小室進行を覚えて作曲の幅を広げたいけど、構造や使い方が分からないという人も多いのではないでしょうか?
名前だけでは具体的にイメージできないので、難しく感じてしまいますよね。
この記事のもくじ
小室進行とは
小室進行とは、シンプルな構造ながらも、マイナーの暗さとメジャーの明るさの両方を演出できるコード進行です。
トニックやドミナントなどの機能とダイアトニックコードの知識があれば簡単に使えるので、プロの作曲家はもちろん、作曲初心者からも人気がありますよ。
はじめに、小室進行の構造や特徴を紹介するので、作曲に使ってみたい人は参考にしてみてくださいね。
ライブUtaTenの関連記事!
-
エモいコード進行10選!ノスタルジックで切ない泣けるコード進行&作曲のコツも紹介
続きを見る
ダイアトニックコードを6451と並べた進行
メジャーキーのダイアトニックコードを6451の順番で並べたコード進行が小室進行です。
ディグリーに変換すると「Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」、Cメジャーキーなら「Am→F→G→C」となります。
マイナーキーで考える場合は「Ⅰm→♭Ⅵ→♭Ⅶ→♭Ⅲ」の順です。
機能を見ると、マイナーコードのトニックから始まり、サブドミナント・ドミナントへと展開し、メジャーコードのトニックに解決するシンプルな構造。
ダークな雰囲気から一気にメジャー感のあるコードに展開するので、ドラマティックでメロディアスな雰囲気を演出できるコード進行です。
名前の由来は音楽プロデューサーの小室哲哉
小室進行の名前の由来となった人物が、安室奈美恵や華原朋美などのプロデュースや、TM NETOWORKやglobeなど人気音楽グループでの活動で有名な小室哲哉です。
プロデューサーとしての手腕はもちろん、作曲家としての評価も高いため、日本の音楽業界を代表するミュージシャンとも言われています。
そんな彼が多くのヒット曲で使用していたのが「6451進行」。
実際は、往年の名曲にも使われるほどの定番進行でしたが、小室哲哉のセンスと楽曲ヒットの影響もあり、日本の音楽ファンの間で小室進行と呼ばれるようになりました。
幅広いジャンルで使える
小室進行は、ドラマティックなサウンドを持ちつつもシンプルでクセのない構造なので、幅広いジャンルで使えるコード進行です。
小室哲哉が得意とするダンスミュージック風のサウンドはもちろん、ロックやバラードにもマッチしますよ。
アニソンやボカロ曲といった、流れるようなメロディと展開の早さが際立ったジャンルとの相性も抜群。
洋楽風のシンプルでスタイリッシュなサウンドは不得意ですが、日本人好みのメロディアスで音数の多い音楽にピッタリです。
定番キーでの小室進行の構成コード一覧
小室進行の特徴を把握したら、次は定番キーと構成コードの組み合わせを覚えていきましょう。
この組み合わせを覚えていれば、度数に対応したコードが思い浮かばなくても、すぐに何のコードを使えば良いか分かりますよ。
度数とキーの関係も理解しやすくなるので、理論の勉強にも最適です。
次は、定番キーでの小室進行の構成コード一覧を紹介します。
ライブUtaTenの関連記事!
