よみ：むほうまつのいっしょう～かようろうきょく～
無法松の一生～歌謡浪曲～ 歌詞
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小倉こくら生うまれで 玄海げんかい育そだち
口くちも荒あらいが 気きも荒あらい
無法むほう一代いちだい 涙なみだを捨すてて
度胸どきょう千両せんりょうで 生いきる身みの
男おとこ一代いちだい 無法松むほうまつ
「いよう、これは吉岡よしおかのぼんぼんか、ぼんぼんはようお母かあさんに似にとるけ
ん可愛かわいい顔かおをしとるのう」
「松まつ小父おじさん、松まつ小父おじさんのお母かあさんはどうした?」
「儂わしが生うまれるとお母かあさんはすぐに死しんだんじゃ」
「そう、小父おじさん可哀想かわいそうだなぁ」
「ぼんぼんもお父とうさんを亡なくしたけん淋さみしかろうが、まぁ、お母かあさんのおる者ものは幸しあわせ者ものじゃ、特とくに奥おくさんのようにぼんぼんを可愛かわいいがる綺麗きれいなお母かあさんは、小倉こくら中じゅう探さがしたって居おらんけん、ぼんぼんは小倉こくらいちばんの幸しあわせ者ものじゃけんのう」
小倉こくら生うまれは 玄海げんかいの
荒波あらなみ育そだちで 気きが荒あらい
中なかでも富島とみしま松五郎まつごろうは
男おとこの中なかの男おとこだと
人ひとにも呼よばれ 我われもまた
暴あばれ車ぐるまの 名なを背負せおい
男おとこ一代いちだい千両せんりょうの
腕うでなら 意地いじなら 度胸どきょうなら
一度いちども 負まけた事ことのない
強情ごうじょう我慢がまんの 筋金すじがねを
捧ささげる情なさけの 乱みだれ髪がみ
解ほどけてからんだ 初恋はつこいの
花はなは実みのらぬ 仇花あだばなと
知しっていながら 有明ありあけの
涙なみだも未練みれんの 迷まよい鳥どり
風かぜに追おわれて 泣ないて行ゆく
「ぼんぼん、祇園ぎおん太鼓だいこが聞きこえてくるな。今日きょうは年ねんに一度いちどの祇園ぎおん祭まつりだぁ。男おとこの子こは強つよくなきゃいかん。おじさんは子こどもの時ときから泣ないたことが一度いちどもなかったぁ。ぼんぼん、これから打うつおじさんの祇園ぎおん太鼓だいこをよぉ聞きいちょれよぉ。おう、そこのアンちゃん、儂わしにばちを貸かしてくんないか。すまんな、さあ、みんなよう聞きいちょれ。無法松むほうまつのあばれ打うちじゃあ」
空そらにひびいた あの音おとは
たたく太鼓たいこの 勇いさみ駒こま
山車だしの竹たけ笹ざさ 提灯ちょうちんは
赤あかい灯あかしに ゆれて行いく
今日きょうは祇園ぎおんの 夏祭なつまつり
揃そろいの浴衣ゆかたの 若わかい衆しゅは
綱つなを引出ひきだし 音頭おんどとる
玄海灘げんかいなだの 風かぜうけて
ばちがはげしく 右左みぎひだり
小倉こくら名代なだいは 無法松むほうまつ
度胸どきょう千両せんりょうの あばれ打うち
「いやぁ、これは吉岡よしおかの奥おくさん、久ひさしぶりでございます。」
「あら、松五郎まつごろうさん、ご病気びょうきと聞きいておりましたが大丈夫だいじょうぶなんですか?」
「えぇ、儂わしは相変あいかわらず車くるまを引ひいておりまして、このように元気げんきでございますよ。奥おくさん、なんやらここんところぼんぼんがおかしいんじゃ、儂わしが道みちで逢あうても知しらん振ぷりなんじゃが、ぼんぼんは儂わしを嫌きらうてんですかね?」
「そんなことはございませんよ、松五郎まつごろうさん。俊夫としおは小ちいさい頃ころからうちの人ひとが亡なくなってからも松まつ小父おじさん、松まつ小父おじさんと言いって慕したっていたじゃありませんか。俊夫としおも高等こうとう学校がっこうに行いくようになり年頃としごろになったんですかねぇ」
「えぇ、儂わしはあの時ときのぼんぼんでいてほしかったんじゃぁ、ぼんぼんいつの間まにか大人おとなになったのう」
今いまは昔むかしの夢ゆめのあと
可愛かわいい俊夫としおの面影おもかげを
胸むねに抱だきしめ学校がっこうの
中なかから洩もれる歌声うたごえに
心こころひかれる松五郎まつごろう
あれは俊夫としおの歌うたう声こえ
俺おれも一緒いっしょに歌うたうぞと
声こえをそろえてつぶやけば
閉とじた瞼まぶたの裏うらに浮うく
俊夫としおの姿すがた愛あいらしく
夢見心地ゆめみごこちの春はるがすみ
「富島とみしま松五郎まつごろうは吉岡よしおか陸軍りくぐん大尉たいいに一生いっしょう尽つくしてまいりましたが
病やまいには勝かてません。奥おくさん、ぼんぼん、いつまでも達者たっしゃでいてくださいね」
泣なくな嘆なげくな 男おとこじゃないか
どうせ実みのらぬ 恋こいじゃもの
愚痴ぐちは未練みれんは 玄海灘げんかいなだに
捨すてて太鼓たいこの 乱みだれ打うち
