彼かは誰たれの夢見路ゆめみじで
独ひとり佇たたずむ君きみが
懐なつかしい声こえで言いった
「あの花はなは
もう咲さいたか?」
若草萌わかくさもえる夏なつの日ひ
小ちいさな種たね、携たずさえて
「二人ふたりで花はなが見みたい」と
恥はずかしげに、
君きみが言いった
種蒔たねまきて 芽吹めぶいた双葉ふたば
君きみが嬉うれしげに綻ほころぶ
「花はなは、
いつ咲さくのだろう?」と
今日きょうか、明日あすかと
待まちわびる
「まだか…」と君きみの溜息ためいき
「まだね」と私わたしは笑わらう
花咲はなさくその日ひが来くるまで
君きみとずっと 待まち続つづけ
黄昏たそがれのあぜ道みちで
独ひとり佇たたずむ君きみが
懐なつかしい声こえで言いった
「あの花はなは
もう咲さいたか?」
微睡まどろみて霞かすむ花はな
是これは夢ゆめか現うつつか
答こたえる声こえは震ふるわず
また、巡めぐる夏なつの夜よるの夢ゆめ
陽炎揺かげろうゆれる夏なつの日ひ
うたた寝ねの眠ねむりを醒さます
旋風つむじかぜが通とおり抜ぬけ
朝顔あさがおが静しずかに揺ゆれた
「いつか…」と君きみの呟つぶやき
「いつか…?」と
私わたしは尋たずね、
答こたえる声こえは 風かぜの音ねに
あっという間まに掻かき消けされ
黄昏たそがれのあぜ道みちで
独ひとり佇たたずむ君きみが
懐なつかしい声こえで言いった
「あの答こたえは
聞きこえていた?」
微睡まどろみて霞かすむ影かげ
是これも夢ゆめか現うつつか
答こたえる声こえは震ふるわず
また、巡めぐる夏なつの夜よの夢ゆめ
君きみと過すごした夏なつの思おもい出で
朝顔植あさがおうえて、
花咲はなさく日ひを待まって
気付きづけば夕暮ゆうぐれ
暗くらい帰かえり道みち
心細こころぼそくて、
君きみの手てを握にぎった
黄昏たそがれのあぜ道みちに
独ひとり佇たたずむ、私わたし
あの日植ひうえた朝顔あさがおの
花はなの色いろは、知しらぬまま
せめて 夢ゆめ、幻まぼろしの
なせる泡沫うたかたでいい
幼おさなきこの手てを取とって
夢ゆめの終おわりまで
連つれて行いって
彼かは誰たれの夢見路ゆめみじで
独ひとり佇たたずむ君きみが
懐なつかしい声こえで言いった
「また、この夢ゆめを
見みているの?」
微睡まどろみて霞かすむ影かげ
是これは夢ゆめか現うつつか
答こたえる声こえは震ふるわず
また、巡めぐる夏なつの夜よるの夢ゆめ
嗚呼ああ、どうかまだ
消きえないで…
彼kaはha誰tareのno夢見路yumemijiでde
独hitoりri佇tatazuむmu君kimiがga
懐natsuかしいkashii声koeでde言iったtta
「あのano花hanaはha
もうmou咲saいたかitaka?」
若草萌wakakusamoえるeru夏natsuのno日hi
小chiiさなsana種tane、携tazusaえてete
「二人futariでde花hanaがga見miたいtai」とto
恥haずかしげにzukashigeni、
君kimiがga言iったtta
種蒔tanemaきてkite 芽吹mebuいたita双葉futaba
君kimiがga嬉ureしげにshigeni綻hokoroぶbu
「花hanaはha、
いつitsu咲saくのだろうkunodarou?」とto
今日kyouかka、明日asuかとkato
待maちわびるchiwabiru
「まだかmadaka…」とto君kimiのno溜息tameiki
「まだねmadane」とto私watashiはha笑waraうu
花咲hanasaくそのkusono日hiがga来kuるまでrumade
君kimiとずっとtozutto 待maちchi続tsuduけke
黄昏tasogareのあぜnoaze道michiでde
独hitoりri佇tatazuむmu君kimiがga
懐natsuかしいkashii声koeでde言iったtta
「あのano花hanaはha
もうmou咲saいたかitaka?」
微睡madoroみてmite霞kasuむmu花hana
是koreはha夢yumeかka現utsutsuかka
答kotaえるeru声koeはha震furuわずwazu
またmata、巡meguるru夏natsuのno夜yoruのno夢yume
陽炎揺kagerouyuれるreru夏natsuのno日hi
うたたutata寝neのno眠nemuりをriwo醒saますmasu
旋風tsumujikazeがga通tooりri抜nuけke
朝顔asagaoがga静shizuかにkani揺yuれたreta
「いつかitsuka…」とto君kimiのno呟tsubuyaきki
「いつかitsuka…?」とto
私watashiはha尋tazuねne、
答kotaえるeru声koeはha 風kazeのno音neにni
あっというattoiu間maにni掻kaきki消keされsare
黄昏tasogareのあぜnoaze道michiでde
独hitoりri佇tatazuむmu君kimiがga
懐natsuかしいkashii声koeでde言iったtta
「あのano答kotaえはeha
聞kiこえていたkoeteita?」
微睡madoroみてmite霞kasuむmu影kage
是koreもmo夢yumeかka現utsutsuかka
答kotaえるeru声koeはha震furuわずwazu
またmata、巡meguるru夏natsuのno夜yoのno夢yume
君kimiとto過suごしたgoshita夏natsuのno思omoいi出de
朝顔植asagaouえてete、
花咲hanasaくku日hiをwo待maってtte
気付kiduけばkeba夕暮yuuguれre
暗kuraいi帰kaeりri道michi
心細kokorobosoくてkute、
君kimiのno手teをwo握nigiったtta
黄昏tasogareのあぜnoaze道michiにni
独hitoりri佇tatazuむmu、私watashi
あのano日植hiuえたeta朝顔asagaoのno
花hanaのno色iroはha、知shiらぬままranumama
せめてsemete 夢yume、幻maboroshiのno
なせるnaseru泡沫utakataでいいdeii
幼osanaきこのkikono手teをwo取toってtte
夢yumeのno終oわりまでwarimade
連tsuれてrete行iってtte
彼kaはha誰tareのno夢見路yumemijiでde
独hitoりri佇tatazuむmu君kimiがga
懐natsuかしいkashii声koeでde言iったtta
「またmata、このkono夢yumeをwo
見miているのteiruno?」
微睡madoroみてmite霞kasuむmu影kage
是koreはha夢yumeかka現utsutsuかka
答kotaえるeru声koeはha震furuわずwazu
またmata、巡meguるru夏natsuのno夜yoruのno夢yume
嗚呼aa、どうかまだdoukamada
消kiえないでenaide…