-
コード進行をおしゃれにする秘訣!簡単系からマイナー系まで全10選
続きを見る
シャープ系のキー
KEY=G(Em) | Em→C→D→G |
KEY=D(Bm) | Bm→G→A→D |
KEY=A(F#m) | F#m→D→E→A |
KEY=E(C#m) | C#m→A→B→E |
上記の表はシャープ系キーでの小室進行の構成コードを記載したものです。
カッコ内は「平行調」という、調号が同じマイナーキーを表しています。
コードネームはそれぞれ違っていますが、メジャー・マイナーコードの並べ方、度数などは同じです。
どれもギターで弾きやすいキーなので、弾き語り用の曲に小室進行を使ってみたい人は覚えておきましょう。
フラット系のキー
KEY=F(Dm) | Dm→B♭→C→F |
KEY=B♭(Gm) | Gm→E♭→F→B♭ |
KEY=E♭(Cm) | Cm→A♭→B♭→E♭ |
KEY=A♭(Fm) | Fm→D♭→E♭→A♭ |
小室進行を、定番のフラット系キーに当てはめてみました。
♭が付いたコードが多いですが、シャープ系のキーと同様に並べ方や度数は全て「4651」。
ギターの入ったポップス・ロックではあまり使われませんが、おしゃれなポップスや管楽器の入った編成では良く使われます。
音域を下げたいときにも便利なので、フラット系キーの曲は作らないという人も覚えてみてはいかがでしょうか。
小室進行を効果的に聴かせるコツ
小室進行を使って簡単な曲を作ってみたけど、思い通りのサウンドにならないという人も多いでしょう。
イメージ通りの曲を作るためには慣れが必要です。
しかし、基本の使い方や簡単なコツを覚えれば、イメージに近いコード進行を安定して作れるようになりますよ。
次は、小室進行を効果的に聴かせるコツ、定番のアレンジ方法を紹介します。
ライブUtaTenの関連記事!
-
王道進行(4536進行)とは?ボカロ・アニソン・JPOPから作曲・アレンジに使えるコードを紹介
続きを見る
Aメロやサビで使うのが基本
小室進行を効果的に聴かせたいなら、Aメロやサビなどの安定感を強調したい部分で使いましょう。
トニックで始まりトニックで終わる構造なので、パートが切り替わった直後に使えば手軽に安定感を演出できます。
トニックが多く登場するため、キーの雰囲気を出しやすいのもポイント。
もちろん他のパートでも使えますが、不安定なサウンドや浮遊感などは不得意なので、定番のAメロやサビに使ったほうが効果的です。
ループ進行として使う
曲に統一感を出すときに便利な、ループ進行としても使えるのが小室進行の特徴です。
循環コードの「1625進行」に似た構造を持つので、最後のⅠから数えると「1645」と循環コードとほぼ同じ構成になります。
何度でも繰り返せる構造なので、工夫次第では小室進行だけの曲も作れますよ。
実際の楽曲では最後まではループさせず、複数回繰り返した後に違う進行を挿入して、次のパートに繋げるパターンが定番です
繰り返す回数や前後の展開など、アレンジ次第で色々な使い方ができるのが小室進行の魅力といえるでしょう。
オンコードを挿入する
小室進行にアレンジを加えて雰囲気を変えたい場合には、オンコード(分数コード)を挿入するのがおすすめです。
オンコードとは「特定のコードのベース音を変更したもの」で、作曲ではコードトーンの3rdや5thをベースにしたものが良く使われます。
小室進行では、3rdベースのⅤ(KEY=CならG/B)を挿入する「Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅴ/3」というアレンジが定番で、主にループ進行に変化を加えるために使われます。
他にも、5thベースのⅥm(KEY=CならAm/E)や5thベースのⅤなども使えるので、色々と試して好みのアレンジを見つけてみてくださいね。
テンションを使ってアレンジする
手軽におしゃれな雰囲気を出したいなら、小室進行のコードにテンションを足してみましょう。
全てを7thコードに変換した後に、9thや11th、13thを加えるだけで完成します。
独特な響きが好きなら、トライアドの音をアレンジしたadd9、sus4コードを使っても良いでしょう。
簡単にサウンドを変えられるテクニックですが、使いすぎると浮遊感が強くなってしまうため、テンションを加えるコードは2個以内にするのがおすすめです。
ロックな雰囲気を出したいならパワーコードを使う
小室進行を使ってロックな曲を作る場合には、パワーコードをメインに組み立てるのがおすすめです。
シンプルで力強い響きを手軽に演出できるので、曲調もロックでワイルドな雰囲気になりますよ。
ポイントは、ドライブサウンドのエレキギターを使って演奏、もしくはそれと似た音色を打ち込むこと。
