理論を解説したサイト・動画や音楽の理論書でよく見かける「ディグリーネーム」。
作曲や演奏に役立ちそうだから覚えてみたいけれど何の役に立つのか、どんな理論なのか分からないので、学ぶべきか迷っているという人も多いのではないでしょうか?
この記事のもくじ
ディグリーネームとは
ディグリーネームとは、キーの中心音からはじまる「ダイアトニックスケール」の各音やコードに、ローマ数字を当てるテクニックです。
第1音からの距離を表す「ディグリー(度数)」の概念と「キーが変わってもダイアトニックスケールの音の間隔は変わらない」という法則をうまく利用しているのが特徴。
特にコードの機能や役割などを考えるときに使われるもので、ポップスやロック、ジャズを含むポピュラー音楽からクラシックまで幅広く使われています。
また、音楽理論を学ぶときにも役立つので、色々な理論を学んでスキルアップしたい人はぜひマスターしておきましょう。
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メジャースケールのディグリーネーム
ディグリーネーム | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵ | Ⅶ |
メジャーキーのダイアトニックスケールとして使われる7音スケール「メジャースケール」の各音に、ディグリーネームを当てはめたものがこちらです。
第1音を表す「Ⅰ」からはじまり、第2音が「Ⅱ」、第3音が「Ⅲ」と音階が上がるごとに数字が増えるシンプルな仕組みになっています。
メジャースケールの音を基準にしているのも特徴で、音の間隔もⅠから数えると「全音、全音、半音、全音、全音、全音」とメジャースケールと同じ構成です。
ローマ数字や音楽用語が登場するため難しく感じますが、CメジャーキーとCメジャースケールで考える場合は「C=Ⅰ、D=Ⅱ、E=Ⅲ、F=Ⅳ、G=Ⅴ、A=Ⅵ、B=Ⅶ」。
キーGのGメジャースケールなら「G=Ⅰ、A=Ⅱ、B=Ⅲ、C=Ⅳ、D=Ⅴ、E=Ⅵ、F#=Ⅶ」と順番に数字を当てるだけなので、シンプルに考えて攻略してみてくださいね。
半音単位のディグリーネーム
ディグリーネーム | Ⅰ | #Ⅰ ♭Ⅱ |
Ⅱ | #Ⅱ ♭Ⅲ |
Ⅲ | Ⅳ | #Ⅳ ♭Ⅴ |
Ⅴ | #Ⅴ ♭Ⅵ |
Ⅵ | #Ⅵ ♭Ⅶ |
Ⅶ |
ダイアトニックスケールにない音を表すときに役立つのが、半音上げを意味する「#」と、半音下げを意味する「♭」を使った半音単位のディグリーネームです。
「#Ⅰと♭Ⅱ」のように異なる音名で、同じ音階の「異名同音」が多いので少し難しいですが、使い方を覚えれば幅広いキーに対応できるので、ぜひ覚えておきましょう。
スケールやコードの知識に自信がない、どちらを使えば良いか分からないなら、使用頻度が高い♭が付いたものを中心に使うのがおすすめ。
オーギュメントコードやディミニッシュ7thコードの知識があるなら、コードの構成音と度数に合わせて使いわけると、より音楽的に使えますよ。
また「♭Ⅲ・♭Ⅵ・♭Ⅶ」の3つを使えばマイナースケールやマイナーキーにも対応できるので、メジャーをマスターした人は挑戦してみましょう。
ダイアトニックコード
ディグリーネーム(3和音) | Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | Ⅶdim |
ディグリーネーム(4和音) | Ⅰmaj7 | Ⅱm7 | Ⅲm7 | Ⅳmaj7 | Ⅴ7 | Ⅵm7 | Ⅶm7(♭5) |
「ダイアトニックコード」とはダイアトニックスケールの各音に3度と5度を積んだ「トライド」、もしくは7度まで積んだ「セブンスコード」の集まりのことです。
このダイアトニックコードも、ディグリーネームを使って表記することができます。
上記の図はダイアトニックコードのディグリーネームをあらわしたもので、基本的な考え方や表記などはスケールと同じになっています。
違う点は、コードの特性を区別するため「m」や「maj7」などの記号が追加されていることのみ。
その他はスケールと全く同じなので、基本のディグリーネームを理解している人なら簡単に覚えられるでしょう。
ディグリーネームの読み方
ディグリーネームの読み方は、日本語の数字の読み方と同じです。
もちろん、海外では英語やその国の言葉を使いますが、日本の音楽シーンでは「Ⅰ=いち、Ⅱ=に、Ⅲ=さん…」という日本語読みが主流になっています。
例外なのが「Ⅱm→Ⅴ→Ⅰ」や「Ⅴ→Ⅰ」の進行パターンで、前者は「ツーファイブ・ツーファイブワン」、後者が「ファイブワン」と英語で呼ばれていますよ。
ディグリーネームの一覧表
度数/キー | Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | Ⅶdim |
C | C | Dm | Em | F | G | Am | Bdim |
D♭ | D♭ | E♭m | Fm | G♭ | A♭ | B♭m | Cdim |
D | D | Em | F#m | G | A | Bm | C#dim |
E♭ | E♭ | Fm | Gm | A♭ | B♭ | Cm | Ddim |
E | E | F#m | G#m | A | B | C#m | D#dim |
F | F | Gm | Am | B♭ | C | Dm | Edim |
G♭ | G♭ | A♭m | B♭m | C♭ | D♭ | E♭m | Fdim |
G | G | Am | Bm | C | D | Em | F#dim |
A♭ | A♭ | B♭m | Cm | D♭ | E♭ | Fm | Gdim |
A | A | Bm | C#m | D | E | F#m | G#dim |
B♭ | B♭ | Cm | Dm | E♭ | F | Gm | Adim |
