よみ:しこうのおうしょう~さんきち、こはるのものがたり~2020ねんばーじょん
至高の王将~三吉、小春の物語~2020年バージョン 歌詞
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苦労くろう升目ますめは八十一はちじゅういちの 命いのち削けずった端切はぎれ板いた
女房にょうぼう子供こどもにゃすまないけれど 退しりぞくに退しりぞけない端歩はしほ突つき
将棋しょうぎの鬼おにと世よに謳うたわれた 王将おうしょう坂田さかた三吉さんきちと女房にょうぼう小春こはるの物語ものがたり
千里せんり飛とび越こす 飛車角ひしゃかくも
合あいの歩ほ一ひとつで 手てが詰つまる
胸突むなつき八丁はっちょう 棟割長屋むねわりながや
明日あしたのあてない 暮くらしでも
いつかとト金かねで 竜りゅうを斬きる
「小春こはる、生いきとったんかあ!よかったよかった。ワイは心配しんぱいで心配しんぱいで‥‥」
「あんた、わてがどないな気持きもちで生いき恥はじさらして帰かえってきたんか、
分わかりまっか?この子等こらの手て引ひっ張ぱって今宮いまみやはんの踏ふみ切きりに
飛とび込こもうとした時ときに、玉江たまえと義雄よしおが何なんて言いうたか、
あんた知しりはれしまへんやろ!
― あたいらがお母かあちゃんといくのはかめへんけど、
残のこったお父とうちゃんどうすんの。お父とうちゃんはご飯はんもよう炊かしぎかはらへんし、
お腹なかすいて死しんでしまいはる、可哀想かわいそうや。
― ‥‥て、そんな事こと言いうたんやで。」
「アア…堪忍かんにんや堪忍かんにんや、小春こはる堪忍かんにんやで。ワイは目めが覚さめた。
勝負しょうぶ師しや、素人しろうと名人めいじんやら言いわれてのぼせとったワイが悪わるかった。
ちょっと待まってや‥‥エエイこんなもんこうしてやる。」
「アッ、何なにしはりまんねん。」
「かめへん、かめへんねん。小春こはる。ワイは金輪際こんりんざい将棋しょうぎは指ささへん。
お前まえらに苦労くろうはさせへんで。」 「あんた!」
闇やみに突つき出でた通天閣つうてんかくの 赤あかい灯あかり青あおい灯あかり瓦がわらに反射はねて
寝返ねがえり打うった三吉さんきちの 目めに涙なみだ止とめ処どなく
阿弥陀あみだケ池いけの藤ふじの茶屋ちゃや 屈辱くつじょく無念むねんの千日手せんにちて 何なんで忘わすれられようか
そっと表ひょうに忍しのび出でて 割われた板目いためを接ついでみる
「あんた、あんたは本真ほんまに将棋しょうぎが好すきなんやな。よっしゃ、かめしまへん。
そんな好すきな将棋しょうぎやったら思おもう存分ぞんぶん指さしなはれな。
今日きょうからわてがあんたの面倒めんどうみますっさかいに。
それが女房にょうぼうの務つとめかも知しれへん。せやけどな、その代かわり、
将棋しょうぎ指さすからには日本一にほんいちの将棋指しょうぎさしになりなはれや!」
過すぎにし春秋しゅんじゅう 幾星霜いくせいそう 将棋しょうぎの鬼おにと身みを化ばかして
西にしの坂田さかた三吉さんきちと 天下てんかにその名なが鳴なり響ひびく
桜花爛漫おうかろまん 春はる穏おだやかな 築地ついじ倶楽部くらぶの対局たいきょくは
関根金次郎せきねきんじろう八段はちだんと 銀ぎんを泣なかせた大勝負おおしょうぶ
「お父とうちゃん、行いったらあかん。関根せきねはんには何遍なんべんも勝かってんのに、
そやのに何なんでお母かあちゃんがこんなときに
あの人ひとのお祝いわいに行いかなあかんの!」
「玉江たまえ、お前まえには分わからへん。
お母かあちゃんだけやお父とうちゃんの気持きもち分わかってくれるのは。
小春こはるやったら早はやよ行いけ言いうて怒おこりよる。ほな、お父とうちゃん行いってくるで。」
「関根せきねはん、坂田さかたでおます。十三世とさよ名人めいじん襲名しゅうめいお目出度めでたうさんです。
お祝いわいに来きましたんや。」
「坂田さかたさん。よく来きて下くださいました。
私わたしはあなたのその言葉ことばがなによりも嬉うれしい。」
「わてもあんたには、色いろんな事こと教おしえてもろうたさかい。」
「イエイエ、私わたしにとってあなた程ほど恐こわい人ひとはいなかった。
あなたこそ真しんの名人めいじんだと呼よばれるべきだ。」
「関根せきねはん‥‥」
「先生せんせい、大変たいへんだす。奥おくさんが、小春おはるさんが‥‥。」
「何なにや、オウオウ、電話でんわか。オウ、玉江たまえか。
何なに?小春こはるが危篤きとくやって?え、危篤きとくてなんやなんのこっちゃ。小春こはる出だして!