アップテンポな曲はもちろん、ロックバラードにも使えるテクニックなので、ロック好きはぜひ試してみてくださいね。
小室進行が使われた有名曲
90年代以降の日本の楽曲には、小室進行を使ったものがたくさんあります。
ダンスミュージック風な曲だけでなく、アイドルポップ、モダンなポップス、ロックなど使われているジャンルもさまざまです。
アレンジのパターンも幅広いので、使い方の参考にできるのはもちろん、音楽理論の知識を深めるきっかけにもなりますよ。
次は、小室進行が使われた有名曲を紹介します。
馬と鹿 / 米津玄師
米津玄師の人気曲「馬と鹿」は、小室進行のアレンジと展開方法が学べる楽曲です。
使われているのはAメロ部分で、進行は上記のようになっています。
小室進行の最後に3rdベースのⅤを挿入し、3小節目のCm7への移行を滑らかにするアレンジが施されているのが特徴。
後半2小節はセカンダリードミナントを使ったツーファイブ「Cm7→F7→B♭」、ドミナントを2個重ねたドッペルドミナント「F7→B♭」など、理論を駆使した進行になっています。
オンコードを使った定番アレンジと、コード理論を使った進行を組み合わせて個性的なサウンドを演出している楽曲です。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
馬と鹿 歌詞 米津玄師 TBS系日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」 主題歌 ふりがな付 - うたてん
続きを見る
フライングゲット / AKB48
マイナーキーの小室進行のアレンジ方法やサウンドを知りたい人におすすめなのが、AKB48の有名曲「フライングゲット」です。
上記はサビ部分を参考にしたコード進行で、テンションやオンコード、コードの挿入などのアレンジが施されています。
2小節目の♭Ⅵは6thコードにアレンジされており、♭Ⅶの直後には3rdベースの♭Ⅶ、最後にⅤ7が挿入されているのが特徴。
これらの変更により、繰り返しても聴き飽きにくいスリリングなサウンドになっていますよ。
キャッチーなアイドルポップ的な雰囲気ながらも、音楽的な工夫が光る楽曲です。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
フライングゲット 歌詞 AKB48 ドラマ「花ざかりの君たちへ イケメン☆パラダイス2011」主題歌 ふりがな付 - うたてん
続きを見る
Doctor Doctor / UFO
「Doctor Doctor」は「神」の愛称で親しまれるマイケルシェンカーが在籍したバンド、UFOの代表曲です。
クラシックロックの名曲としても有名ですが、実はサビ部分でマイナーキーの小室進行が使われています。
前半2小節は小室進行の基本形、後半はマイナーキーの定番進行「Ⅳm→Ⅴ7→Ⅰm」とシンプルながらも、ロックらしい仕上がりに。
演奏もシンプルなので、ギターを使って弾いてみて、ロックなアレンジを体験してくださいね。
白日 / King Gnu
King Gnuの代表曲「白日」も、小室進行のポップなサウンドと、応用理論を使った独特な響きのコントラストが美しい楽曲です。
サビ前半の2小節では、小室進行の基本形を使ってキャッチーな雰囲気を演出。
3~4小節では、セカンダリードミナントのⅢ7、トニックの代理コードの#Ⅳm7(♭5)などのノンダイアトニックコードを使いアクセントを付けています。
Ⅳmaj7をマイナーキーの♭Ⅵmaj7と見た偽終止「Ⅲ7→Ⅳmaj7」もあるなど、定番進行と応用理論を上手く組み合わせて、モダンな雰囲気を演出している楽曲です。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
白日 歌詞 King Gnu ドラマ イノセンス冤罪弁護士 主題歌 ふりがな付 - うたてん
続きを見る
LEVEL4 / T.M.Revolution
T.M.Revolutionの人気曲「LEVEL4」のサビで使われているのが、上記のコード進行です。
前半部分は小室進行の最後のコードをⅥmに変換したもの、後半はオンコードを挿入したパターンになっています。
シンプルな構造ですが、B♭とAmをウラから鳴らすシンコペーションにすることでグルーヴ感を演出していますよ。
マイナー感を出したいロック曲との相性もバッチリのコード進行なので、ロック好きはぜひ参考にしてみてくださいね。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
LEVEL 4 歌詞 T.M.Revolution ふりがな付 - うたてん
続きを見る
小室進行が使われているアニソン・ボカロ曲
