よみ:みちしるべ ~ほしとたびびと~ (with にしやまこうたろう)
ミチシルベ ~星と旅人~ (with 西山宏太朗) 歌詞
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羽多野渉
- 2023.11.15 リリース
- 作詞
- 吉原じゅんぺい
- 作曲
- 原田篤(Arte Refact)
- 編曲
- 原田篤(Arte Refact)
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「うらやましいな」
ポツリとつぶやいたのは、夜よる空そらに浮うかぶ小ちいさな星ほしでした。
その星ほしは、太陽たいようのように地上ちじょうを照てらすわけでもなければ、
月つきのようにおしゃれに姿すがたをかえるわけでもない、
ただ、輝かがやくだけの普通ふつうの小ちいさな星ほしでした。
そんな小ちいさな星ほしを、地上ちじょうから不思議ふしぎそうに眺ながめている少年しょうねんがいました。
「何なにがうらやましいの?」
「僕ぼく以外いがいの全部ぜんぶさ」
「君きみ以外いがいの全部ぜんぶ?
じゃあ、僕ぼくのことも?」
「もちろんだよ」
「何なにがうらやましいの?」
「君きみは、遠とおくまで旅たびすることができるだろ。」
「旅たび?
うん。
一度いちど、お父とうさんに連つれて行いってもらったことがある。
すごく楽たのしかった。
だからね、僕ぼくは決きめたんだ。
大人おとなになったら、僕ぼくもお父とうさんのように、
世界せかいを旅たびしてまわろうって。」
「うらやましいな」
「君きみも旅たびをすればいいじゃないか?
ほかの星ほしを見みてごらんよ。みんな、旅たびをしてるよ。」
「僕ぼくにはできないんだ。
僕ぼくは、ここから動うごけないんだ。
他ほかの星ほしが東ひがしの空そらから西にしの空そらに旅たびをして、
季節きせつとともに 別べつの空そらに旅立たびだつときも、
僕ぼくは、ここにいるしかないんだ。
みんなのことを見送みおくるしかできないんだ。」
「そうなんだね。
さみしい?」
「少すこしね。」
「つまらない?」
「少すこしね。」
「そうか…
そうだ!
じゃあ、僕ぼくが、君きみの代かわりに、君きみの分ぶんまで旅たびをしてくるよ!
色々いろいろなところに旅たびに行いって、
色々いろいろなものを見みて、
色々いろいろなものを手てに入はいれて…
そして、いっぱいいっぱい、そのお話はなしをしてあげるよ。」
少年しょうねんの言葉ことばに、小ちいさな星ほしは、少すこしだけ瞬またたきました。
それからも、
その小ちいさな星ほしは、
その場ばを動うごかずに、
ただただ、ほかの星ほしたちの旅たびを見守みまもり続つづけていました。
そんなある日ひ、小ちいさな星ほしは、誰だれかの泣なき声こえを聴きいた気きがしました。
「何なにを泣ないているの?」
小ちいさな星ほしは尋たずねました。
「家いえに帰かえりたいんだ。」
大おおきな大おおきな砂漠さばくの真まん中なかで、
一人ひとりの男おとこがしゃがみこんでいました。
「家いえに帰かえる途中とちゅうなの?
じゃあ、君きみは、旅たびをしてたのかい?」
男おとこは、力ちからなくうなだれるように頷うなずきました。
「うらやましいな。」
「うらやましい?
