近松門左衛門原作「大経師昔暦」より おさん 歌詞 島津亜矢 ふりがな付

ひとり寝ねは…
そっと茂兵衛もへえに逢あいたくて
夢ゆめで逢あう気きで 灯あかり消けす…

好すきになっては いけない人ひとと
恋こいの道行みちゆき しのび旅たび
たったひと夜よの ふれ合あいなのに
掟おきて破やぶりの 罪つみですか

あぁー 雪ゆきが あぁー 雪ゆきが…
闇やみに小走こばしり
おさん 茂兵衛もへえの…影かげ二ふたつ

「茂兵衛もへえに不義ふぎ密通みっつうの汚名おめいをかけてしまい 許ゆるしておくれ…
でも このおさんのことを好すきだと言いってくれた
お前まえの今いまの一言ひとことで 決心けっしんがつきました
生いきて 生いきて一緒いっしょに逃にげましょう…
おさんは どこまでも どこまでも茂兵衛もへえについて行いきます…」

せめてひととき あなたの胸むねで
どうか泣なかせて 下くださいね
女おんなごころを 知しってるように
瀬音せおと哀かなしい 高瀬川たかせがわ

あぁー 雪ゆきが あぁー 雪ゆきが…
そっと寄より添そう
おさん 茂兵衛もへえの…恋こい模様もよう

「初はつ暦こよみの出でる霜月しもつきは こぼれる涙なみだも凍いてついてしまいそうでございます…
この身みは 琵琶湖びわこの露つゆと消きえようと おさんは身みも心こころも茂兵衛もへえのもの
今いまのおまえは奉公人ほうこうにんやない このおさんの夫おっとや…
この世よが駄目だめなら あの世よで あの世よで結むすばれとうございます…」

息いきをひそめて 目めと目めで話はなす
覚悟かくごしてます 不義ふぎの道みち
風かぜが雨戸あまどを ゆさぶる夜よるは
心細こころぼそくて 身みを寄よせる

あぁー 雪ゆきが あぁー 雪ゆきが…
夢ゆめにはぐれた
おさん 茂兵衛もへえの…隠かくれ宿しゅく