「Eye's Sentry」を主題歌として考察
UVERworldの『Eye's Sentry』は、TAKUYA∞が作詞、克哉・Yuzuru Kusugo・Satoshi Shibayamaが作曲を担当した楽曲です。TVアニメ『青の祓魔師 島根啓明結社篇』のオープニングテーマに決定し、UVERworldが青エクとタッグを組むのは、今回で4回目となります。
『青の祓魔師』のアニメおよび映画の歴代主題歌をすべて担当しているあたり、青エクの制作陣がUVERworldに強い信頼を寄せていることが伺えますね。
主題歌として歌詞を考察するため、まずは青エクのあらすじをご紹介します。
『青の祓魔師』(通称:青エク)は、人間の住む物質界(アッシャー)と悪魔が住む虚無界(ゲヘナ)を舞台とした物語です。
主人公である奥村燐は、魔神(サタン)の落胤として生まれ、人間と悪魔の血を引いていますが、悪魔を祓う祓魔師(エクソシスト)を目指して祓魔塾に通い、修行を積みます。
島根啓明結社篇は、祓魔塾で出会った仲間である神木出雲が、啓明結社イルミナティにさらわれ、主人公らが救出に向かうという内容となっています。
「本当の自分」を見つめる歌詞の意味
青エクのあらすじを踏まえて、歌詞を冒頭から見ていきましょう。
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本当の自分を知られることで 離れてく程度の絆ならば
本当の自分を教えて 離れてしまえばいい
本当の自分を閉じ込めてでも 愛されたいと願う人のため
それだけの為に 変わっていければいい
≪Eye's Sentry 歌詞より抜粋≫
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「本当の自分」という言葉が何度も出てきますね。
相手に離れられないように、自分の欠点や暗い過去を隠してしまう経験は、誰しも身に覚えがあるのではないでしょうか。
「離れてしまえばいい」という歌詞は、そのような苦しみから解放させてくれる、強さを持ったメッセージだと感じます。
一方で、“どうしても離れられたくない”と思っている人にとっては、突き離すような冷たさを感じる歌詞でもあるかもしれませんね。
しかし、続きの歌詞で「変わっていければいい」と、新たな努力の方向も提示されています。
全員から好かれる必要はないけれど、「愛されたいと願う人」のためなら、隠さなくても良いような自分に変わっていけばいいのだと、背中を押してくれるような歌詞です。
本当の自分を閉じ込めてしまう人にとって、光になるような楽曲だと言えるでしょう。
青エクのあらすじを踏まえて聴くと、本当の自分を閉じ込めてしまう人として、様々な登場人物が思い浮かびます。
例えば、主人公である奥村燐は、悪魔の血を引いています。
サタンの落胤だと知られた途端、恐れられたり、離れられたりすることも多い一方で、信頼されるエクソシストになろうと努力しています。
また、島根啓明結社篇では、神木出雲が啓明結社イルミナティにさらわれた理由として、親友にすらも話せなかった彼女の暗い過去が明らかになります。
奥村燐の心情だけでなく、神木出雲の心情にも重なる歌詞である『Eye's Sentry』は、島根啓明結社篇の主題歌として、これ以上にないほどぴったりな楽曲だと言えるでしょう。
「Eye's Sentry」の曲名の意味とは
曲名の『Eye's Sentry』は、直訳すると「目の衛兵」となります。
「sentry」は警備員や見張りを指す英単語で、一般的には、特定の場所や施設の安全を確保する人物を指します。
直訳しても意味が分かりづらいので、歌詞を見ながら考察してみます。
『Eye's Sentry』の歌詞のうち、「eye=目」に関する表現があるのは、下記の箇所です。
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遥か遠くで君を見つけて 決めつけて誤解してる奴らの
瞳に映る 君すらも守りたい
本当の僕を知らない奴に 何を言われても構わないけど
君を傷つける 全てを許さない
≪Eye's Sentry 歌詞より抜粋≫
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「瞳に映る 君すらも守りたい」という言葉があり、この表現が曲名に繋がっていると考えられます。
“他者の瞳に君がどんなふうに映っていたとしても、守りたい”、そんな思いが込められているように思います。
君が「本当の自分」を出せなくて誤解されたとしても、「本当の自分」を教えて離れられたとしても、僕は君から離れないよ、と言っているようにも聴こえます。
君が周囲からどう思われているか、「本当の自分」を隠しているのか、は僕にとってはそれほど重要ではなく、僕にとって重要なのは、君が傷ついていないかどうか、なのではないでしょうか。
そのように考察すると、冒頭の「離れてしまえばいい」という、冷たくも聴こえる歌詞の後ろには、(僕は離れないけど)という愛に溢れた思いが省略されているように思えます。
『Eye's Sentry』の歌詞および曲名に、主題として込められているのは、“ひとりになっても良い”というメッセージではなく、“僕が君を守る”というメッセージなのかもしれません。
『青の祓魔師 島根啓明結社篇』のOPとして考察すると、本当の自分を隠してきた神木出雲を、啓明結社イルミナティから救おうとする奥村燐の姿と重なる歌詞だと捉えられます。
あるいは、悪魔の血を引き、他者から特異な目で見られる奥村燐を守りたいと願う、奥村雪男(双子の弟)を始めとする、祓魔塾で出会った仲間たちの心情とも重なるでしょう。
UVERworldが投げかける問いと勇気
最後に、ラスサビの直前の歌詞を考察します。
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本当の自分なんて
どこ探してもないのかも
愛は何処?
それは探さず作ってゆけるもの
戻れずとも
前には進めるもの
≪Eye's Sentry 歌詞より抜粋≫
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「本当の自分」に関する歌詞が続いた後に、「どこ探してもないのかも」という言葉が登場するので、大どんでん返しというかんじがしますね。
しかし、よく考えれば、「本当の自分」を隠しているように思えても、隠したいと思うのも自分自身なので、この言葉は的を射ているように思います。
隠したいと思うということは、自分は「本当の自分」を嫌っているはずです。
だからこそ、「本当の自分」はどこかに在るものでも、探すものでもなく、「作ってゆけるもの」なのだと伝える歌詞は、好きな自分になっていける気がして、勇気が湧いてきます。
離れないでいてくれる人を愛しながら、好きな自分を目指していこうというメッセージの込められた歌詞なのではないでしょうか。
「戻れずとも 前には進めるもの」という歌詞は、UVERworldが鳴らす音と、TAKUYA∞の歌声に乗るからこそ、より一層、聴き手に力を与えられるように思います。