うらやましがられるようなことは、何なにもないよ。」
男おとこは、空そらを見上みあげて、言いいました。
「僕ぼくは、旅たびをしてきた。
世界せかい中じゅう、いろいろな場所ばしょに行いってきた」
「楽たのしくなかったの?」
「楽たのしいこともあったさ。
でも、辛つらいこともたくさんあった。」
「辛つらかったのに、なんで旅たびをつづけたの?」
「家族かぞくのためだよ。
とどまっているだけでは手てに入はいらないものがたくさんあるんだ。
僕ぼくは、それを家族かぞくのもとに届とどけるために旅たびをしてたんだ。
それなのに…」
「ん?」
「帰かえり道みちを見失みうしなってしまったんだ。
ちょっと風かぜが吹ふくだけで、砂すなが崩くずれて、景色けしきが変かわる。
夜よるは明あかりが一ひとつもない。
どこに向むかって歩あるけばいいか分わからない。
もう、自分じぶんが、今いま、どこにいるかも分わからない。」
「それでも、僕ぼくは、君きみがうらやましいよ。」
小ちいさな星ほしは、ただ静しずかに言いいました。
「僕ぼくはね、ここから動うごけないんだ。
旅たびに出でることもできない。
変かわることもできない。
みんなのことを見みてるだけしかできないんだ。」
「でもね、僕ぼくは約束やくそくをしたんだ。
小ちいさな男おとこの子こと。
いつか、彼かれが旅たびに出でて、
そして戻もどってきたときに、
たくさんの話はなしを聞きかせてもらうって…約束やくそくをしたんだ。」
男おとこは、驚おどろいた顔かおで小ちいさな星ほしを見上みあげました。
「君きみは…
君きみは…ずっとそこに。
ずっとそこにいてくれたのかい?」
「僕ぼくは、ずっとここにいるよ。
ずっと昔むかしから。
そして、ずっと未来みらいまで。」
「君きみは…」
男おとこは、立たち上あがりました。
静しずかに。
だけど、力強ちからづよく。
男おとこは、もう、泣ないてはいませんでした。
「僕ぼくは…帰かえる。
僕ぼくは…君きみのおかげで帰かえれるんだ。」
男おとこは歩あるき出だしました。
そして、一晩中ひとばんじゅう、歩あるき続つづけました。
小ちいさな星ほしに向むかい、これまでの旅たびの思おもい出でを話はなしながら。
見みてきた景色けしき。
出会であった人々ひとびと。
食たべた料理りょうり。
楽たのしかったことも、辛つらかったことも、
男おとこの話はなしを、小ちいさな星ほしは、楽たのしそうに楽たのしそうに聴きき続つづけました。
男おとこは、小ちいさな星ほしが見守みまもってくれている限かぎり、
星ほしに向むかって、旅たびの思おもい出でを話はなしながら、歩あるき続つづけました。
男おとこが話はなしを終おえる頃ころ、
旅たびも、ちょうど終おわりを迎むかえました
登のぼり始はじめようとする陽ひの光ひかりに、
うっすらと形かたち作づくられた街まちを見下みおろしながら、
男おとこは小ちいさな星ほしに言いいました。
「ありがとう。」
男おとこの言葉ことばに、小ちいさな星ほしは、少すこしだけ瞬またたきました。
小ちいさな星ほしは、
それ以来いらい、「うらやましい」とつぶやくことはありませんでした。
ポツリとつぶやいたのは、夜よる空そらに浮うかぶ小ちいさな星ほしでした。
その星ほしは、太陽たいようのように地上ちじょうを照てらすわけでもなければ、
月つきのようにおしゃれに姿すがたをかえるわけでもない、
ただ、輝かがやくだけの普通ふつうの小ちいさな星ほしでした。
そんな小ちいさな星ほしを、地上ちじょうから不思議ふしぎそうに眺ながめている少年しょうねんがいました。
「何なにがうらやましいの?」
「僕ぼく以外いがいの全部ぜんぶさ」
「君きみ以外いがいの全部ぜんぶ?
じゃあ、僕ぼくのことも?」
「もちろんだよ」
「何なにがうらやましいの?」
「君きみは、遠とおくまで旅たびすることができるだろ。」
「旅たび?
うん。
一度いちど、お父とうさんに連つれて行いってもらったことがある。
すごく楽たのしかった。
だからね、僕ぼくは決きめたんだ。
大人おとなになったら、僕ぼくもお父とうさんのように、
世界せかいを旅たびしてまわろうって。」
「うらやましいな」
「君きみも旅たびをすればいいじゃないか?
ほかの星ほしを見みてごらんよ。みんな、旅たびをしてるよ。」
「僕ぼくにはできないんだ。
僕ぼくは、ここから動うごけないんだ。
他ほかの星ほしが東ひがしの空そらから西にしの空そらに旅たびをして、
季節きせつとともに 別べつの空そらに旅立たびだつときも、
僕ぼくは、ここにいるしかないんだ。
みんなのことを見送みおくるしかできないんだ。」
「そうなんだね。
さみしい?」
「少すこしね。」
「つまらない?」
「少すこしね。」
「そうか…
そうだ!
じゃあ、僕ぼくが、君きみの代かわりに、君きみの分ぶんまで旅たびをしてくるよ!
