映画「ROOKIES−卒業−」主題歌
甲子園出場を目指して熱血教師と奮闘する個性的な不良たちの成長物語『ROOKIES』。原作・森田まさのりの大人気漫画で、2008年にはドラマ化、翌年にはその完結編として映画『ROOKIES−卒業−』も公開され、どちらも大ヒットを記録しました。
そんな熱い青春物語とタッグを組んだのが、福島県出身の4人組ボーカルグループ・GReeeeN。
今回考察する『遥か』は『ROOKIES−卒業−』の主題歌で、多くのファンの間で「泣ける曲」として絶大な人気を誇っています。
旅立ちを綴った歌詞やエモーショナルな曲調から、卒業ソングとしても広く知られている名バラードです。
ドラマ版の主題歌『キセキ』とともに、GReeeeNの代表曲ともいえる『遥か』。
果たしてその歌詞には、どのような意味が込められているのでしょうか。
支えられながら夢の舞台へ
今回の考察では、夢を追って地元を離れていく主人公をイメージして歌詞を解釈しました。
実際、MVでは、映画監督を目指して上京した青年とその家族の物語が描かれています。
夢に向かって旅立とうとする主人公を想像しつつ、冒頭の歌詞から見ていきましょう。
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窓から流れる景色 変わらないこの街 旅立つ
春風 舞い散る桜 憧ればかり強くなってく
「どれだけ寂しくても 自分で決めた道信じて、、、」
手紙の最後の行が あいつらしくて笑える
≪遥か 歌詞より抜粋≫
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車や電車の中から、過ぎる風景に思いを馳せている様子の主人公。
春の切ない景色に見送られ、新しい世界への憧れや期待が大きくなっているようですね。
続く歌詞は「どれだけ寂しくても 自分で決めた道信じて、、、」。
手紙をくれた「あいつ」は、仲良くしていた友人や恋人でしょうか。
離れ離れになる仲間からの “らしい”メッセージ に、思わず笑みがこぼれます。
そしてもちろん、主人公が別れるのは「あいつ」とだけではありません。
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「誰かに嘘をつくような人に なってくれるな」父の願いと
「傷ついたって 笑い飛ばして 傷つけるより全然いいね」母の愛
あの空 流れる雲 思い出す あの頃の僕は
人の痛みに気づかず 情けない弱さを隠していた
気づけばいつも誰かに支えられ ここまで歩いた
だから今度は自分が 誰かを支えられるように
≪遥か 歌詞より抜粋≫
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いつだって支えてくれた父と母。
主人公が、父からは正直さや誠実さを、母からは優しさやしなやかさを教わったことが読み取れますね。
そして門出の今、過去の自分の行いを回顧している様子です。
情けない自分を隠してしまったり、人の痛みに無自覚だったり。
両親の想いとは裏腹な面があった主人公ですが、これまで支えられた分だけ「今度は自分が誰かを支えられるように」と決意を新たにします。
次の歌詞はこちらです。
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「まっすぐにやれ よそ見はするな へたくそでいい」父の笑顔と
「信じる事は簡単な事 疑うよりも気持ちがいいね」母の涙
≪遥か 歌詞より抜粋≫
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ここでも両親の想いが綴られていますね。
不器用でも真剣に挑戦すること、疑うよりもまずは信じること。
父の笑顔や母の涙とともに、主人公は彼らの想いを抱いて新しい未来へと旅立ちます。
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さようなら また会える日まで 不安と期待を背負って
必ず夢を叶えて 笑顔で帰るために
≪遥か 歌詞より抜粋≫
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優しくストレートな別れの言葉。
壁にぶちあたって涙することがあっても、必ず笑顔で帰ってくる。
目標を持って旅立つ全ての人に突き刺さる決意表明ですね。
続く歌詞でも、主人公の固い決意が綴られます。
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本当の強さ 本当の自由 本当の愛と 本当の優しさ
わからないまま進めないから 「自分探す」と心に決めた
≪遥か 歌詞より抜粋≫
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強さ、自由、愛、優しさ。
弱さを認めるという強さがあったり、自由に生きるがゆえの窮屈があったり、愛情や優しさが人を駄目にしたり。
人生において大事な概念ほど、はっきりした正解は見出せないものです。
それでも、自分なりの強さや自分なりの愛を見つけようと主人公は歩みを進めます。
「本当」を明らかにすべく「自分」を探す。
人生で大事なものは、いつだって外側ではなく自分の中に眠っているのではと思えてきますね。
そんな気づきが得られたところで、いよいよ曲も終盤です。
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春風 想い届けて 涙を優しく包んで
必ず夢を叶えて 笑顔で帰るために
さようなら しかられる事も少なくなっていくけれど
いつでもそばにいるから 笑顔で帰るから
≪遥か 歌詞より抜粋≫
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別れの涙を包み込む風に「想い届けて」と主人公が願いをかけているように読み取れます。
家族や友人から多くの想いを受け取った主人公。
「次は自分が返す番だ」と、春風に思いを馳せているのかもしれません。
そして何よりの願いは「笑顔で帰る」こと。
遠く離れていても「いつでもそばにいる」と語る主人公には、残していく者への愛や優しさが強く感じられます。
最後の歌詞も見てみましょう。
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どれだけ寂しくても 僕らは歩き続ける
必ず帰るから 想いが風に舞う あなたの誇りになる
いざ行こう
≪遥か 歌詞より抜粋≫
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「どれだけ寂しくても」という「あいつ」の言葉をしっかり自分の物にしているのがとてもエモーショナルですね。
その直後のフレーズ「僕らは歩き続ける」は、家族や仲間たち、ひいては『遥か』を聴く私たちリスナーもそれぞれの人生を歩んでいくという当たり前に気づかせてくれます。
誰かを誇りに思うことはよくありますが「あなたの誇りになる」という熱い気持ちはなかなか抱けるものではありません。
支えてくれた人を思いやりながら新世界へ踏み出す主人公は、すでに「本当の強さ」や「本当の愛」を手に入れているのかもしれませんね。
それぞれの夢を、家族愛を
今回は、GReeeeN『遥か』の歌詞の意味を考察しました。大切な人からのたくさんの学びや、彼らに対するストレートな想いがぎゅっと詰まった楽曲でしたね。
卒業、就職、上京など、人生の分岐点に立っている人には特に刺さる歌詞だったのではないでしょうか。
音楽活動と並行して歯科医師国家試験に挑戦していたGReeeeNのメンバーにも重なる部分があったかもしれません。
なお、シングル『遥か』には、カップリング曲『遥か彼方へ ~Piano Version~』という『遥か』のピアノバージョンも収録されています。
繊細なメロディーに耳を澄ましながら、家族からの大切な言葉かけなどについて記憶を巡らせてみるのもよいですね。
HIDE、navi、92、SOHの男性4人組、福島県で結成されたボーカルグループ。 メンバー全員が歯科医師免許を持ち、医療との両立のため顔を伏せて活動中。 『愛唄』『キセキ』『遥か』『オレンジ』等、デビュー以来数々のヒット曲を生み出す。 『キセキ』は今も日本国内においてもっとも多くダウ···