B | B | C#m | D#m | E | F# | G#m | A#dim |
ディグリーネームに、12キーのダイアトニックコードを当てはめた一覧表がこちらです。
それぞれコードネームが違っていますが、全てのコードのルート音(根音)がダイアトニックスケールと同じ音の間隔になっているのが特徴。
もちろん、積まれている音とルート音の間隔も変化していないので、メジャーコードやマイナーコードなどの位置も全てのキーで同じになっています。
スケールとキーを使えば簡単に割り出せるもののため全てを覚える必要はありませんが、仕組みを覚えるのにはピッタリの表なので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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ディグリーネームのメリット
ディグリーネームについては把握できたけれど、何の役に立つか分からないという人も多いでしょう。
ローマ数字に変換するというシンプルなテクニックですが、実は作曲から演奏まで幅広く応用できるので、知っておくだけでもより音楽を快適に楽しめるようになりますよ。
最後にディグリーネームを覚えるメリットを、使い方の例や関連理論と共に紹介します。
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キーが変わっても対応できる
ディグリーネームを使うメリットは、キーが変わっても簡単に対応できることです。
セッションや作曲などでは、ボーカルの音域や好みに合わせてキーを上げたり下げたりすることもあるもの。
しかし、コードネームだけで考えると、既存のコード進行に引っ張られてしまいスムーズに対応できなくなってしまいます。
一方のディグリーネームで考える方法なら、キーさえ分かればダイアトニックコードを簡単に導き出せるので素早く対応できますよ。
「キーAのⅠⅥⅡⅤ(いちろくにーごー)で」「キーFのブルース進行で」のように、奏者間で素早くコミュニケーションが取れるようになるのもポイントです。
コードの役割を把握しやすい
各コードの役割が、把握しやすくなるのもディグリーネームを使うメリットです。
コードには、安定した響きを演出する「トニック」、やや不安定な「サブドミナント」、不安定でトニックに向かおうとする「ドミナント」などの役割があります。
ダイアトニックコードであればトニックに該当するのが「Ⅰ・Ⅲm・Ⅵm」、サブドミナントが「Ⅱm・Ⅳ」、ドミナントが「Ⅴ・Ⅶdim」です。
この関係はキーが変化しても変化しないため、ディグリーネームさえ覚えていれば、どんなキーの曲であっても素早くコードの役割が把握できます。
一方コードネームで考える場合は、キーGメジャーのD(ドミナント)とキーDメジャーのD(トニック)のような、同じ名前のコードが区別できないので役割の把握も難しいです。
このように、コードネームだけを使うよりも、素早くコードの役割が把握できるのがディグリーで考えることのメリットといえるでしょう。
曲作りに応用できる
ディグリーネームは作曲をするときにも便利です。
もちろん、ディグリーについて考えなくても曲作りは進められますが、知っていたほうがよりスムーズに作業を進められますよ。
特に役立つのが、曲に使いたいキーのダイアトニックコードを導き出すとき。
メジャースケールとキーの中心音さえ分かれば、7つのコード全てを簡単に導き出せるので、スケールの音だけを使って考えるよりも素早く作業を進められます。
また、コード進行パターンを汎用性の高い数字に変換することができるので、好きな楽曲の進行を自分の曲に取り入れるときに役立つでしょう。
使えるテンションもディグリーネームと組み合わせれば覚えやすくなるほか、どのスケールを使うか選ぶときにも役立つなど、幅広く応用できるのがこの理論の魅力です。
コード進行をストックできる
ディグリーネームはコード進行のネタをストックして、作曲の幅を広げたいときにも大活躍です。
コードの流れを相対的な数字で表すことができるので、楽譜で見た進行や耳コピした進行も全キーで使えるネタとしてストックできます。
王道進行なら「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」、小室進行なら「Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」、エモいパターンの定番は「Ⅲ7→Ⅵm」のように、有名な進行が手軽に覚えられるのもポイント。
さらに、トニックの代理コードとして使える「#Ⅳm7(♭5)」や、サブドミナントとして使える「♭Ⅶmaj7」のような、単発ネタを覚えるときにも役立ちますよ。
ストックを増やすほどに作曲スキルや理論の知識も高まるので、ぜひディグリーネームを活用して、色々な進行をストックしてみてくださいね。
ディグリーネームを覚えたら曲作りに役立つ!読み方やメリットを理解して活用してみよう
ディグリーネームは曲作りや演奏を力強くサポートしてくれる、便利な音楽理論です。
読み方やメリット、使い方を理解して活用していけば、より快適に音楽を楽しめるようになります。
また、テンションやスケール、転調などと組み合わせれば、複雑なサウンドを自由に扱えるようになるのもポイント。
まずは基本的な読み方、使い方を学ぶところからはじめてみましょう。
慣れてきたら簡単な曲や自作の曲をディグリーネームに変換して、どんな構成になっているか確認したり、響きと照らし合わせたりして音楽への理解を深めてみてくださいね。
この記事のまとめ!
- ディグリーネームとは、スケールの音やコードをローマ数字に変換したもの
- ディグリーネームはメジャースケールの音の間隔と並びを基準に作られている
- 色々なキーが変わってもコードの役割が素早く把握できるのが、ディグリーネームのメリット
- ディグリーネームは演奏だけでなく、作曲にも応用できる