やり残したことはないかい
沖縄の4人組バンド・かりゆし58が2010年2月にリリースした通算7枚目のシングル『雨のち晴れ』のカップリングで、彼らの代表曲の1つとなっている名曲『オワリはじまり』。当初はメンバーやスタッフ共に、この楽曲に強い思い入れはなかったのだそう。
しかし人気バラエティ番組のBGMに起用されたことをきっかけにファンが増え、甲子園や卒業式でも流れる注目曲となりました。
さらに2017年には、有川浩原作で北大路欣也・泉谷しげる・志賀廣太郎主演のドラマ『三匹のおっさん3〜正義の味方、みたび!!~』の主題歌にも起用され、今では人生の応援歌として広く愛されています。
どのようなメッセージを伝えているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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もうすぐ今日が終わる やり残したことはないかい
親友と語り合ったかい 燃えるような恋をしたかい
一生忘れないような出来事に出会えたかい
かけがえのない時間を胸に刻み込んだかい
≪オワリはじまり 歌詞より抜粋≫
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この楽曲では、サビ冒頭の「もうすぐ今日が終わる やり残したことはないかい」というフレーズが特に印象的です。
主人公が一日の終わりにふと、今日やり残したことはないだろうかと考えている様子が見えてきます。
日常を忙しく過ごしていると、時間が足りずにその日やっておきたかったことすら後回しになってしまう日もあるでしょう。
次第に親友と語り合う時間はなくなり、「燃えるような恋」をするほどの余裕も情熱も失ってしまいます。
毎日が同じような日の繰り返しで、何があったかろくに覚えていないこともある。
しかし命には限りがあり、人生の時間は有限です。
だから、一日の終わりにやり残したことがないと胸を張って言えるように一日一日を大切に生き、その「かけがえのない時間」を胸に刻み込みたいという想いが感じられます。
ちなみにサビ冒頭のフレーズの構想は、デビュー当時からあったそうです。
それまで音楽と離れた生活をしていたメンバーたちが自問し、30歳までには自分がこの人生で良かったと思える道にいたいという答えを出した時の心情がこのフレーズに表れています。
そして30歳の節目を迎え、バンドとしての再出発を誓ったタイミングでこの楽曲がリリースされました。
彼ら自身の迷いと決断の過去が投影されているからこそ、リスナーの心にも響くのでしょう。
ありふれた日々が人生を輝かせる
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夕飯時 町 人いきれ「ただいま」と「おかえり」の色
せわしない 木漏れ日 花びら「おはよう」と「さよなら」の音
ありふれた日々が 君や僕の胸に積もって光る
≪オワリはじまり 歌詞より抜粋≫
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1番では、町の日常の様子が表現されています。
「人いきれ」は、人がたくさん集まって体から発する熱や湿気が立ちこめることを意味する言葉です。
夕暮れ色に染まる町を人が行き交い、そこやかしこで「ただいま」と「おかえり」のやり取りが聞こえてきます。
翌日になると朝の風が木漏れ日や花びらをせわしなく揺らし、「おはよう」と「さよなら」の声が響きます。
どれも何気ない様子ですが、後になって思い返した時にそんな「ありふれた日々」こそ胸の中で輝く大切な瞬間だったことに気づくでしょう。
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今 動き始めたものや もう二度と動かないもの
今 灯り出した光や 静かに消えていく光
この夜の向こうで 新しい朝が世界に降り始めている
≪オワリはじまり 歌詞より抜粋≫
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この世の全ては、始まりがあれば終わりがあります。
それは物だけでなく人の命も同じで、今灯っている命の灯がいつまでも光り続けるとは限りません。
その一方で、朝と夜の時間の流れだけはいつまでも変わらず続いていくものです。
やり残したことばかりで気持ちが落ち込むような「夜の向こう」では「新しい朝が世界に降り始め」、自分の方へと近づいてきます。
この事実は、命はやがて尽きてしまうものの、生きている限り自分の人生を諦める必要はないことを訴えかけているように感じます。
一瞬で終わる一生だから後悔なく生きよう
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旅立ちの時はいつだって少し怖いけど
これも希望のかたちだってちゃんと分かってる
思い出に変わるのはきっと最後の最後さ
笑って「さよなら」を言えたらいいな
≪オワリはじまり 歌詞より抜粋≫
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大切にしていた場所から離れる「旅立ちの時」には、誰でも不安に駆られて怖く思うでしょう。
しかし、それは違う場所で新しい未来を作るための「希望のかたち」です。
今ある不安が「思い出に変わるのはきっと最後の最後」ですが、悲しさよりも希望に目を向けて笑って別れを告げたいという気持ちを歌っています。
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またすぐ明日に変わる 忘れてしまっていないかい
残された日々の短さ 過ぎ行く時の早さを
一生なんて一瞬さ 命を燃やしてるかい
かけがえのない時間を胸に刻み込んだかい
もうすぐ今日が終わる もうすぐ今日が終わる
かけがえのない時間を胸に刻み込んだかい
≪オワリはじまり 歌詞より抜粋≫
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今日が終われば、またすぐ明日に変わります。
これが当たり前になっているため、「残された日々の短さ 過ぎ行く時の早さ」を忘れてしまいがちです。
それでも本当は「一生なんて一瞬」だから、後悔なく生きたいものです。
「命を燃やしているかい」といつも自問しながら、毎日を懸命に生きようと背中を押してくれます。
人生の終わりに数え切れないほどの「かけがえのない時間」を思い出せるような、素晴らしい人生を送っていきたいですね。
「オワリはじまり」は毎日を力づけてくれる応援歌!
かりゆし58の『オワリはじまり』は、真っ直ぐな歌詞とボーカルの前川真悟の力強い歌声が聴く人の心を震わせる楽曲です。人生には数多くの終わりと始まりがありますが、人生そのものは一回きりの短いものです。
忙しさで追い込まれている時や気持ちが沈んでいる時は、この楽曲を聴いて心をリセットしてみてくださいね。