愛した相手の名前はみどり
まずは「みどり=恋人の名前」と仮定して考察していきましょう。
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またもやこいつにやられちまった オレの心奪われちまった
毎度おおきにドンギマった こいつのため歌うわ
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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「みどり」に心を奪われ、「こいつのため歌うわ」と決めた「オレ」。
「毎度おおきに」にハートを射抜かれているところを見ると、「みどり」はお店の従業員だったのかもしれませんね。
そんな「みどり」と「オレ」の出会いやその後の関係性については、以下の歌詞から読み取れます。
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お前と出会ったのは高校ん時 場所はたしかそう道頓堀
想像以上のオレの好み 口説きおとしオレものに
そんなこんなで月日流れると もっとキレイなお前みたくてよ
買ってしまうよブランドもの お前むちゃくちゃ金かかるよ
お前がいないとオレちょっと病んでる お前のお陰でオレ歌書ける
お前といるとオカンちょっと泣いてる お前は悪くないオレは信じる
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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「みどり」と出会ったのは高校時代の道頓堀とのこと。
「想像以上のオレの好み」から、主人公は「みどり」の内面にも惚れていったことがうかがえます。
結果「みどり」を口説き落とした彼は、「キレイなお前」見たさに「みどり」にブランド物を買い与えるようになった様子。
すっかり「みどり」がいないとダメになった「オレ」。
そんな情けない息子の現状を知った「オカン」は、少しばかり悲しんでいるようですね。
続いて、2番の歌詞を見ていきましょう。
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たまにずぶ濡れになってやってくる 時間をかけ乾かしていく
みるみるキレイになっていく なぜか体重まで軽くなってる
お前といるとこのレゲエミュージック100万倍良く聞こえるねん
けれどいっつもダンスの途中でオレの前からいなくなるで
春になってキレイになって 夏になってちょっと痩せちゃって
秋になってまたキレイになって 冬に別れまた会う日まで
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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「ずぶ濡れになってやってくる」というのは、雨の日に「みどり」が家に訪ねてくることだと考えられます。
乾かしているのが服だとすれば、「なぜか体重まで軽くなってる」というフレーズは2人が体を重ねたことを暗示しているのかもしれません。
続く歌詞からは、レゲエミュージックが「100万倍良く聞こえる」くらい「オレ」が「みどり」にゾッコンであることが伝わってきます。
一方「ダンスの途中でオレの前からいなくなる」という歌詞からは、良いところでいなくなる「みどり」の淡白さも読み取れそうです。
どこか愛情に偏りが見られる2人。
末尾の「冬に別れまた会う日まで」を考慮すると、未練がありながら「オレ」は一年ほどで「みどり」と別れてしまったとも推測できます。
最後に、サビの歌詞を見てみましょう。
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(オレが)愛した相手の名前はみどり いつのまにかお前のとりこに
さみしいやんけ オレをひとりにしないでいてくれよ ずっとそばに
愛した相手の名前はみどり いつのまにかお前のとりこに
さみしいやんけ オレをひとりにしないでいてくれやー
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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「愛した相手の名前はみどり」
すがるような言葉が並ぶなか、この一言だけはさっぱりと吹っ切れたように感じられます。
寂しさや未練をリリックに変えることで「オレ」は気持ちを切り替えようとしたのかもしれません。
愛した相手は大麻の「みどり」?
