セカンダリードミナントを作曲に使ってみたいけど、使い方がよく分からないという人も多いのではないでしょうか?
難しいイメージがありますが、定番の使い方や仕組みを知れば簡単に使いこなせるようになりますよ。
この記事のもくじ
セカンダリードミナントとは
セカンダリードミナントとは、ダイアトニックに含まれないドミナントセブンスコードを挿入するためのテクニックです。
E7→Am7やA7→Dm7のように特定のコードに対するⅤ7を挿入するもので、ダイアトニックコードだけでは作れないドミナントモーションを簡単に作ることができます。
解決先のコードが決まれば、Ⅴ7を入れるだけとシンプルなテクニックであるため、作曲だけでなくアレンジでも使いやすいのが特徴。
表記は通常のコードと同じで、度数に変換して考える場合は「Ⅴ7/Ⅵ」のようにⅤ7と解決先の度数の両方を記載します。
汎用性が高く使いやすいため、ポップスやジャズはもちろん、ロックやファンク、R&Bなど色々なジャンルで使われるテクニックです。
ライブUtaTenの関連記事!
-
ダイアトニックコードとは?役割・覚え方・定番のコード進行をわかりやすく解説
続きを見る
セカンダリードミナントの使い方
セカンダリードミナントは色々な場面で使えるコード理論です。
自由度が高いため、実際に聴いて「良い!」と感じるなら使い方を気にする必要はありません。
しかし、はじめてのときは定番の使い方を知っていたほうが、効果的に配置できて、イメージ通りの進行を作れるでしょう。
次は、セカンダリードミナントの定番の使い方を紹介します。
ライブUtaTenの関連記事!
-
【授業】セブンスコードを初心者向けに解説!四和音の仕組みを理解しよう
続きを見る
コード進行にアクセントを付けたいときに使う
セカンダリードミナントは、コード進行にアクセントを付けたいときに便利なテクニックです。
ダイアトニックスケールに無い音を含んだ部分転調的な和音なので、ジャズ感や浮遊感のある独特な響き方をするのが特徴。
セカンダリードミナントの3rdや♭7thの音をメロディに入れると、さらに独特な雰囲気を演出できます。
「シンプルすぎる、変化をつけたい」と感じたときにおすすめのコードテクニックです。
曲の雰囲気を変えたいときに使う
曲の雰囲気を変えたいときにも、セカンダリードミナントは活躍します。
Bメロやソロだけ違う雰囲気にしたい場合は、切り替えの直前に短めのセカンダリードミナントを入れるのがおすすめ。
サビのはじめで開放感を演出したい場合には、サビの最初のコードに対するセカンダリードミナントを前の小節に挿入し、長めに伸ばしてあげると簡単に開放感が出せます。
滑らかでジャズっぽい進行はもちろん、雰囲気が違う部分のつなぎコードとしても使えるのがセカンダリードミナントの魅力です。
コードでリズムを演出したいときに使う
セカンダリードミナントは、コードでリズムを演出したいときにも使えるテクニックです。
厳密には、リズムに変化を与えるわけではありません。
しかし、セカンダリードミナントを挿入してコードを増やすと、スピード感や勢いを演出できます。
これは、コードと拍数の関係を表す「ハーモニックリズム」を使ったもので、1小節のコード数を増やすと、聴こえ方の強弱の間隔が短くなりリズミカルな雰囲気になりますよ。
2拍ごとにコードを切り替える場合は3拍目、1小節ごとなら偶数の小節に挿入すると効果的なのでぜひ試してみてくださいね。
Ⅱmと一緒に使う
ジャズっぽくしたい、滑らかな進行にしたい場合には、セカンダリードミナントの前にⅡmを挿入するのがおすすめです。
このテクニックは「リレーテッドⅡm7」と呼ばれる、解決先のⅡm7(Cmaj7ならDm7)を使ってツーファイブ進行を一時的に作り出すもの。
セカンダリードミナントの前に挿入すると、サブドミナント→ドミナント→トニックの流れができ、コード感のある滑らかな進行が作れます。
「Ⅴ7/Ⅳ→Ⅳmaj7」を「Ⅴm7→Ⅴ7/Ⅳ→Ⅳmaj7」に変えるだけとシンプルなテクニックなので、難しく考えず気軽に使うのがおすすめです。
メジャー・マイナーキーで使えるセカンダリードミナント一覧
使い方を把握したら、次はメジャー・マイナーキーでどんなセカンダリードミナントが使えるかを覚えていきましょう。
ダイアトニックコードと関連付けしやすいコードばかりなので、基本をマスターしていれば簡単に覚えられますよ。
使い方の次は、メジャー・マイナーキーで使えるセカンダリードミナントを紹介します。
ライブUtaTenの関連記事!