早はやさよ小春こはる出だしてえな!小春こはる、小春こはる!何なにや、何なんで返事へんじせえへんねん。
死しんだらあかん。死しんだらあかんで。お前まえが死しんだら、
わては明日あしたからどうやって将棋指しょうぎさししたらエエねん。なあ死しになや、
死しんだらあかんで、小春こはる!」
貧乏びんぼう十八番おはこと 笑わらうて泣ないて
苦労くろう一生いっしょう 背負しょいい込こんだ
今池いまいけ堀ほりに 通天閣つうてんかくの
潤うるむネオンが 揺ゆらぐ頃ころ
み空そらに小春こはるの 灯あかりが点とぼる
女房にょうぼう子供こどもにゃすまないけれど 退しりぞくに退しりぞけない端歩はしほ突つき
将棋しょうぎの鬼おにと世よに謳うたわれた 王将おうしょう坂田さかた三吉さんきちと女房にょうぼう小春こはるの物語ものがたり
千里せんり飛とび越こす 飛車角ひしゃかくも
合あいの歩ほ一ひとつで 手てが詰つまる
胸突むなつき八丁はっちょう 棟割長屋むねわりながや
明日あしたのあてない 暮くらしでも
いつかとト金かねで 竜りゅうを斬きる
「小春こはる、生いきとったんかあ!よかったよかった。ワイは心配しんぱいで心配しんぱいで‥‥」
「あんた、わてがどないな気持きもちで生いき恥はじさらして帰かえってきたんか、
分わかりまっか?この子等こらの手て引ひっ張ぱって今宮いまみやはんの踏ふみ切きりに
飛とび込こもうとした時ときに、玉江たまえと義雄よしおが何なんて言いうたか、
あんた知しりはれしまへんやろ!
― あたいらがお母かあちゃんといくのはかめへんけど、
残のこったお父とうちゃんどうすんの。お父とうちゃんはご飯はんもよう炊かしぎかはらへんし、
お腹なかすいて死しんでしまいはる、可哀想かわいそうや。
― ‥‥て、そんな事こと言いうたんやで。」
「アア…堪忍かんにんや堪忍かんにんや、小春こはる堪忍かんにんやで。ワイは目めが覚さめた。
勝負しょうぶ師しや、素人しろうと名人めいじんやら言いわれてのぼせとったワイが悪わるかった。
ちょっと待まってや‥‥エエイこんなもんこうしてやる。」
「アッ、何なにしはりまんねん。」
「かめへん、かめへんねん。小春こはる。ワイは金輪際こんりんざい将棋しょうぎは指ささへん。
お前まえらに苦労くろうはさせへんで。」 「あんた!」
闇やみに突つき出でた通天閣つうてんかくの 赤あかい灯あかり青あおい灯あかり瓦がわらに反射はねて
寝返ねがえり打うった三吉さんきちの 目めに涙なみだ止とめ処どなく
阿弥陀あみだケ池いけの藤ふじの茶屋ちゃや 屈辱くつじょく無念むねんの千日手せんにちて 何なんで忘わすれられようか
そっと表ひょうに忍しのび出でて 割われた板目いためを接ついでみる
「あんた、あんたは本真ほんまに将棋しょうぎが好すきなんやな。よっしゃ、かめしまへん。
そんな好すきな将棋しょうぎやったら思おもう存分ぞんぶん指さしなはれな。
今日きょうからわてがあんたの面倒めんどうみますっさかいに。
それが女房にょうぼうの務つとめかも知しれへん。せやけどな、その代かわり、
将棋しょうぎ指さすからには日本一にほんいちの将棋指しょうぎさしになりなはれや!」
過すぎにし春秋しゅんじゅう 幾星霜いくせいそう 将棋しょうぎの鬼おにと身みを化ばかして
西にしの坂田さかた三吉さんきちと 天下てんかにその名なが鳴なり響ひびく
桜花爛漫おうかろまん 春はる穏おだやかな 築地ついじ倶楽部くらぶの対局たいきょくは
関根金次郎せきねきんじろう八段はちだんと 銀ぎんを泣なかせた大勝負おおしょうぶ
「お父とうちゃん、行いったらあかん。関根せきねはんには何遍なんべんも勝かってんのに、
そやのに何なんでお母かあちゃんがこんなときに
あの人ひとのお祝いわいに行いかなあかんの!」
「玉江たまえ、お前まえには分わからへん。
お母かあちゃんだけやお父とうちゃんの気持きもち分わかってくれるのは。
小春こはるやったら早はやよ行いけ言いうて怒おこりよる。ほな、お父とうちゃん行いってくるで。」
「関根せきねはん、坂田さかたでおます。十三世とさよ名人めいじん襲名しゅうめいお目出度めでたうさんです。
お祝いわいに来きましたんや。」
「坂田さかたさん。よく来きて下くださいました。
私わたしはあなたのその言葉ことばがなによりも嬉うれしい。」
「わてもあんたには、色いろんな事こと教おしえてもろうたさかい。」
「イエイエ、私わたしにとってあなた程ほど恐こわい人ひとはいなかった。
あなたこそ真しんの名人めいじんだと呼よばれるべきだ。」
「関根せきねはん‥‥」
「先生せんせい、大変たいへんだす。奥おくさんが、小春おはるさんが‥‥。」
「何なにや、オウオウ、電話でんわか。オウ、玉江たまえか。
何なに?小春こはるが危篤きとくやって?え、危篤きとくてなんやなんのこっちゃ。小春こはる出だして!
早はやさよ小春こはる出だしてえな!小春こはる、小春こはる!何なにや、何なんで返事へんじせえへんねん。
死しんだらあかん。死しんだらあかんで。お前まえが死しんだら、
わては明日あしたからどうやって将棋指しょうぎさししたらエエねん。なあ死しになや、
死しんだらあかんで、小春こはる!」
貧乏びんぼう十八番おはこと 笑わらうて泣ないて
苦労くろう一生いっしょう 背負しょいい込こんだ
今池いまいけ堀ほりに 通天閣つうてんかくの
潤うるむネオンが 揺ゆらぐ頃ころ
み空そらに小春こはるの 灯あかりが点とぼる