色々いろいろなところに旅たびに行いって、
色々いろいろなものを見みて、
色々いろいろなものを手てに入はいれて…
そして、いっぱいいっぱい、そのお話はなしをしてあげるよ。」
少年しょうねんの言葉ことばに、小ちいさな星ほしは、少すこしだけ瞬またたきました。
それからも、
その小ちいさな星ほしは、
その場ばを動うごかずに、
ただただ、ほかの星ほしたちの旅たびを見守みまもり続つづけていました。
そんなある日ひ、小ちいさな星ほしは、誰だれかの泣なき声こえを聴きいた気きがしました。
「何なにを泣ないているの?」
小ちいさな星ほしは尋たずねました。
「家いえに帰かえりたいんだ。」
大おおきな大おおきな砂漠さばくの真まん中なかで、
一人ひとりの男おとこがしゃがみこんでいました。
「家いえに帰かえる途中とちゅうなの?
じゃあ、君きみは、旅たびをしてたのかい?」
男おとこは、力ちからなくうなだれるように頷うなずきました。
「うらやましいな。」
「うらやましい?
うらやましがられるようなことは、何なにもないよ。」
男おとこは、空そらを見上みあげて、言いいました。
「僕ぼくは、旅たびをしてきた。
世界せかい中じゅう、いろいろな場所ばしょに行いってきた」
「楽たのしくなかったの?」
「楽たのしいこともあったさ。
でも、辛つらいこともたくさんあった。」
「辛つらかったのに、なんで旅たびをつづけたの?」
「家族かぞくのためだよ。
とどまっているだけでは手てに入はいらないものがたくさんあるんだ。
僕ぼくは、それを家族かぞくのもとに届とどけるために旅たびをしてたんだ。
それなのに…」
「ん?」
「帰かえり道みちを見失みうしなってしまったんだ。
ちょっと風かぜが吹ふくだけで、砂すなが崩くずれて、景色けしきが変かわる。
夜よるは明あかりが一ひとつもない。
どこに向むかって歩あるけばいいか分わからない。
もう、自分じぶんが、今いま、どこにいるかも分わからない。」
「それでも、僕ぼくは、君きみがうらやましいよ。」
小ちいさな星ほしは、ただ静しずかに言いいました。
「僕ぼくはね、ここから動うごけないんだ。
旅たびに出でることもできない。
変かわることもできない。
みんなのことを見みてるだけしかできないんだ。」
「でもね、僕ぼくは約束やくそくをしたんだ。
小ちいさな男おとこの子こと。
いつか、彼かれが旅たびに出でて、
そして戻もどってきたときに、
たくさんの話はなしを聞きかせてもらうって…約束やくそくをしたんだ。」
男おとこは、驚おどろいた顔かおで小ちいさな星ほしを見上みあげました。
「君きみは…
君きみは…ずっとそこに。
ずっとそこにいてくれたのかい?」
「僕ぼくは、ずっとここにいるよ。
ずっと昔むかしから。
そして、ずっと未来みらいまで。」
「君きみは…」
男おとこは、立たち上あがりました。
静しずかに。
だけど、力強ちからづよく。
男おとこは、もう、泣ないてはいませんでした。
「僕ぼくは…帰かえる。
僕ぼくは…君きみのおかげで帰かえれるんだ。」
男おとこは歩あるき出だしました。
そして、一晩中ひとばんじゅう、歩あるき続つづけました。
小ちいさな星ほしに向むかい、これまでの旅たびの思おもい出でを話はなしながら。
見みてきた景色けしき。
出会であった人々ひとびと。
食たべた料理りょうり。
楽たのしかったことも、辛つらかったことも、
男おとこの話はなしを、小ちいさな星ほしは、楽たのしそうに楽たのしそうに聴きき続つづけました。
男おとこは、小ちいさな星ほしが見守みまもってくれている限かぎり、
星ほしに向むかって、旅たびの思おもい出でを話はなしながら、歩あるき続つづけました。
男おとこが話はなしを終おえる頃ころ、
旅たびも、ちょうど終おわりを迎むかえました
登のぼり始はじめようとする陽ひの光ひかりに、
うっすらと形かたち作づくられた街まちを見下みおろしながら、
男おとこは小ちいさな星ほしに言いいました。
「ありがとう。」
男おとこの言葉ことばに、小ちいさな星ほしは、少すこしだけ瞬またたきました。
小ちいさな星ほしは、
それ以来いらい、「うらやましい」とつぶやくことはありませんでした。