ELTの代表曲誕生の裏にあった迷いと不安
ELTの愛称で親しまれる音楽ユニット・Every Little Thingが2001年にリリースし、フジテレビ系列の人気恋愛リアリティ番組『あいのり』の主題歌に起用されて大ヒットした17thシングル『fragile(フラジール)』。この楽曲が生まれたのは2000年3月にリーダーを務めていた五十嵐充が脱退し、ボーカルの持田香織とギターの伊藤一朗の2人体制になったばかりの頃。
それまで作詞経験がなかった持田は、迷いを抱えるその時の心境を正直に歌詞にしたためました。
タイトルの「fragile」とはフランス語で「脆い・壊れやすい」という意味を持つ言葉で、今にも壊れそうな自身の気持ちを反映したタイトルです。
レコーディング時には不安と極度のプレッシャーから歌が歌えなくなるトラブルに見舞われたもののつらい時期を乗り越えて世に送り出された『fragile』は、2001年オリコン年間カラオケチャートで1位を獲得し、第34回日本有線大賞では有線音楽優秀賞、第43回日本レコード大賞では金賞を受賞すると共に作曲を担当した菊池一仁が作曲賞を受賞。
NHK紅白歌合戦でも披露され、ELTの代表曲として長年愛され続けています。
アーティストとしての苦しい胸の内を恋愛ソングにどのように落とし込んでいるのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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いつもそう 単純で クダラナイことがきっかけで
傷つけてしまうよね 途切れてく会話 虚しいよ
言葉が不器用すぎて 邪魔ばかりする
好きなのに伝わらない こんな想い 切なくて
≪fragile 歌詞より抜粋≫
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人間関係のいざこざは大抵「単純で クダラナイことがきっかけで」起こるものです。
「言葉が不器用すぎて 邪魔ばかりする」とあるように、何気なく言った言葉で相手を傷つけたり、言葉の意図が相手にうまく伝わらず誤解されたりすることがあります。
さらには相手を傷つけたくないあまりに言葉少なになって、余計にすれ違いが起きてしまうこともあるでしょう。
「好きなのに伝わらない」というもどかしさを抱えて苦しむ主人公の想いが描かれています。
心から愛しているから揺れ動く心
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"愛しい"だなんて 言い慣れてないケド
今なら言えるよ 君のために
となりで笑っていてくれるのならば
これ以上 他に何も要らないよ
≪fragile 歌詞より抜粋≫
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「愛しい」など愛情を表現する言葉は何だか気恥ずかしくて口にしにくいと感じる人は少なくないのではないでしょうか?
この主人公もその1人ですが、本気で相手を愛しているからこそこの気持ちをはっきりと伝えたいと思っていることが伝わってきます。
いつまでも言葉を出すことに臆病になっていると、「好きなのに伝わらない」という状況は変えられません。
だから自分の心からの想いに気づいた今、「君のために」伝えようと奮い立ちます。
愛する人と一緒にいられて、その人が自分の隣で笑っていてくれるだけで心が満たされます。
「それ以上 他に何も要らないよ」の一言に、主人公の愛の深さが垣間見えますね。
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精一杯 背伸びして 平然を装っていたけど
余裕などないくせに また 笑顔つくってしまった
会えない夜はきまって 淋しさ おそう
好きだから不安になる こんな想い 悲しくて
≪fragile 歌詞より抜粋≫
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そんな主人公にさらなる問題が降りかかります。
もしかしたら相手の都合でしばらく会えないのか、その人と仲良くしている異性がいることを知ったのかもしれません。
嫌われたくなくて「精一杯 背伸びして 平然を装っていた」ものの、受け入れられたわけではないようです。
「余裕などないくせに また笑顔つくってしまった」のフレーズが主人公の健気さと切なさを表現しています。
当然会えない夜は淋しくて、嫌な想像ばかりが膨らみ不安が募ります。
本当に「好きだから不安になる」と分かってはいても、簡単に割り切れるほど心は単純ではありません。
明日への希望を持って一緒に歩んでいこう
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"守ってあげる"と あの時言ったこと
ためらう気持ちも 嘘じゃないよ
それでも 信じてゆこうとする想い
コワレテしまわぬように 抱きしめていたい
≪fragile 歌詞より抜粋≫
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いつか言った「守ってあげる」という言葉は本心ですが、不器用な自分が本当に守れるのだろうかとためらう気持ちも持っています。
それでも自分自身を信じ、自分と愛する人との絆を「信じてゆこうとする想い」を大切にしたいと願っています。
信じる気持ちは些細なことで壊れてしまう繊細なもの。
だからこそ「コワレテしまわぬように」優しく、また愛情深く抱きしめて大切にし続ける覚悟ができています。
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こんなにこんなに 君を好きになって
本当に本当に ウレシイから
たとえば この先くじけてしまっても
にぎりしめたその手を もう離さない
≪fragile 歌詞より抜粋≫
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恋は楽しいことばかりではありませんが、この人を好きになって嬉しいと思えるのは素晴らしいことです。
「こんなにこんなに」や「本当に本当に」という風に言葉が繰り返されていることによって、心からあふれ出るような想いの大きさが感じられます。
この先も問題や不安は尽きることがなく、時にはくじけてしまうこともあるでしょう。
それでも愛する人がいる喜びが力を与えてくれるから、いつまでもこの人と生きていこうと決意している様子が見て取れます。
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出逢えたことから 全ては始まった
傷つけあう日もあるけれども
"いっしょにいたい"と そう思えることが
まだ知らない明日へと つながってゆくよ
≪fragile 歌詞より抜粋≫
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1番と2番のサビで共通するこの歌詞には、愛の奇跡と幸福感が綴られています。
まず2人が出会わなければ恋は始まりませんでした。
「出逢った」ではなく「出逢えた」と表現しているところに、この奇跡を尊く思う気持ちが感じられます。
一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど傷つけ合うことは避けられません。
とはいえその日々を越えてなお「いっしょにいたい」と思える人となら、どうなるか分からず不安の尽きない未来でさえ希望を持って歩んでいけるはずです。
小さな言葉ひとつに気を取られていた冒頭から主人公の気持ちは変化していて、愛の力を借りて前を向こうとする様子が心に沁みます。
現在のELTの原点を感じる名曲!
Every Little Thingの『fragile』は持田香織が改めて歌と向き合い、アーティストとしての覚悟と決意を新たにする想いを恋愛に例えて綴った楽曲です。その後、彼女がユニットとしてもソロとしても魅力的な楽曲を作り続け、声帯結節を患いながらもライブツアーを精力的に続けてこられたのは、この楽曲があったからなのかもしれません。
様々な変化を受け入れながら前進していくELTの魅力を存分に感じてください!
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