天使を憐れむ歌 歌詞 冬組 ふりがな付

♪叶かなわない想おもいよ
悲かなしき運命うんめいよ
人間にんげんに恋こいした天使てんしを
憐あわれむ歌うた

♪ここは、天使てんし住すまう天界てんかい
人間界にんげんかいの遥はるか高たかくに在ある。

「そこにはミカエル、ラファエル、ウリエル、
3人にんの素晴すばらしい天使てんしがいた」

「人間にんげんの女おんなを好すきになった?」
「うん」
「へえ。それで最近さいきん、地上ちじょうばかり見みつめてたんだ」
「バカ言いうなミカエル。天使てんしが人間にんげんに恋こいをしても不幸ふこうになるだけだ」

♪守まもりたい 守まもってあげたい
♪弱よわく儚はかなく愛いとおしい人ひとよ
♪不幸ふこうになるだけの悲かなしい運命さだめだと

「それでも…」
「俺おれは反対はんたいしないけど、彼女かのじょ、もう死期しきが近ちかいよ」
「えっ?」

「ウリエルは死者ししゃの魂たましいを天界てんかいに運はこぶ天使てんし。死期しきリストは絶対ぜったいだ。彼女かのじょのことは諦あきらめろ。」
「僕ぼくのことを心配しんぱいしてくれるんだね、ラファエル」
「たとえ自分じぶんが不幸ふこうになったとしても、彼女かのじょを幸しあわせにしてあげたいんだ」

「不思議ふしぎだね丞たすく。今いままでで一番いちばん雑念ざつねんが消きえてる」
「ああ。迷まよって迷まよってここまで来きたことにも意味いみがあったのかもな」
「舞台ぶたいの上うえでしか出会であえないこの瞬間しゅんかんを、俺おれ、ひと時ときも逃のがしたくない」
「そういうお前まえだから、俺おれはお前まえと芝居しばいがしたいんだよ」

「ふむ、死期しきの近ちかい人間にんげんに天使てんしが関かかわるのは禁忌きんき」
「見守みまもるだけでもいいんです。お願ねがいします」
「日毎ひごと天使てんしの力ちからも失うしなうよ。それでも…行いきたいんだね。分わかった」
「ありがとうございます、メタトロン」

♪叶かなわない想おもいよ
悲かなしき運命うんめいよ
人間にんげんに恋こいした天使てんしは
不幸ふこうになる

「彼女かのじょの死期しきのこと、なんで教おしえたんだよ!」
「本当ほんとうのことを知しらない。大切たいせつな人ひとに何なにもできない。その悲かなしみをミカエルには背負せおわせたくなかった」
「だが、伝つたえたらあいつは行いってしまうだろ」
「分わかってるよ!…ずっと3人にんでいたんだから」

「ずっと3人にんでいた。舞台ぶたいのセリフなのに、俺おれ、この感覚かんかくを知しってる。ここにいたら、いつか見みつかる気きがする。俺おれの、本当ほんとうのこと、大切たいせつな人ひと」
「他人たにんを理解りかいできない私わたしの心こころに、彼かれらの感情かんじょうが浸透しんとうしていく。いや、観衆かんしゅうの心こころまでも。これが舞台ぶたい芸術げいじゅつか…実じつに面白おもしろい!」
「さあ、ここから2幕まくだ」

♪ミカエルは人間界にんげんかいに降おりて、彼女かのじょの病院びょういんに向むかった
♪出会であったのは 「主治医しゅじいのフィリップ」
♪天使てんしの羽根はねは、人間にんげんには見みえない
♪ミカエルは、彼女かのじょのことを教おしえてくれと頼たのみ込こんだ

「彼女かのじょのお友達ともだち? 彼女かのじょは今いまとても厳きびしい病状びょうじょうでね。元気付げんきづけてあげてほしい」
「はい、僕ぼくも彼女かのじょに伝つたえたいことがあって……でも直接ちょくせつ会あうことはできないんです」
「伝つたえたいことがあるのに、会あえないとは不思議ふしぎな話はなしだが…それなら手紙てがみを書かけばいいんじゃないか」
「手紙てがみ……そうですね! そうします!」

♪それからミカエルは毎日まいにち毎日まいにち手紙てがみを書かいた
♪彼女かのじょからの返事へんじも来くるようになり、舞まい上あがるミカエル
♪だがミカエルの羽はねはどんどん小ちいさくなっていく…
「そして、ミカエルが地上ちじょうに降おりて数ヶ月すうかげつが過すぎた」

♪ミカエル、素敵すてきな報告ほうこくがあるんだ
「彼女かのじょの病状びょうじょうが良よくなった。奇跡きせきだよ」
「…本当ほんとうですか?本当ほんとうに?…よかった」
「手紙てがみに随分ずいぶん励はげまされたそうだ」
♪君きみは幸しあわせを運はこんでくれた
「天使てんしかもしれないね」
「いえ、僕ぼくは、ただの人間にんげんです」
「はは、わかってるさ。だが、僕ぼくらにとっては天使てんしだった」
「僕ぼくら?」
「ああ、彼女かのじょが退院たいいんしたら、僕ぼくらは結婚けっこんするんだ」
「…おめでとう、ございます。よろしくお伝つたえください」