-
【初心者向け】ギターコード(和音)の押さえ方!Fコードが簡単に弾ける指の位置・コツも紹介
続きを見る
メジャーキー
セカンダリードミナント (Key=Cの場合) |
Ⅰ7 (C7) |
Ⅱ7 (D7) |
Ⅲ7 (E7) |
Ⅵ7 (A7) |
Ⅶ7 (B7) |
解決先のコード (Key=Cの場合) |
Ⅳmaj7 (Fmaj7) |
V7 (G7) |
Ⅵm7 (Am7) |
Ⅱm7 (Dm7) |
Ⅲm7 (Em7) |
メジャーキー(長調)で使えるセカンダリードミナントは上記の通りです。
Ⅴ7はダイアトニック内にあるため、除外して考えるのが基本。
Ⅶm7(♭5)に関しては、ダイアトニック外のコード・#Ⅳ7が必要になるためカウントしません。
残ったコードは5つと多いですが、よく使うのはⅠ7、Ⅲ7、Ⅵ7の3つだけなので、まずはこの3つを使って雰囲気を掴む練習をするのがおすすめです。
マイナーキー
セカンダリードミナント (Key=Cmの場合) |
Ⅰ7 (C7) |
Ⅱ7 (D7) |
♭Ⅲ7 (E♭7) |
解決先のコード (Key=Cm場合) |
Ⅳm7 (Fm7) |
Vm7、Ⅴ7 (Gm7、G7) |
♭Ⅵmaj7 (A♭maj7) |
マイナキー(短調)で使えるセカンダリードミナントは、Ⅰ7とⅡ7、♭Ⅲ7の3つです。
Ⅳ7はサブドミナント的な響きをするためカウントせず、♭Ⅵmaj7は解決先がダイアトニック外の♭Ⅱであるため除外します。
Ⅴ7や♭Ⅶ7はマイナーキーの定番コードであるため、カウントしません。
メロディックマイナーで考えるならⅥ7→Ⅱmが使えますが、まずは基本の3つをマスターすると良いですよ。
セカンダリードミナントを使ったドミナントモーションの例
「セカンダリードミナントの使い方や定番コードは分かったけど、イメージが沸かない!」という場合には、実際に使われているコード進行を分析してみるのがおすすめです。
演奏してみるだけでもサウンドがイメージしやすくなり、アレンジや作曲でも使いやすくなりますよ。
次は、セカンダリードミナントを使ったドミナントモーションの例を2つ紹介します。
カノン進行にⅤ7/Ⅵを使った例
上の図は、カノン進行と呼ばれる「Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ」の一部をセカンダリードミナントに置き換えた進行です。
1小節目の2つ目のコードに「V7/Ⅵ(Ⅲ7)」を使い、マイナー感を演出しているのがポイント。
2小節目の本来はEm7の場所にC7を入れることで、進行を滑らかにしつつも切ない響きを演出しています。
90年代~2000年代のヒット曲にも使われているほか、近年のアニソンなどでも定番となっているセカンダリードミナントを使った進行です。
循環コードにツーファイブを挿入した例
「Ⅰmaj7→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅴ7」の循環コードに、ツーファイブやセカンダリードミナントを挿入した進行です。
コードの位置を後ろにズラし、新たなコードを挿入するアレンジを施したもので、コードのリズム感が増し、響きがジャズ風になっているのが特徴。
リハーモナイゼーションという少し発展的なテクニックですが、アレンジや作曲時に活躍するので、気軽に試してみてくださいね。
セカンダリードミナント上で使えるスケール
セカンダリードミナントの知識を作曲や演奏に活かしたいなら、使えるスケールをセットで覚えておくのがおすすめです。
スケールを覚えておくと、歌メロディや楽器のフレーズを作りやすくなるだけでなく、アドリブ演奏にも役立てられます。
次は、セカンダリードミナント上で使えるスケールを、基本的なものから発展的な音階まで幅広く紹介します。
メジャーペンタトニックスケール
シンプルなメロディをつけたい、複雑なスケールは知らない人におすすめなのが「メジャーペンタトニックスケール」です。
構成音が「1st、2nd、3rd、5th、6th」のみとシンプルで、セカンダリードミナントのコードトーンとも構成音が近いのが特徴。
♭7thを含まないためドミナント感は薄いですが、安定した響きが得られるスケールです。
ミクソリディアンスケール
