「シング・ストリート 未来へのうた」は、2015年に公開されたジョン・カー二―監督の青春音楽映画です。
大不況に見舞われた1985年のダブリンを舞台にバンド結成や曲作り、そして恋に奔走する主人公が描かれています。
この記事のもくじ
「シング・ストリート 未来へのうた」とは
あらすじ
「シング・ストリート 未来へのうた」の舞台は1985年のダブリン。
主人公コナーの父親は大不況で失業し、コナーと公立の治安が悪い学校に転校する羽目になります。
どん底の生活を送るコナーの唯一の楽しみは、兄と一緒に観る音楽PVでした。
熱狂的な音楽狂いの兄は隣国ロンドンの音楽PVを好み、コナーもまた当時ロックの聖地であったロンドンに憧れを抱いていきます。
そんな中、コナーは街中でラフィーナという少女に恋をし、気を惹くために「自分のバンドのPVに出ないか」と誘ってしまうのです。
しかし、コナーはバンドをしているわけではありません。
慌てた彼はバンドメンバーを集め「ロンドンの音楽シーンを驚愕させるMVを録る」と奔走し始めます。
果たして、コナーの恋とバンド、そしてMV作りは成功するのでしょうか。
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映画「シングストリート」は実話?
「シング・ストリート 未来へのうた」は、ジョン・カーニー監督の自叙伝的作品です。
「ジョンは一流の学校に在籍したが、シング・ストリートの学校に転校した」と、プロデューサーのアンソニー・ブレグマンは語っています。
さらに、学校でいじめられたり弱みを握られたりした体験や、女の子の気を惹くためにバンドを結成したことも実話に基づいたスト―リー。
ジョン・カー二―監督自身が「自分が子供の頃にやりたかったけれどできなかった全てを映画で実現した」とコメントしているとおり、子供の頃やりきれなかった夢を形にした作品なのでしょう。
主演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
主人公のコナーを演じたフェルディア・ウォルシュ=ピーロは、映画のためにアイルランド全土で行われたオーディションに勝ち抜きました。
6か月に渡って開催されがオーディションには数千人の参加者が集まり、フェルディア・ウォルシュ=ピーロは最初に会場に訪れた時に母親に「並びたくないから帰ろう」と言ったそうです。
しかし、なんとか5時間我慢してオーディションに参加した彼は、その美しい歌声で主役の座を勝ち取ります。
演技は「シング・ストリート 未来へのうた」で初めてという素人でしたが、ジョン・カーニー監督は「アドバイスをアレンジできる映画に向いた性格だ」と絶賛しました。
80年代のヒット曲が満載
「シング・ストリート 未来へのうた」は80年代の時代背景やファッション、そして音楽を忠実に表現した作品としても有名です。
失業率20%を超え、低迷した経済状況に陥っていた80年代のアイルランドでは、多くの若者が海の向こうイギリスのロンドンで生まれるロック・ミュージックに強いあこがれを抱きます。
そんな背景を表すように「シング・ストリート 未来へのうた」の作中に、多数の80年代ヒットソングが挿入歌として登場するのです。
恵まれない青春時代を贈ったダブリンの若者たちがどんな気持ちでロンドンのロックを聴いていたのか、そのリアルさが挿入歌によってさらに際立つでしょう。
映画「シング・ストリート」挿入曲
音楽をテーマにした青春映画「シング・ストリート 未来へのうた」では、作中に多数の挿入歌が登場します。
登場人物がさりげなく口ずさむフレーズに時代のヒットソングが使われていることもあるので、ストーリーと併せて使われている楽曲もチェックしましょう。
「シング・ストリート 未来へのうた」の挿入歌は、実際に80年代の音楽シーンを賑わせた人気曲と、映画オリジナル曲の2種類に分かれています。
特に注目したい曲をそれぞれ5曲紹介しましょう。
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80年代のヒット曲
The Lovecats / ザ・キュアー
1983年のイギリスットチャート7位にまで上がった人気曲、ザ・キュアーの「The Lovecats」は作中のターニングポイントで流れる一曲です。
コナーが後に最高のパートナーとなるエイモンと出会った時、彼がベースで弾いてフレーズがこの曲の一節。