アニソン・ボカロ曲にも、小室進行が使われている曲が沢山あります。
有名曲と同様、シンプルなものから応用理論を使ったアレンジまで、色々な使われ方をしているので、アニメ・ボカロファンだけでなく使い方を覚えたい人にもおすすめです。
最後に、小室進行が使われているアニソン・ボカロ曲を紹介するので、気になった曲はぜひコード進行と照らし合わせながら聴いてみてくださいね。
Get Wild / TM NETWORK
TM NETOWORKの「Get Wild」は小室哲哉本人による、小室進行が楽しめる楽曲です。
アニメ「シティーハンター」シリーズの主題歌に起用されたため、アニソンとしても親しまれていますよ。
上記はサビ部分のコード進行で、ループ進行として使われています。
シンプルなマイナーキーの小室進行ですが、Ⅰmと♭Ⅵmaj7の間に♭Ⅶを挿入することで疾走感と緊張感を演出しているのが特徴。
雰囲気や響きを覚えるのにピッタリの楽曲なので、サウンドのイメージができない人はぜひ聴いてみてくださいね。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
Get Wild 歌詞 TMN CITY HUNTER スペシャル 緊急生中継!? 凶悪犯 冴羽?の最後 ED ふりがな付 - うたてん
続きを見る
炎 / LiSA
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の主題歌として有名なLiSAの「炎」は、小室進行と転調を上手く使った楽曲です。
上記はAメロとサビで使われている進行で、どちらも3rdベースの♭Ⅶを挿入したアレンジになっているのが特徴。
本来、複数のパートで同じ進行を使うと、基本的に単調な雰囲気になります。
しかしこの曲では、1音上のマイナーキーに転調させることで、統一感がありながらも違った印象のサウンドになっていますよ。
小室進行のアレンジを追求してみたい人にピッタリの、転調を上手く使った楽曲です。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
炎 歌詞 LiSA 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 ふりがな付 - うたてん
続きを見る
僕らは今のなかで / μ's
これはアニメ「ラブライブ!」のOP主題歌「僕らは今のなかで」の、サビ後半部分のコード進行です。
ループ進行として小室進行を使ったパターンで、Ⅰの直後にドミナントのⅤが挿入されています。
Ⅴコードのトニックに進行したがるサウンドが加わるため、冒頭のⅥmへの移行もスムーズで、全体も自然なサウンドになっているのが特徴。
ポップロック風の小室進行が楽しめる楽曲なので、ポップな曲が好きな人はぜひ参考にしてみてくださいね。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
僕らは今のなかで 歌詞 μ's ラブライブ! OP ふりがな付 - うたてん
続きを見る
千本桜 / 黒うさP
ボカロの超有名曲で、さまざまなアーティストがカバーしている曲、黒うさPの「千本桜」。
この曲のサビで使われている、マイナキーのダイアトニックコードを使ったシンプルな進行と小室進行を組み合わせたコードを書き出してみました。
この4小節を繰り返すだけのシンプルな構造の楽曲ですが、前半と後半で響きが異なるため、サウンドもスリリングな印象になっています。
複雑な理論を使わずに、個性的なサウンドを演出しているハイクオリティな楽曲です。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
千本桜 歌詞 黒うさP feat. 初音ミク ふりがな付 - うたてん
続きを見る
小室進行はメロディアスな曲にピッタリのコード進行!基本形を覚えたらアレンジもしてみよう
小室進行は、日本人好みのメロディアスな曲にピッタリのコード進行です。
構造もダイアトニックコードのみとシンプルで、基本の理論さえマスターしていれば作曲初心者でも気軽に使えますよ。
応用理論と組み合わせれば、幅広いサウンドにも対応できるので中上級者にもおすすめです。
まずは基本形の使い方や響きを覚えて、慣れてきたら自分好みのアレンジに挑戦してみてくださいね。
この記事のまとめ!
- 小室進行とは、音楽プロデューサー・小室哲哉が好んで使った「6451進行」のこと
- Aメロやサビでの使用、部分的なアレンジなどを意識すると、小室進行を効果的に使える
- 小室進行は、J-POP・J-ROCKの有名曲だけでなく洋楽の名曲にも使われている
- アニソン・ボカロ曲にも小室進行を効果的に使った曲がたくさんある