ミクソリディアンスケールは、セカンダリードミナントと相性の良いスケールです。
メジャーキーのⅤ7で良く使われるスケールであるため、Ⅳmaj7や♭Ⅵmaj7、Ⅴ7などのメジャー系のコードに向かうセカンダリードミナントとマッチしますよ。
構成も「メジャースケールの第5音から始めたものと同じ」とシンプルで、響きのクセもないため作曲初心者でも使いやすいスケールです。
リディアン♭7スケール
解決しないセカンダリードミナントやⅡ7(Ⅴ7/Ⅴ)、♭Ⅱ7で使えるスケールがリディアン♭7スケールです。
メロディックマイナーを第4音から始めたスケールで、ミクソリディアンの4thが半音上がった#4thになっているのが特徴。
サウンドもミクソリディアンに近いですが、#4thが少し浮遊感のある響き方をします。
少し発展的なスケールですが、セカンダリードミナントではよく使うスケールなので、ぜひ覚えてみてくださいね。
オルタードテンションを含むドミナント系スケール
マイナー系のコードに向かうセカンダリードミナントにメロディを付けるとき、ジャズ感を出したいときにおすすめなのが、オルタードテンションを含むドミナント系スケールです。
オルタードテンションとは「♭9・#9・#11・♭13」のことで、これらのテンションに加え3rdと♭7thを含んでいれば、セカンダリードミナント上でも使えますよ。
代表的なものは、オルタードテンションを全て含んだオルタードスケール。
他にも、マイナーへの進行に使いやすいハーモニックマイナー・パーフェクトフィフスビロウ、独特な響きのコンビネーションオブディミニッシュなどもあります。
それぞれに個性があるので、気分や雰囲気に合わせて弾き分けてみると良いでしょう。
セカンダリードミナントを使った応用テクニック
セカンダリードミナントは単体で使われるだけでなく、応用テクニックと一緒に使われることも多いです。
音楽理論の発展的な内容を含むものであるため、はじめは少し難しいかもしれません。
しかし、知っておくと曲の分析や今後の学習に役立てられますよ。
スケールの次は、セカンダリードミナントを使った応用テクニックを紹介します。
転調
セカンダリードミナントは、ダイアトニックコード内のコードに解決に使えるだけでなく、転調させる場合にも使えるテクニックです。
やり方は、転調先のコードに対応するセカンダリードミナントを直前に入れるだけどシンプル。
加えてツーファイブを入れたり、共通のダイアトニックコードを入れたりすると、滑らかに転調できます。
ダイアトニックスケールの構成音が近い調や、1音、半音転調が定番ですが、つなげ方次第でさまざまな調に転調できるので、ぜひ色々と試してみてくださいね。
偽終止
偽終止とは、ドミナントセブンスを使いつつも、解決先を似た響きのコードに変えるテクニックです。
メジャーキーであれば、Ⅵm7に向かうセカンダリードミナント・Ⅲ7(Ⅴ7/Ⅵ)の直後に、同じトニックのⅠmaj7やⅢm7を配置します。
マイナーも同様で、解決先と同じ属性なら置き換えが可能です。
あえて解決しないことで手軽に解決感の薄い雰囲気を演出できる、便利なテクニックです。
ダブルドミナント(ドッペルドミナント)
セカンダリードミナントと相性が良く、簡単に独特な響きを演出できるのが「ダブルドミナント(ドッペルドミナント)」です。
ドミナントモーションを2回続けるテクニックで「Ⅱ7(Ⅴ7/Ⅴ)→Ⅴ7→Ⅰmaj7」のように、Ⅴ7に対応するセカンダリードミナントを配置すると完成します。
ドミナントセブンスが連続するためクセのあるサウンドですが、ピンポイントで使うと曲にメリハリを出してくれる、お得なテクニックです。
トライトーン・サブスティテューション(裏コード)
「トライトーン・サブスティテューション」は、セカンダリードミナントの雰囲気を簡単に変えられるテクニックです。
「コード内にトライトーン(増5度関係の音)がある場合、同じトライトーンを持つコードと置き換えられる」テクニックで、裏コードとも呼ばれています。
G7コードなら、3rdのBと♭7thのFがトライトーンで、3rdにF、♭7thにBを持つD♭7と置き換えられますよ。
元のコードの♭5thをルートにしたドミナントセブンスコードであれば、G7とD♭7と同じ関係なので、ルートの位置で覚えるのもおすすめ。