また、当時トップ20がマックスだったザ・キュアーにとっても初トップ10入りの記念すべき楽曲とされています。
細かいシーンにも80年代ヒットソングが使われていることこそが「シング・ストリート 未来へのうた」の時代再現度の高さを物語っていますよね。
Town Called Malice(悪意という名の街) / ザ・ジャム
「悪意という名の歌」は、1977年から1982年に活動していたザ・ジャムのヒットソングです。
バンド解散直前に発表されたこの曲は、キャッチ―なメロディと印象的でかっこいいMVが人気を集め、すぐにヒットチャート1位を記録しました。
「シング・ストリート 未来へのうた」以外に、映画「リトル・ダンサー」にも使われているので聴いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
Rio / デュラン・デュラン
イギリス・バーミンガム出身のバンド「デュラン・デュラン」の大ヒットソング「リオ(Rio)」が登場したのは1982年です。
作中ではコナーがこの曲のMVを見ているシーンがありますが、華やかで当時にしては露出が高い映像が若者に与えたカルチャーショックが想像できますよね。
ちなみに、イギリスの元皇太子妃のダイアナ妃はバンドの大ファンで、旅をする時は必ず「リオ」のテープを持って行っていたと言われています。
Stand And Deliver / アダム&ジ・アンツ
アダム・アント率いる「アダム&ジ・アンツ」は「ブルンジ・ビート」と呼ばれるツインドラムが斬新なロックバンドです。
音楽性は勿論、MVのパイレーツ・コスチュームやアダムのルックスによって少年少女のアイドル的バンドとなっていきました。
斬新なMVを作りたいと考えるコナーにとっても、おそらく憧れの作品の一つだったのでしょう。
Turning Japanese / ザ・ヴェイパーズ
「ザ・ヴェイパーズ」は、1978年から1982年に活動していたパワーポップバンドです。
この曲は1980年にヒットし、イギリスのシングルチャート3位、米国36位を記録しています。
作中では、ラフィーナを撮影に誘う時にコナーがくちずさむメロディとして登場。
自身の音楽性について「中国的なエッセンスもあって」と語っているのですが、当時はまだ中国と日本のイメージが混同していたことが分かりますね。
「シング・ストリート」オリジナル曲
Up
「Up」は初恋の高揚感を表現した曲です。
コナーを演じるフェルディア・ウォルシュ・ピーロは音楽家の家で生まれ育ち、自身もボーイソプラノでオペラ出演の経験があります。
そんな美声を余すことなく披露したこの曲は、物語のキーとなる役割もあるのでぜひ流れるシーンに注目してくださいね。
Drive It Like You Stole It
「Drive It Like You Stole It」は、当時のイギリス・ロックの影響を強く受けた楽曲です。
テンポ良くノリノリで踊りだせそうなメロディが魅力的ですね。
曲の歌詞では「自分の人生なのだから、盗んだ自動車を運転する気持ちで全力で生きろ」という映画にも通じるメッセージが歌われています。
和訳にも注目すると、曲をより楽しめるでしょう。
The Riddle of the Model
「The Riddle of the Model」は、コナーが一目惚れした少女ラフィーナをイメージして作られた楽曲です。
大人っぽくて謎めいた美しいラフィーナの印象が上手く表現されています。
主人公が恋をしている相手が曲で表現されている、ロマンチックな表現も音楽をテーマにした「シング・ストリート 未来へのうた」ならではの魅力です。
Girls
「Girls」のテーマは「女の子ってどうしてそんなに複雑なの?」という、全ての男性が一度は抱いたことがある難問です。
美しい裏声や大胆なギターの演奏など、他の曲とは少し違う実験的な要素も感じられますね。
聴いていてワクワクするというロックのセオリーは強く感じられるので、曲と歌詞を楽しみましょう。
Go Now / アダム・レヴィーン
「Go Now」は作中でコナーのバンドが歌っている歌ではなく「シング・ストリート 未来へのうた」で、俳優デビューを飾ったアダム・レヴィーンが映画のために書き下ろした一曲です。
夢を追いかける楽しさや困難、人生を全力で生きることの大切さが語られています。
それは作中の少年少女だけではなく、観ている一人ひとりにも勇気を与えてくれるでしょう。
映画「シング・ストリート」感想は?
