「倍音(ばいおん)」という言葉を知っていますか?
「聞いたことがあるけど、詳しい意味は分からない」という人もいるかもしれませんが、楽器演奏や作曲、音声編集などの音楽活動をしている人なら、知っていると必ず役に立ちますよ。
この記事のもくじ
倍音を考える前に
音は様々な成分から構成されていて、倍音もそのうちの1つです。
普通に音楽を楽しむだけなら、詳しいことを知らなくても問題はありません。
しかし、知識として理解しておくと表現の幅が広がったり、音楽がもっと楽しめるようになるはずですよ。
まずは、倍音について考える前に、どんなものなのかを知っておきましょう。
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「音」はたくさんの音の集合体
1つの「音」に聞こえるものは、実はたくさんの音の集合体なのです。
たとえば、ハンバーグは1つの食べ物ですが、ひき肉や玉ねぎ、パン粉などの様々な材料を集めて構成されていますよね。
同じように、ピアノの「ド」の音もただの「ド」に聴こえますが、本当はいくつもの音が集合してできているので、他の音も混ざっています。
人間は、いくつもの音の集合体を1つの音として認識しているのです。
倍音は普通に聴いても分からない
倍音は、普通に聴いていても「この音だ!」と分かるものではありません。
1つの音はたくさんの音によって構成されていて、その構成するうちの1つの成分が倍音なのです。
これは、人間にはほぼ感じ取ることができませんが、実は重要な役割を果たしていますよ。
たとえば、楽器には特定の周波数に対する倍音が含まれているので、音色に違いが出ます。
そのため、同じ「ラ」でも「これはピアノ」「これはヴァイオリン」と楽器の音を認識できるのです。
倍音を作る3つの要素
音の成分に含まれる倍音は、3つの要素から構成されています。
基本的に、その3要素はどの音にも含まれているものですが、バランスによってどう聴こえるかが大きく変わるのです。
「この音は心地よい」「不快だ」という印象の違いにもつながるので、抑えておきたいポイントですね。
ここでは、「基音」「整数次倍音」「非整数次倍音」という、倍音を作る3つの要素について解説します。
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基音
「基音(基本音)」とは、音の基本になる音。
音の中で一番周波数が低く、時報やテレビの試験電波などの電子音のようなイメージの音です。
基音はよく響き、反響しやすく反射した音が変化しにくいという特徴があります。
この基音の倍数の周波数を持つものが倍音で、さらに「整数次倍音」と「非整数次倍音」の2つに分類されます。
ちなみに、基音だけの音は人の声で出すことができず、自然界にも存在しません。
整数次倍音振動
「整数次倍音」とは、基音の振動数に対して倍数になる周波数を持っている音です。
周波数が倍になると、1オクターブ上の音になります。
整数次倍音を含んだ声の場合、その音程の上に1オクターブ上の音が重なって聴こえるのです。
弦楽器の場合は、音を出す時に弦全長だけでなく、同時に2分の1、3分の1...と振動が起こることで整数次倍音を生み出しています。
周波数と音の特徴
整数次倍音は、基音の整数倍の周波数が入ります。
波形は規則正しく、エネルギッシュでギラギラした印象の音に感じられるでしょう。
整数次倍音を多く含む人の声はとても高域の音で、聴いている人を心地よくさせると言われています。
また、カリスマ性や威厳が感じられるところも特徴的です。
整数次倍音の強い声の持ち主は、音域が広く声量がある人が多いでしょう。
特徴的な歌手や芸能人
整数次倍音が多い歌手には、浜崎あゆみや郷ひろみ、B'zの稲葉浩志などが挙げられます。
声に整数次倍音を多く含んでいると、高いキーで歌わなくても同じような感動を与えられると言えるでしょう。
バラードソングなども、切なさだけでなく強さも感じさせる作品になることが多いです。
整数次倍音が特徴的な芸能人には、カリスマ性で魅了する黒柳徹子やスティーブ・ジョブズなどもいます。
非整数次倍音
「非整数次倍音」は、整数倍ではないその他の音すべてです。
バリエーションも様々で、コソコソ話す時の息が漏れるような声も、「ゲッ!」のように濁った感じの発声する時にも非整数次倍音が含まれています。
楽器では、弦が触れてしまってビリビリしたような音にたとえられます。
周波数と音の特徴
非整数次倍音は、基音の非整数倍の周波数が入ります。
