ミドルボイスという発声の仕方を知っていますか。
ミドルボイスは主にポップスやロックなどで使われる発声法で、これをマスターすると、地声のように力強く裏声の音域を発声することができます。
ミドルボイスをマスターすれば、カラオケでパワフルに歌うことができ、レパートリーの幅が広がるでしょう。
この記事でわかること
人は地声と裏声がある
人の発する声には、「地声」と「裏声」の大きく分けて2種類があります。
- 声帯が伸びずに閉じた状態で発声するのが「地声」
- 声帯が伸びていて開いた状態で発生するのが「裏声」
声帯が開いた状態で発声する「裏声」は、息がもれるため「地声」よりも細い音色になります。
この声帯が開く通常の「裏声」ではなく、声帯を閉じた状態で「裏声」を発することができれば、地声のように響きのするどい「息もれのない裏声」となるのです。
ミドルボイスって?
発声するときに、声がひっくり返してしまったり、出しにくくなってしまったりする音程のことを「喚声点(かんせいてん)」といいます。
多くの人がカラオケで経験があると思いますが、喚声点付近での発声はとても難しく、音程がぶれてしまったり苦しい声になったりします。
また、人間の声の喚声点は1つではなく、大きく分けると2点あります。
低い音からだんだん声を高くしていったときに、はじめに歌いづらい感覚になる音程が第1喚声点。
さらに声を高くしていき次に歌いづらい感覚になる音程が第2喚声点です。
ミドルボイスの「ミドル」とは、「中間」という意味合いで、第1喚声点と第2喚声点との間の声です。
ミックスボイスとの違い
ミドルボイスとミックスボイスを同じだと扱っている場合がありますが、それは間違いです。
ミックスボイスとは、低音域から高音域までを声門の開き具合を同じまま行う発声法です。
胸声(地声)の中で最も高い音域付近では、声門閉鎖が急に弱くなります。
ここからさらに高音を出そうとすると、声が裏返ってしまいます。
これを、はじめから声門閉鎖が弱い状態で徐々に高音にしていくことで、声が裏返ることなく発声することができます。
これがミックスボイスです。
発声原理を正しく理解してから、ボイトレを行いましょう。
正しいミドルボイスを出すコツと感覚
正しいミドルボイスを出すには、次のように段階を踏んでボイストレーニングを行います。
声帯の閉鎖を確実にする
ミドルボイスの出し方の最大のポイントは、声帯をしっかりと閉鎖させてから裏声をだすということです。
裏声で声帯閉鎖を確実にすることができれば、太くて芯のある振動した発声が可能になります。
低い声で「あー」と声を出してみてください。声帯が振動している感覚がわかったら、声帯が閉じているといえます。
逆に声帯の閉鎖が確実でなければ、細く弱い声になってしまいます。
どんな高さの音でも声帯を確実に閉鎖できるように練習することが必要です。
裏声でハミングする
人間は発声するときに、鼻腔・口腔・咽頭の3つの共鳴腔を使って音程を調節しています。
低い音は咽頭、中くらいの音は口腔、高音は鼻腔を共鳴させているのです。
ミドルボイスを発声するときには鼻腔共鳴をするように意識しましょう。
裏声でハミングすることが、鼻腔を共鳴させる感覚をつかむ練習法です。
レッスンにぜひ取り入れてみてください。
ミドルボイスを出す練習方法
それでは実際に声を出して、以下のミドルボイスを出すためのボイストレーニングを行ってみましょう。
裏声で声帯閉鎖
まず、「んっんっんっんっ」と音を短く切って裏声をだしてみます。
次に息を止めた状態で「ん」と発声してみましょう。
このとき、声帯閉鎖がきちんとされていれば、強い音を出すことができており、これがミドルボイスの基礎となります。
また、声帯閉鎖が苦手な人は、「ぐっ」と発声してみてください。
「ぐっ」という音を発声するときには強制的に声帯を閉じる筋肉である閉鎖筋がはたらくので、声帯を閉じることができます。
まずは、この声帯閉鎖のコツをつかむトレーニングをしてみましょう。
声帯閉鎖を保ったまま喉を開く
ミドルボイスを発声するには、声帯閉鎖を保ったまま喉を開かなければなりません。
「声帯は閉じて喉を開く」と聞くと混乱してしまう人もいるかもしれませんが、「喉を開く」とは、外咽頭筋がはたらき、声帯が前後に長く伸びる(声帯閉鎖)ことをいいます。
声帯を閉じる筋肉である閉鎖筋が弱いと喉が閉まってしまう原因になります。
喉を開くときには、「ま」の音を息漏れのしない裏声(ヘッドボイス)で発声します。
このとき、同時に声帯を閉鎖する発声練習を行います。
また、閉鎖筋の機能を停止させて、輪状甲状筋の機能だけを使って発声する方法が「ファルセット」です。
ミドルボイスをマスターする前に、まずは息漏れの多い裏声である「ファルセット」が出せるといいでしょう。
表情筋が硬い人は、声帯に関連する筋群が使いにくい状態になっていますので、表情筋を鍛えることで声帯をコントロールしやすくなります。
ミドルボイスを多用するアーティスト~男性編~
ここではミドルボイスの力強い歌声で私たちを魅了させてくれる男性アーティストをご紹介します。
男性のみなさんは、自分が歌うときの参考にしてみてください。
ONE OK ROCK「The Beginning」
Just give me a reason
to keep my heart beating
Don’t worry, it’s safe right here in my arms
現在の日本のロック界をけん引しているといっても過言ではないONE OK ROCK。
その人気は日本国内にとどまらず海外にまで広がっています。
ボーカルのTakaは森進一と森昌子の息子であり、まさにサラブレッド。
元ジャニーズ事務所に所属していたという経歴の持ち主です。