「シング・ストリート 未来へのうた」は、80年代ロック・ミュージックというテーマや曲作り、バンド活動という設定から音楽好きにおすすめな映画です。
しかし、映画を見た人の中には特に音楽活動をしていない人や、音楽を好んで聞かないという人も少なくありません。
そんなさまざまな境遇に立つ人が「シング・ストリート 未来へのうた」を見た時、どんな感想を抱くのでしょうか。
ここでは、作品を見た人の口コミやレビューから参考になる内容をピックアップしました。
40代・男性
若いころから音楽にどっぷりとはまり込んだおじさん世代にはかなり刺さる映画です。
挿入歌に80年代ヒットソングが多く、しかも作品にマッチしているものだから自分の青春を思い出してしまいました。
しかしやはり「こんな青春を過ごしたかった」という感想が強くなりますね。
音楽好きとしては理想の青春を追体験できる最高の音楽映画だと思います。
主人公のよき理解者となる兄の存在も羨ましい!
20代・女性
古い時代をテーマにした映画だったので、ついていけるか不安だったけどすごく面白かった!
ファッションとか街並みもおしゃれだし、女の子のために始めたバンドに夢中になってく少年たちがかわいい。
すごく好きな音楽ってなかったんだけど、80年代のロック聞いてみようかなって思えました。
あと、ラフィーナがすごくきれいでかっこいい!
高嶺の花って感じだけど、ちゃんと少女っぽい所もあって憧れます。
30代・男性
絶望的な大不況に見舞われる80年代のダブリンという時代背景が見事に表現されています。
境遇の不遇さに荒んでいく若者が多い中、バンドを初めてひたむきに頑張っている主人公たちには好感を感じました。
イギリスのロックという文化が広く浸透し、音楽を愛する若者たちがロンドンを「聖地」と呼んだのは自身の置かれた環境から脱したいという希望の光をロンドンに見たからなのでしょう。
自身の挫折や葛藤を胸に抱きながら弟を鼓舞する兄の存在も、ストーリーのディテールを鮮明にしていたと思います。
「シング・ストリート 未来へのうた」を見た多くの人は、80年代の音楽や文化の再現を楽しめたと語っています。
特に、主人公と同じ年代を過ごした40代以上の人たちからは「自分と重ねた」「こんな青春を送りたかった」と高い評価を集めています。
一方で、若い世代も「時代に関係なく楽しめる映画だ」という感想が挙がっているので音楽青春映画として幅広い年齢層から人気であることが分かりますね。
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「シング・ストリート 未来へのうた」は未来に伝えたい音楽青春映画!コナーの美声にも注目
「シング・ストリート 未来へのうた」で描かれているのは、大不況や家庭環境で苦境に強いられた少年が未来のために全力で走り続ける青春ドラマです。
恋やバンドの結成は、未来が見えない生活を変えるエッセンス。
それに対してどれだけ真剣に向き合って「叶えよう」と努力するかこそが、成功に繋がる秘訣なのです。
そんな少年のがむしゃらな行動を彩るのは、かつて80年代のイギリスから発信され世界中に評価されたヒットソングの数々です。
80年代に青春を過ごした人も、今まさに青春を過ごしている人も「シング・ストリート 未来へのうた」を観て熱い気持ちを体感しましょう。
この記事のまとめ!
- 「シング・ストリート 未来へのうた」は80年代ダブリンを舞台にした音楽青春映画
- ジョン・カーニー監督の実体験を元にした半自叙伝映画である
- 主人公コナーを演じる少年は6か月に渡るオーディションで抜擢された
- 80年代に実際に発表されヒットした楽曲の数々が挿入歌に使われている