夢ゆめも通かよえよ 女男波みょうとなみ
無法松むほうまつの一生いっしょうの物語ものがたりでした
お粗末そまつながら まずこれまで
口くちも荒あらいが 気きも荒あらい
無法むほう一代いちだい 涙なみだを捨すてて
度胸どきょう千両せんりょうで 生いきる身みの
男おとこ一代いちだい 無法松むほうまつ
「いよう、これは吉岡よしおかのぼんぼんか、ぼんぼんはようお母かあさんに似にとるけ
ん可愛かわいい顔かおをしとるのう」
「松まつ小父おじさん、松まつ小父おじさんのお母かあさんはどうした?」
「儂わしが生うまれるとお母かあさんはすぐに死しんだんじゃ」
「そう、小父おじさん可哀想かわいそうだなぁ」
「ぼんぼんもお父とうさんを亡なくしたけん淋さみしかろうが、まぁ、お母かあさんのおる者ものは幸しあわせ者ものじゃ、特とくに奥おくさんのようにぼんぼんを可愛かわいいがる綺麗きれいなお母かあさんは、小倉こくら中じゅう探さがしたって居おらんけん、ぼんぼんは小倉こくらいちばんの幸しあわせ者ものじゃけんのう」
小倉こくら生うまれは 玄海げんかいの
荒波あらなみ育そだちで 気きが荒あらい
中なかでも富島とみしま松五郎まつごろうは
男おとこの中なかの男おとこだと
人ひとにも呼よばれ 我われもまた
暴あばれ車ぐるまの 名なを背負せおい
男おとこ一代いちだい千両せんりょうの
腕うでなら 意地いじなら 度胸どきょうなら
一度いちども 負まけた事ことのない
強情ごうじょう我慢がまんの 筋金すじがねを
捧ささげる情なさけの 乱みだれ髪がみ
解ほどけてからんだ 初恋はつこいの
花はなは実みのらぬ 仇花あだばなと
知しっていながら 有明ありあけの
涙なみだも未練みれんの 迷まよい鳥どり
風かぜに追おわれて 泣ないて行ゆく
「ぼんぼん、祇園ぎおん太鼓だいこが聞きこえてくるな。今日きょうは年ねんに一度いちどの祇園ぎおん祭まつりだぁ。男おとこの子こは強つよくなきゃいかん。おじさんは子こどもの時ときから泣ないたことが一度いちどもなかったぁ。ぼんぼん、これから打うつおじさんの祇園ぎおん太鼓だいこをよぉ聞きいちょれよぉ。おう、そこのアンちゃん、儂わしにばちを貸かしてくんないか。すまんな、さあ、みんなよう聞きいちょれ。無法松むほうまつのあばれ打うちじゃあ」
空そらにひびいた あの音おとは
たたく太鼓たいこの 勇いさみ駒こま
山車だしの竹たけ笹ざさ 提灯ちょうちんは
赤あかい灯あかしに ゆれて行いく
今日きょうは祇園ぎおんの 夏祭なつまつり
揃そろいの浴衣ゆかたの 若わかい衆しゅは
綱つなを引出ひきだし 音頭おんどとる
玄海灘げんかいなだの 風かぜうけて
ばちがはげしく 右左みぎひだり
小倉こくら名代なだいは 無法松むほうまつ
度胸どきょう千両せんりょうの あばれ打うち
「いやぁ、これは吉岡よしおかの奥おくさん、久ひさしぶりでございます。」
「あら、松五郎まつごろうさん、ご病気びょうきと聞きいておりましたが大丈夫だいじょうぶなんですか?」
「えぇ、儂わしは相変あいかわらず車くるまを引ひいておりまして、このように元気げんきでございますよ。奥おくさん、なんやらここんところぼんぼんがおかしいんじゃ、儂わしが道みちで逢あうても知しらん振ぷりなんじゃが、ぼんぼんは儂わしを嫌きらうてんですかね?」
「そんなことはございませんよ、松五郎まつごろうさん。俊夫としおは小ちいさい頃ころからうちの人ひとが亡なくなってからも松まつ小父おじさん、松まつ小父おじさんと言いって慕したっていたじゃありませんか。俊夫としおも高等こうとう学校がっこうに行いくようになり年頃としごろになったんですかねぇ」
「えぇ、儂わしはあの時ときのぼんぼんでいてほしかったんじゃぁ、ぼんぼんいつの間まにか大人おとなになったのう」
今いまは昔むかしの夢ゆめのあと
可愛かわいい俊夫としおの面影おもかげを
胸むねに抱だきしめ学校がっこうの
中なかから洩もれる歌声うたごえに
心こころひかれる松五郎まつごろう
あれは俊夫としおの歌うたう声こえ
俺おれも一緒いっしょに歌うたうぞと
声こえをそろえてつぶやけば
閉とじた瞼まぶたの裏うらに浮うく
俊夫としおの姿すがた愛あいらしく
夢見心地ゆめみごこちの春はるがすみ
「富島とみしま松五郎まつごろうは吉岡よしおか陸軍りくぐん大尉たいいに一生いっしょう尽つくしてまいりましたが
病やまいには勝かてません。奥おくさん、ぼんぼん、いつまでも達者たっしゃでいてくださいね」
泣なくな嘆なげくな 男おとこじゃないか
どうせ実みのらぬ 恋こいじゃもの
愚痴ぐちは未練みれんは 玄海灘げんかいなだに
捨すてて太鼓たいこの 乱みだれ打うち
夢ゆめも通かよえよ 女男波みょうとなみ
無法松むほうまつの一生いっしょうの物語ものがたりでした
お粗末そまつながら まずこれまで