波形は不規則で、カサカサとした音に聴こえるのが特徴です。
基音に整数次倍音をたくさん加えると、テレビの砂嵐のようにザザザと聴こえるノイズになります。
非整数次倍音を多く含む声には、相手に親しみを感じさせ、共感を与えるなどの特徴が感じられるでしょう。
特徴的な歌手や芸能人
非整数次倍音を多く含んだ声の歌手には、宇多田ヒカル、桑田佳祐などが挙げられます。
また、森進一や八代亜紀などの演歌歌手に多いことも特徴的です。
聴く人の感情を揺さぶるような歌を歌う、アーティストが多いと言えるでしょう。
ちなみに、声に含まれる非整数次倍音と整数次倍音の成分は調節できます。
そのため、孫正義のようにプレゼン時はカリスマ性を感じさせる整数次倍音、プライベートでは親しみやすい非整数次倍音を多く含ませて声質を使い分けている人もいますよ。
倍音がもつ効果
倍音という用語の意味が分かってきましたが、音楽にはどのような効果を与えてくれるのでしょうか。
特徴や効果を知ると、自分の演奏や音楽活動に活かせるようになるはずですよ。
効果をしっかり理解して、今よりもっと高いレベルの音楽を目指しましょう。
それでは、倍音がもつ効果を紹介します。
音色を変える
倍音には、音色を変える効果があります。
楽器によって含まれる成分は違いますが、ベースは特に倍音が多い楽器です。
一方、フルートは少なく、基音に近い音だと言われています。
もし含まれる成分が同じだと、全ての楽器が同じ音色になってしまうのです。
音の成分が変わることで楽器ごとの音色に個性が生まれ、豊かな音色を作り出すことができるようになります。
心地よい音を作る
音の波がキレイに並ぶ倍音は、心地よい音を作るためにも欠かせない要素です。
これらの成分を含む音を聴くと、アルファ波の脳波が出てリラックス効果が得られると言われています。
高いヒーリング効果があると言われるシンギングボウルやクリスタルボウルも、倍音を含む音を出す楽器として有名です。
心地よい音は、脳に影響を与えて癒し効果を発揮します。
ギターと倍音について
倍音は声だけでなく、ピアノなどの鍵盤楽器やギターなどの弦楽器の音色にも重要な要素です。
特にギターは、素材や構造、経年経過なども音の成分に違いが出てきます。
「理解できたらギターが各段に上手になる」というわけではありませんが、ギターを演奏するなら知っておいて損はない知識ですよ。
それでは最後に、ギターと倍音の関係について紹介します。
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ハーモニクスは倍音の抽出
ハーモニクスとは弦楽器の奏法の1つで、弦のある1点に軽く指を触れることで、基本振動が消えて倍音を振動させたままにする演奏方法。
つまり、柔らかくキレイな音が出せるハーモニクスは、倍音だけを抽出したものです。
音の成分が単純になるので、透き通った音色になります。
ギターでハーモニクス奏法をする場合、平均律と純正律の違いからフレットのずれが出てくるので、ポイントを探してみてくださいね。
「歪み」は非整数次倍音の増強
ギターの「歪み」は、非整数次倍音の増強によって生まれるものです。
音を歪ませるエフェクターに、ディストーションというものがあります。
ディストーションでギターの音を歪ませると、多くの倍音が含まれ、荒々しくかっこいい音にすることができるのです。
しかし、歪ませすぎたり、複雑な和音を弾いたりすると何を演奏しているのか分からない音になってしまいます。
歪ませる時は、パワーコードを使ったり、ルート音はベースに任せるなど工夫しながら弾いてみましょう。
倍音とは音色を決める大切な音の成分のこと!気にしてみれば新たな世界が開けるかも
倍音とは、音色を決める大切な要素で、心地よい音楽を作る上で欠かせないものです。
効果などを知らなくても音楽は楽しめますが、意識してみると新しい視点から音楽と向き合えるかもしれません。
音楽をしながら「何か違うけど、うまく言葉にできない」と感じていた部分も、うまく表現できるようになったり、理解するためのヒントになる可能性も。
ぜひ倍音の知識を、これからの音楽活動に活かしてくださいね!
この記事のまとめ!
- 音楽活動をする人たちにとって、倍音の知識は必ず役に立つ
- 1つの「音」に聞こえても、実は多くの音の集合体からできている
- 倍音は「基音」「整数次倍音」「非整数次倍音」の3要素から構成されている
- 倍音には音色を決める役割があり、心地よい音には欠かせない要素
- ギターのハーモニクスや「歪み」にも、倍音は大きく関係している