真白国へようこそ 歌詞 少女病 ふりがな付

「正直しょうじき、驚おどろいた。
魔女まじょの僕ぼく、メイメイに手てを引ひかれ、深ふかく暗くらい森もりを歩あるき続つづけた。
一歩進いっぽすすむ度たびに現実げんじつから離はなれていくような錯覚さっかくに襲おそわれて、
現実げんじつと幻想げんそうの境界きょうかいがわからなくなってきた頃ころ、突然とつぜんに視界しかいが開ひらけた。
そこに隠かくされるように広ひろがっていたのは、陰鬱いんうつな光景こうけいではなく、思おもいもよらないほどに美うつくしい景色けしきで……」


花々はなは色付いろつき舞まい踊おどって
鳥達とりは祝福しゅくふくを謳うたって
まるで、地上ちじょうの楽園らくえんであるかのよう

わたしを迎むかえて微笑むわらう乙女達おとめたちは皆みんな
何なんの毒どくも感かんじない
暗くらい森もりの奥見おくみえたものは……絶望ぜつぼうじゃなくて。

『ようこそ、新入しんいりさん。あなたの名前なまえは？
いいえ、やっぱり言いわないで。
だって此処ここは、誰だれもが幸しあわせになれるところ。

あなたを蝕むしばんだ不幸ふこうは忘わすれて。
いいえ、思おもい出ださなくていい。
もう誰だれもあなたを傷きずつけない。そして、幸しあわせになるのよ。』


「此処ここには、美うつくしい五人ごにんの乙女達おとめたちが住すんでいる。
けれど不思議ふしぎなことに誰だれも、メリクルベルに負ふの感情かんじょうを向むけてはいなかった」


花々はなも恥はじらう乙女達おとめたちに
鳥達とりも歌うたを忘わすれるほど
此処ここはほんとに、魔女まじょのセカイなのかしら？

わたしを迎むかえた魔女まじょはたおやかに笑えんだ
雪ゆきのように白しろい肌はだ
薔薇ばらのような唇くちびるは甘あまい……毒どくを忍しのばせて。

『ようこそ、新入しんいりさん。ずっと待まってたわ。
そうよ、七番目ななばんめの乙女おとめ。
恐おそれないで、不幸ふしあわせは捨すててしまいなさい。

美うつくしさは決けっして穢けがしてはならない。
永久とわに穢けがさせはしないわ。
いつまでもいつまでも、私わたしと共ともにいよう。』


―――ダメだ、声こえを聴きいたら囚とらわれる
―――やめて、中なかへ入はいってこないでよ
―――ダメだ、深ふかく身体からだを蔦つたが這はうように
―――絡からめとられてしまう……


此処ここは真白国ましろのくに 幸しあわせが包つつむ
薔薇ばらの香かおりは芳かんばしく
何なにもかもを幸しあわせで塗ぬり替かえ、忘わすれていく

『さあ、怖こわがらないで。この手てをとりなさい。
甘あまいお菓子かしを食たべましょう。
真白ましろの姿すがた、美うつくしいまま此処ここで……死しんでいきましょうね。』


「フィーナ、いらっしゃい。ふふっ、いいコね」

「フィーナは迷まようことなく魔女まじょの手てをとり、その手てに誓ちかいの口くちづけをした。
私わたしは抵抗ていこうして後あとずさったけれど、その瞬間しゅんかん、頭あたまに鈍にぶい痛いたみが走はしった。メイメイは諭さとすように言いう」

「あなたもすぐに、同おなじようになれるから……ね」