愛憎渦巻く東京で再会を願う
2026年1月9日に配信リリースされたKing Gnuの『AIZO』は、TVアニメ『呪術廻戦』の第3期「死滅回游 前編」のOPテーマとして書き下ろされました。笙や三味線の音色が和の雰囲気を醸し出すドラムンベースの楽曲で、ロックバンドらしい熱量と『呪術廻戦』との調和を感じられるでしょう。
配信リリース日に国内ストリーミング数合計300万回を突破したほか、リリースからわずか5日間のうちに、各種デイリー・週間チャートで驚異の52冠を達成。
3回目となるKing Gnuと『呪術廻戦』とのタイアップに対する期待度と、盛り上がりが見て取れます。
『AIZO』でどのようなメッセージを伝えようとしているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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愛憎愛憎渦巻いて
大東京狂騒歌って
廻れ廻れ時代の
生き恥にずぶ濡れで
愛憎愛憎を喰らって
参ろう大層な様で
離れ離れで終いよ
然らば又逢いましょう
≪AIZO 歌詞より抜粋≫
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タイトルの「AIZO」は、読みの通り「愛憎」を意味しています。
大都市である東京が、愛憎という相反する感情によって狂わされ、混乱していく様子が見事に表現された歌詞です。
失敗や苦悩を繰り返し「生き恥」を晒しながらも、止められない時代の渦の中で懸命に生きるしかありません。
他者からの愛も、憎しみも喰らって感情をすり減らしているものの、「大層な様」で「参ろう」と前進をやめないのは、そこに消えない愛があるから。
私たちは、相手の考えや正義を理解し合えず散り散りになってしまえば終わりの、虚しい世界に生きています。
それでも、憎しみを持ってただ戦うだけではなく、別れた人とも「又逢いましょう」と再会を願う温かな気持ちが一欠片でもあれば、状況は変えられるはずです。
どんなことをしてでも此の舞台を生き抜く

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ドラマチックに溺れて
未完成な私を認めて
気休めのフィクション
嘘と真の不協和音
出来損な愛でも許して
構わない 此の舞台生き抜いて
咬ませ狗の武者震い
ヤラレっぱなしじゃ
大人しくはなれない
≪AIZO 歌詞より抜粋≫
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直視するのが厳しい現実を前に、自分を守ろうとして理想や夢物語に縋る傾向は誰にでもあるでしょう。
そうした「未完成な私を認めて」、何とか日々を過ごしています。
しかし、思い描くのは所詮「気休めのフィクション」でしかなく、理想と現実が「不協和音」となって人々を襲います。
不器用で出来損ないの愛しか示せないとしても、「此の舞台生き抜いて」いくためならどんなことでもするつもりです。
「咬ませ狗」だろうと「ヤラレっぱなしじゃ 大人しくはなれない」という言葉から、反撃に出る覚悟が感じられます。
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LUV ME
正しさばかりで
HATE ME
全部奪って
LUV ME
愛憎塗れで
KILL ME
此処を連れ出して
≪AIZO 歌詞より抜粋≫
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「LUV ME(愛して)」のフレーズとかけ合う形で、対照的な「HATE ME(嫌って)」「KILL ME(殺して)」というフレーズが登場します。
いっそ嫌われてもいいから愛されたい、愛してくれるなら死だって受け入れるという極端で強い欲求が垣間見えますね。
それほど心が掻き乱されていることがわかるでしょう。
「正しさばかり」追求しても、全部奪われるだけの「愛憎塗れ」の世界から解放されたい気持ちが、「此処を連れ出して」の言葉から感じ取れます。
愛憎塗れ心でぶつかるのが人生

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愛憎愛憎抱き合って
最高潮よ何時だって
騙し騙しで良いの
代償なんて気にしないよ
愛憎愛憎に踠いて
外交愛想振り撒いて
万物問答無用で終いよ
然らば又逢いましょう
≪AIZO 歌詞より抜粋≫
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代償も気にせず、愛と憎しみに突き動かされてぶつかり合うとき、感情は「最高潮」を迎えます。
心の中は「愛憎に踠いて」、それを隠しながら愛想を振りまく毎日。
本音と建て前を駆使し、時には自分の心すら騙しながら現実と立ち向かうことには、意味があるはずです。
いずれ人も世界も、すべてが「問答無用で終い」になるのだから、未来を夢見て今この瞬間から逃げずに戦いたい、という想いが見えてくるのではないでしょうか。
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夢見心地で嘘みたいだろう?
今の東京では正気じゃ居られない
甘い言葉で疼かせて
今が最高とそう思わせて
情けは無用ね
世情無常で一生平行線ね
≪AIZO 歌詞より抜粋≫
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煌びやかで刺激的な「今の東京」は「夢見心地で嘘みたい」だから、正気を保つのが難しい状況です。
「甘い言葉」によって「今が最高」と錯覚させ、情け容赦なく人々を滅ぼします。
理想と現実、愛と憎しみは「一生平行線」のまま、交わることはありません。
だから事実を受け止めて、逃げずに生きる覚悟と決意が必要です。
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LUV ME
正しさばかりで
HATE ME
今日も無情いね
LUV ME
愛憎塗れで
KILL ME
心剥き出しで
≪AIZO 歌詞より抜粋≫
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どれほど愛を願っても、向けられるのは無関心や否定といった「無情い(つれない)」態度です。
そのために承認欲求は高まり、愛への執着が強まると憎しみが生まれるでしょう。
この楽曲では、それを悪いこととして描かず、生きることと結びつけています。
愛憎塗れの「心剥き出しで」人と向き合うことこそ生きている証明であり、現実が厳しくても、未来に希望を持って行動する大切さを教えてくれます。
もがきながら生きる現代人へのアンセム
King Gnuの『AIZO』は、相反する感情が交錯する世の中にあって、その感情を受け止めながら懸命に生きる姿が描かれた楽曲です。これは、デスゲームに放り込まれながらも仲間のために戦う『呪術廻戦』のストーリーとリンクすると同時に、現代を生きる全ての人に当てはまるでしょう。
ぜひじっくりと聴いて、人生という舞台を生き抜くための糧にしてくださいね。