置き換えたいセカンダリードミナントの♭5thに注目するだけで「Dm7→D♭7→Cmaj7」という半音進行が作れる、便利なテクニックです。
セカンダリードミナントがわかりやすく使われている曲
セカンダリードミナントの使い方や響きを深く理解するためには、実際に使われている曲を聴き、分析する練習が効果的です。
コード進行が掲載されているサイトを確認しながら聴くのもおすすめで、耳コピしてみるとより使い方をイメージしやすくなりますよ。
最後に、セカンダリードミナントがわかりやすく使われている人気曲を紹介します。
丸の内サディスティック / 椎名林檎
椎名林檎の「丸の内サディスティック」は、セカンダリードミナントを使ったループ進行が多用されている楽曲です。
基本のループ進行は「A♭maj7(Ⅳmaj7)→G7(V7/Ⅵ)→Cm7(Ⅵm7)→E♭(Ⅰ)→E♭7(Ⅰ7)」で、G7とE♭7がセカンダリードミナントとなっています。
近年のヒット曲に多い進行で、Adoの「うっせぇわ」やYOASOBIの「夜に駆ける」米津玄師の「パプリカ」など幅広い楽曲で使用されていますよ。
手軽におしゃれな雰囲気を作れる進行なので、モダンなポップスが好きな人はぜひ真似してみてくださいね。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
丸の内サディスティック 歌詞 椎名林檎 ふりがな付 - うたてん
続きを見る
Virtual Insanity /Jamiroquai
ファンクやジャズ、R&B、クラブ音楽をミックスしたジャンル・アシッドジャズの代表曲がJamiroquaiの「Virtual Insanity」です。
各所で音楽的な工夫が光る楽曲ですが、イントロ部分のピアノ演奏では、セカンダリードミナントがわかりやすく使われています。
2個目のⅤ7/Ⅴと3個目のV7はダブルドミナント、最後のコードはセカンダリードミナントに♭13のテンションを付けたコードを使用。
他にも、トニックの代理コード・#Ⅳm7(♭5)の使用など、テンションの付け方や応用理論を学ぶのにピッタリの楽曲です。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
Virtual Insanity 歌詞 Jamiroquai ふりがな付 - うたてん
続きを見る
一度だけの恋なら / ワルキューレ
ワルキューレの「一度だけの恋なら」は、アニメ「マクロス⊿」のOP主題歌です。
Bメロからサビに切り替わる転調部分や、歌詞の「GYUN!GYUN!GYUN!」でセカンダリードミナントが使われています。
該当部分のコードはD7で、BメロのキーEmから、サビのキーGmのⅠm7(Gm7)への進行を滑らかにしています。
最後のサビでは、1音上のキーAmに転調するためにBm7(♭5)とE7のツーファイブが使われているのもポイント。
ポップな雰囲気での使い方を学びたい、転調にセカンダリードミナントを使ってみたい人におすすめの楽曲です。
UtaTenで今すぐ歌詞を見る!
-
一度だけの恋なら 歌詞 ワルキューレ ふりがな付 - うたてん
続きを見る
セカンダリードミナントをマスターすれば作曲の幅が広がる!簡単な進行を作って響きを感じてみよう
セカンダリードミナントは、アレンジや作曲の幅を広げてくれる、便利な音楽理論です。
単に使えるコードや音を増やしてくれるだけでなく、応用テクニックと組み合わせればおしゃれな響きの曲や、モダンなポップスも作れるようになります。
まずは、簡単な進行を作ってみて響きを耳で感じて、慣れてきたらアレンジや作曲に使って色々な曲を作ってみてくださいね。
この記事のまとめ!
- セカンダリードミナントは、ノンダイアトニックのドミナントセブンスコードを挿入するコード理論
- メロディや曲にアクセントを付けたいときに使うのが、セカンダリードミナントの基本的な使い方
- 使えるセカンダリードミナント、対応するスケールはある程度決まっている
- セカンダリードミナントは、応用テクニックと組み合わせるとさらに幅広いサウンドを演出できるようになる
- 色々なジャンルにセカンダリードミナントを使った楽曲がある