「元彼氏」というワードから感じる、曲を聴く前で既に漂う不穏な空気
My Hair is Badは「マイヘア」という愛称で知られている、新潟県出身の3ピースロックバンド。着飾ることのない、気持ちを直球で伝える歌詞が若者から支持を得ている秘訣でしょう。
今回、歌詞を考察するのはMy Hair is Badが2014年に発売した、1stフルアルバムに収録されている『元彼氏として』。
タイトルから不穏な空気が漂っていますが、歌詞の内容はその想像を超えるものとなっています。
MVでは、なにやら事件が起こっている様子が描かれており、容疑者として元彼氏3人が登場します。
曲を聴く前から事件性を感じるこの曲の、歌詞の意味を深く見ていきましょう。
一生懸命に元彼女の気を引こうとする元彼氏
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今の彼氏は煙草吸うし 背が低いし色が黒いし
今の彼氏は変な香水 いかついサングラス
どうなの?
≪元彼氏として 歌詞より抜粋≫
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この歌詞の主人公(元彼氏)は、元彼女が現在付き合っている彼氏の良くないと思うところを、一生懸命出していますね。
ただ、そこまで今の彼氏のことを知らないのか、言及しているのが外見に関することばかりというところが、安易かもしれません。
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前の彼氏の僕はどうだ 煙草吸わないし背も高いし
幼馴染だし すぐさま休み取れるし
どうなの?
≪元彼氏として 歌詞より抜粋≫
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ここで、前の彼氏だった自分の良いところを並べ始めます。
しっかり今の彼氏のことを否定した上で、自分と比べているところがポイントです。
ここまではただの皮肉のようにも聞こえますが、この後に少し状況が変わります。
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静かにしたまま考えて 今の彼に気付かれないで
素直にそのまま考えて 今からの相談だ
≪元彼氏として 歌詞より抜粋≫
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「静かにしたまま考えて」「素直にそのまま考えて」という歌詞は、「元彼女に自身と正直な気持ちで向き合って欲しい」という想いが込められているように思います。
単純に言葉だけをなぞるのであれば、自分の方へ誘導しているようにも感じられますが、何か主人公にとって、今の彼氏に引っかかるところがあるのではないでしょうか。
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想ってるよ見てるよ ずっと見てるよ
想ってる知ってるよ え?引いてるの?
今は君の彼氏じゃない でも今の奴とお似合いじゃない
何か騙されちゃってんじゃない 元、君の彼氏より
≪元彼氏として 歌詞より抜粋≫
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「ずっと見てるよ」という言葉は狂気じみていて、元彼女からするとゾッとするかもしれません。
そこからさらに「え?引いてるの?」と問いかける様子は、狂気の畳みかけに感じられます。
「今は君の彼氏じゃない」と本人もちゃんと理解しているようですが、「今の奴とお似合いじゃない」と言っているので、やはり自分の方が彼氏としてふさわしいと考えているのでしょう。
「何か騙されちゃってんじゃない」という言葉で、一生懸命に元彼女の気を引こうとしている様子が伝わってきますね。
現実を知ってもなお、元彼氏は食い下がる
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私ママになるなんて嫌だ ただ今はまだ
あの日のままがいいなんて 駄々こねてもだめだね
≪元彼氏として 歌詞より抜粋≫
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しかしここで、主人公にとっての悲劇が待っていました。
元彼女は、これから母親になると言うのです。
そこで主人公も心が折れて「駄々こねてもだめだね」と自分を落ち着けているように感じます。
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なら言わなきゃ わがままをそのまま
あれかな 金かな 時間ならいくらでもあったのに
≪元彼氏として 歌詞より抜粋≫
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とうとう主人公は、元彼女が今の彼氏と付き合っているのは「お金のため」だと考え始めます。
自分は時間ならいくらでもあった。
でも元彼女が求めていたのは、そこではなかったのかもしれません。
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嫌よ嫌よも好きなんじゃない
≪元彼氏として 歌詞より抜粋≫
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ただ、最後になっても主人公は食い下がります。
元彼女に「嫌」と言われても、それも自分のことを「好き」と表していると言うのです。
主人公が勘違いしているのか、分かっていても引き下がれないのか難しいところですが、後悔しないように言いたいことを最後まで言い切っているように感じました。
ただの狂気か元彼女を思って言っているのか、聴くほどに意味が深まる曲
今回は、My Hair is Bad『元彼氏として』の歌詞の意味を考察しました。一見すると主人公の執念が強いだけの曲に感じますが、歌詞を一つ一つ見ていくことで、元彼女のことを冷静に気遣っている可能性も出てきましたね。
ただ、その気持ちの大きさから気の引き方の不器用なところが感じられる曲です。
今回の考察を参考にしてぜひもう一度聴き、あなたなりの解釈を楽しんでみてくださいね。
・Gt.Vo. 椎木知仁(シイキトモミ) ・Ba.Cho. 山本大樹(ヤマモトヒロキ) ・Dr. 山田淳(ヤマダジュン) 新潟県上越市出身(在住)3ピースロックバンド 。 2013年2月に初の全国流通盤1stミニアルバム「昨日になりたくて」発売。 年間100本を超えるライブ本数を重ね、2014年には1stシングル「だま···