さて、ここからは危ない方の解釈で歌詞を吟味したいと思います。
具体的には「みどり=大麻」という説です。
実際「大麻」にはハッパや草、野菜など、緑色に関連する俗称があります。
これらの点を踏まえ、もう一度『みどり』の歌詞を見てみましょう。
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またもやこいつにやられちまった オレの心奪われちまった
毎度おおきにドンギマった こいつのため歌うわ
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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「またもやこいつにやられちまった」や「毎度おおきに」からは、主人公「オレ」が大麻をリピートしていることがうかがえます。
「どんぎまった」は「薬物で絶頂になった」、「こいつのため歌うわ」は「また大麻を買ってキメるために歌で稼ぐわ」といった解釈ができそうです。
続いて、主人公と「みどり」の出会いや関係性について深掘りしていきましょう。
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お前と出会ったのは高校ん時 場所はたしかそう道頓堀
想像以上のオレの好み 口説きおとしオレものに
そんなこんなで月日流れると もっとキレイなお前みたくてよ
買ってしまうよブランドもの お前むちゃくちゃ金かかるよ
お前がいないとオレちょっと病んでる お前のお陰でオレ歌書ける
お前といるとオカンちょっと泣いてる お前は悪くないオレは信じる
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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初めて「みどり」に会ったのは高校時代の道頓堀。
「想像以上のオレの好み」からは、主人公が初めての大麻に酔いしれたようなイメージができます。
そう考えると「口説きおとしオレのものに」は、誰かに頼んで譲ってもらったり売り手と金額交渉をしたりして「みどり」を入手したという読みができそうです。
また「キレイなお前」が見たくて「ブランドもの」を買ってしまうというのは、一層の刺激を求めて上物に手を出すといった意味に捉えられます。
すっかり「みどり」に依存した主人公は、自分だけの力では歌も書けなくなりました。
「オカン」が泣いてる理由は、もはや言うまでもないでしょう。
続いて、2番の歌詞です。
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たまにずぶ濡れになってやってくる 時間をかけ乾かしていく
みるみるキレイになっていく なぜか体重まで軽くなってる
お前といるとこのレゲエミュージック100万倍良く聞こえるねん
けれどいっつもダンスの途中でオレの前からいなくなるで
春になってキレイになって 夏になってちょっと痩せちゃって
秋になってまたキレイになって 冬に別れまた会う日まで
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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「たまにずぶ濡れになってやってくる」は、しけったり濡れたりして質が落ちた「みどり」のことでしょうか。
乾かしているのが大麻だとすれば、「なぜか体重まで軽くなってる」は薬物依存によって体重が落ちているという意味かもしれません。
レゲエミュージックが「100万倍良く聞こえる」ほど強力な「みどり」。
「ダンスの途中」でいなくなるというのは、もっと絶頂にいたいのに効果が切れてしまうといった危ない解釈ができそうです。
春夏秋冬「みどり」に溺れる主人公。
末尾の「また会う日まで」からは、薬物をやめられない未来さえ想像できてしまいます。
最後に、サビの歌詞を見てみましょう。
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(オレが)愛した相手の名前はみどり いつのまにかお前のとりこに
さみしいやんけ オレをひとりにしないでいてくれよ ずっとそばに
愛した相手の名前はみどり いつのまにかお前のとりこに
さみしいやんけ オレをひとりにしないでいてくれやー
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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「愛した相手の名前はみどり」
続く歌詞にある「ひとり」と韻を踏んでいるのも意味深に思えてきますね。
寂しさや未練をリリックに変えるのさえ「みどり」頼みの「オレ」。
そんな主人公ですが、果たして「みどり」を断ち切ることはできたのでしょうか。
地球に生まれた「オレだけのメロディ」
今回は、CHEHON『みどり』の歌詞の意味を考察しました。「みどり」をどう解釈するかで大きく世界観が変わる、日本語遣いが巧みな歌詞でしたね。
「みどり」が何を指すにせよ、主人公「オレ」は「みどり」のとりこ。
ただ、以下の歌詞を見てみると、そんな「オレ」の物語にもハッピーエンドの兆しが見えてきそうです。
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壮大で果てしなく広い 地球に生まれたことがキセキ
浮かんできたオレだけのメロディ 産んでくれた人に届くように
≪みどり 歌詞より抜粋≫
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「オレだけのメロディ」というフレーズからは、主人公が「みどり」に頼ることなく歌を書いたことが想像できます。
広大な“緑”の大地に生まれたことに感謝し、かつて泣かせたオカンに自分の音楽を届ける。
そんなハッピーエンドこそが『みどり』の結末であることを願ってやみません。