歌唱力と英語力が素晴らしく、さらにイケメンと非の打ち所がないボーカリストです。
『The Beginning』は、実写版映画「るろうに剣心」の主題歌として起用された名曲です。
冒頭の歌詞を和訳すると「俺に生き続ける意味をくれよ 心配しなくていいさ 俺の腕の中は安全だから」と、アニメの世界観を意識した歌詞になっています。
久保田利伸「LOVE RAIN ~恋の雨~」
このまま君の胸に飛び込んだまま
奪いたい ずっと涙もその瞳も
止まらない雨が 恋が降らせた雨が
ふたりを 昨日へ 帰さない
日本にR&Bを広め定着させたと言っても過言ではない久保田利伸。
音楽界の巨匠である山下達郎がその才能を認めた、実力派ミュージシャンです。
大学の卒論では「アフリカの音楽」をテーマにしたほどで、日本人には真似できない黒人のリズム感の持ち主です。
さらに歌唱力はアメリカでも大きな評価を得ています。
また音楽プロデューサーとしても活躍していて、20代という若さで中山美穂や小泉今日子など、トップアイドルたちへ楽曲を提供していました。
2010年にリリースされた久保田利伸の『LOVE RAIN ~恋の雨~』は、木村拓哉主演ドラマ「月の恋人~Moon Lovers~」のために書き下ろされた楽曲です。
甘くて切ない大人の恋愛の楽しさをストレートに描いた明るいポップチューンです。
秦基博「ひまわりの約束」
そばにいたいよ 君のために出来ることが僕にあるかな
いつも君に ずっと君に笑っていてほしくて
ひまわりのような まっすぐなその優しさを温もりも全部
これからは僕も届けていきたい ここにある幸せに 気づいたから
実力派シンガーソングライターである秦基博のつくる楽曲は、聴いた人誰をも感動させる力を持っています。
人間の細やかな心の動きを、大切に紡ぐような歌詞で描かれています。
『ひまわりの約束』は、映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌として2014年にリリースされました。
日本中が知っているドラえもんとのび太の友情を、秦基博自身の日常に重ねて大切な人と過ごす日々を歌った名曲です。
フル配信100万DLを達成していて、アニメ関連の楽曲としては異例の記録となっています。
ミドルボイスを多用するアーティスト~女性編~
ここではミドルボイスで美しくも芯のある歌声で私たちを魅了させてくれる女性アーティストを3人ご紹介します。
女性のみなさんは、自分が歌うときの参考にしてみてください。
いきものがかり「ラストシーン」
涙がとまらないよ 君に会いたくなる
春のひかりがほら あの日と同じみたいだ
ねぇ さよならをもう伝えなくちゃ
君だけがいない 今を生きてく
メンバーの3人で1999年に路上ライブを初め、2006年に「SAKURA」デビューするまでの7年間路上ライブでその実力を鍛えあげた「いきものがかり」。
聴く人の感性を刺激してくれるバラード曲から、元気で明るいポップチューンまでをボーカルの吉岡聖恵が見事に歌い上げます。
2017年に突然の「放牧宣言」で活動が休止されましたが、ファンは活動再開を待ち望んでいます。
「放牧宣言」の直前の2016年にリリースされた「ラストシーン」は、広瀬すず主演の映画「四月は君の嘘」の主題歌として書き下ろされました。
温かいメロディのミディアムバラードで、ボーカルの吉岡聖恵の優しい歌声が耳に心地よく響きます。
アンジェラ・アキ「サクラ色」
恋しくて目を閉じれば あの頃の二人がいる
サクラ色のあなたのことを サクラ色のわたしのことを
サクラ色の時代を忘れない ずっとずっとずっと
ずっとずっとずっと
2005年にシングルCD「HOME」でメジャーデビューを果たした、女性シンガーソングライターのなかでも異彩を放つアンジェラ・アキ。
『サクラ色』は、アンジェラ・アキが何をやってもうまくいかなかった頃を歌ったもので、ワシントンD.Cで見たアメリカの桜がモデルになっています。
夢に向かってがんばろうとしている人の背中を押してくれる名曲です。
Superfly「Beautiful」
世界で一つの 輝く光になれ
私でいい 私を信じてゆくのさ
Superflyはボーカリストである越智志帆のソロユニットで、パワフルかつソウルフルな歌声の女性シンガー。
2008年にドラマ「エジソンの母」の主題歌である『愛をこめて花束を』は、その圧倒的な歌唱力で大ヒットし、全国に名が広まりました。
ドラマ「マザー・ゲーム~彼女たちの階級~」の主題歌となった『Beautiful』は、現代の荒波を生きる女性たちへの力強い応援ソングです。
激しくも美しいロックナンバーで、自分自身を大切にして、周りの誰かをもっと大切にできるようにという願いが込められています。
越智志帆の力強い歌声を目指してみてください。
ミドルボイスをマスターしてワンランク上のカラオケを楽しもう!
今回は、ミドルボイスについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
ミドルボイスをマスターするには、かなりの練習量が必要ですが、マスターできれば、今よりもワンランク上の歌唱力を手に入れることができます。
上記に挙げたアーティストたちの歌い方なども、参考にしてみてはいかがでしょうか。
ミドルボイスを手に入れて、自分の大好きな曲をカラオケで思いっきり熱唱しましょう。
この記事のまとめ!
- ミドルボイスの出し方の最大のポイントは、声帯をしっかりと閉鎖させてから裏声をだすこと
- 鼻腔を共鳴させる感覚をつかむために裏声でハミングしよう
- 声帯閉鎖が苦手な人は「ぐっ」という音を発声することがコツをつかむトレーニングになる
- ミドルボイスを発声するには声帯閉鎖を保ったまま喉を開かなければならない