「ずるい伝つたえ方かただね。…すまない。君きみの彼女かのじょへの気持きもちに気きづいていながら、僕ぼくは」
「彼女かのじょの病気びょうきは治なおった。僕ぼくじゃ彼女かのじょを幸しあわせにできない。これでよかったんだ。これで…よかった」

「これが紬つむぎの表現力ひょうげんりょくか、お見事みごと。人ひとの痛いたみを知しっている君きみは、優やさしいね」
「東あずまさんこそ、初舞台はつぶたいとは思おもえない。つくづく、俳優はいゆうは人生じんせいなんだって教おしえられます」

♪叶かなわない恋こいでも
♪天使てんしに運はこばれた恋こいよ
♪幸しあわせに君きみが笑わらうなら、嬉うれしいんだ

「自分じぶんが一緒いっしょに居いられるわけじゃないのに喜よろこんで、健気けなげなミカエルらしいね」
「ミカエルも戻もどってくるし、人間にんげんの彼女かのじょも死しなずに幸しあわせになるし、よかったな」
「忘わすれたのか?人間にんげんの死期しきに天使てんしは関かかわっちゃいけない」
「…どういう意味いみだ」
「彼女かのじょはリストから消きえてない。ミカエルが何なにをしても彼女かのじょの死期しきは変かわらない」
「は? じゃあなんでミカエルに彼女かのじょのことを教おしえたんだ」
「言いっただろ。何なにもできない悲かなしみをミカエルに背負せおわせたくなかった」
「それでも彼女かのじょは死しぬんだろ」
「でも、ミカエルは彼女かのじょの人生じんせいに関かかわった。彼女かのじょの幸しあわせを見届みとどけたんだよ」
「それでも、こんなの辛つらすぎるだろ」
「だから、今度こんどはミカエルには伝つたえない…俺おれは」
「それを、なんでお前まえは俺おれに言いうんだよ」
「ミカエルの為ために伝つたえるかどうかは、ラファエルが決きめればいいと、思おもうから」

「君きみには、辛つらい役回やくまわりばかり任まかせてしまうね」
「いえ、友達ともだちですから」

叶かなわない恋こいでも
届とどかない声こえでも
あなたが信しんじたその道みちを
見守みまもっているよ

「…行いくのか」
「うん」
「彼女かのじょには婚約者こんやくしゃがいる」
「うん」
「今度こんど行いけばもう完全かんぜんに天使てんしの力ちからを失うしなう。お前まえはこっちには戻もどってこられない」
「…うん」
「…馬鹿野郎ばかやろう」
「ありがとう、ラファエル」

「君きみたちはずっと一緒いっしょだとばかり思おもっていたよ。よかったのかい?」
「あいつの背中せなかを押おすのが、俺おれの役目やくめなんで」
「お前まえならそうすると思おもってたよ」

「ミカエル!」
「2人ふたりとも、無事ぶじですか?」
「僕ぼくも彼女かのじょも無事ぶじだ!でも…どうしてこんな…!」
「良よかった…幸しあわせになってください」

「人間にんげんを救すくう。ミカエル、天使てんしの本懐ほんかいを遂とげたね」
「ミカエル!」
「君きみは?」
「こいつの友達ともだちです!ミカエル!おい!」
「ラファエル…?」
「ミカエルは僕ぼくと彼女かのじょを車くるまから守まもって…」
「彼女かのじょを病院びょういんに連つれて行いってください!どこか怪我けがしてるかもしれない」
「しかし…」
「こいつには俺おれが付ついてます」

「天使てんしの羽はね…?」
「彼女かのじょ、今度こんどこそリストから消きえたよ」
「君きみは…!本当ほんとうに天使てんしだったのかもしれないね」」

「芝居しばいを通とおしてみんなとつながる・・
このことだったんだね。ボクは一人ひとりじゃない…孤独こどくじゃない!」
「・・・ここにいてもいいのかな…ここがオレの居場所いばしょ」
「唯一ゆいいつ、繋つながれる気きがする仲間なかま達たちと立たつこの場所ばしょ」

「彼女かのじょもう大丈夫だいじょうぶだよね?」
「ああ。心配しんぱいいらない」
「愛あいした人ひとを守まもれて、親友しんゆうの君きみに魂たましいを送おくってもらえて、僕ぼくは幸しあわせだ…」
「ミカエル…馬鹿野郎ばかやろう」

「つむ…お前まえともう一度いちど舞台ぶたいに立たてて良よかった」
「オレもだよ…たーちゃん」

もう一度いちど、ここから始はじめよう。この場所ばしょから、この仲間なかまたちと。