1. 歌詞検索UtaTen
  2. ニュース
  3. 音楽ニュース
  4. 陰陽座

陰陽座、最高にして最幸の全国ツアー完遂!


今年で結成18年となる“妖怪ヘヴィメタルバンド”陰陽座が、全国ツアー“頻伽の聲に応ずるが如し”の最終公演を5月30日、TOKYO DOME CITY HALLで開催。絶世の歌声を持つ伝説上の生き物をモチーフにしたアルバム『迦陵頻伽』を引っ提げ、そこに定番曲や懐かしの曲も加えながら、陰陽座という名の迦陵頻伽を見事に羽ばたかせてみせた。

この世のものとは思われぬほど美しい姿と声を持ち極楽浄土に棲むという半人半鳥の生物・迦陵頻伽に、陰陽座が誇る稀代の歌姫・黒猫(vo)をなぞらえ、彼女の歌声の旨味をあらゆる角度から引き出した13枚目のアルバム『迦陵頻伽』。昨年11月に発表された最新作のツアーは昨冬に続き二度目となるが、ホール展開でアルバムの壮麗な世界観を全面に押し出した前回に対し、今回はそこに長いキャリアで産み落としてきた多彩な楽曲群を織り交ぜて全国10都市を回るライヴハウスツアーとなった。“頻伽の聲に応ずるが如し”というツアータイトル通り、まさしくファンの要望に応えてのアンコール公演である。

 そこで我々が見たものは紛れもない迦陵頻伽の誕生であった。場内に流れるエキゾチックなファルセットに続き、男性かと聴き紛う低音から麗らかな高音まで素晴らしく滑らかな黒猫の歌声が、まずは幕開けの「迦陵頻伽」から観衆を神聖な幻想世界へと誘う。加えて瞬火(b,vo)もベースを弾きながら繊細なコーラスで寄り添い、なるほど、孵化した迦陵頻伽は二匹であったのかと思いきや、それは早合点。「東京! 産聲を聴かせてくれよ!」という瞬火の号令から王道メタルチューン「鸞」へと雪崩れ込めば、地に足の着いた演奏と、オイオイ!とフロアからあがる拳が相まって場に満ちる力強さに、生まれたばかりの迦陵頻伽の歩みがピタリと重なる。それを加速させるのはパワフル極まる黒猫のボーカルに、狩姦(g)から招鬼(g)へとハモって高揚感かき立てる凄まじきギターソロ。重厚かつ正確なドラミングでサウンドを支える土橋誠(ds)、それをシンフォニックに彩る阿部雅宏(key)のサポート陣も加え、つまりは観客も含めた陰陽座という存在そのものが迦陵頻伽なのだと実感させる。その雅やかな響きにメンバーが纏う色鮮やかな和装もよく似合い、日本最大規模のライヴハウスを埋め尽くした観衆を魅了してやまない。



 男女ツインボーカルに持ち味の異なるツインギターという“陰と陽”を駆使し、人間の心から生まれた妖怪を題材にすることで、人が持ち得るありとあらゆる感情を描かんとする彼らの楽曲は、振り幅やグラデーションはもちろん、発想も実に豊か。ミドルな「青坊主」で地を這うように迫れば、「ひょうすべ」でコミカルに弾け、「御前の瞳に羞いの砂」では砂かけ婆の純な乙女心を黒猫がキュートな動きも交えつつ表現する。中でも出色だったのが、2003年にリリースされた「飛頭蛮」に今回のアルバム曲「轆轤首」と、共に“ろくろくび”と読む楽曲を並べた場面。女房に逃げられた男の歌である前者に、そのメロディを一部流用しつつ女房の真意を歌った後者を続けることで、十余年の時を経て見事ドラマを完成させてみせたが、これも一貫して物語性のある曲を作り続けてきた陰陽座だからこそ為せる業だろう。何より「轆轤首」で我儘な女心を全開にした黒猫の妖しくチャーミングな歌唱には舌を巻くばかり。女忍者を主人公にその葛藤を歌う陰陽座ではお馴染みの「忍法帖」シリーズ曲を挟み、愛する人と刺し違えなければならない蜘蛛の狂おしい情念を映したバラード「絡新婦」での絶唱も言葉を失うほどに凄絶で、まさしく、彼女の他に何を迦陵頻伽と呼ぶべきやと痛感させられる。

 さらに、新旧200曲近いレパートリーからのバラエティ豊かな選曲でファンに歓喜の声をあげさせた終盤では、へヴィメタルのアグレッションと和の情緒を交錯させて陰陽座の核を提示。アニメ「バジリスク~甲賀忍法帖」の主題歌として彼らの名を世に知らしめた「甲賀忍法帖」に、同じ物語を別視点で綴った新作「愛する者よ、死に候え」では、アッパーなメタルチューンとキャッチーなメロディの見事な融合で大きな喝采を呼ぶ。かと思えばラストは優しくも切ないポップチューン「風人を哀れむ歌」で、取るに足らない自らの音楽を求めてくれるファンへのありったけの感謝を表すのが、彼らの“らしい”ところ。求められれば求められるだけ応えてしまうのが陰陽座で、アンコールでは陰陽座のツアーファイナル名物“極楽地獄”の門を開き、アンコールと呼ぶには躊躇われるほどのボリュームで、勇壮鋭利なメタル曲を畳みかけてゆく。そんな中で「がいながてや」等、弦楽器陣の出身地である愛媛・八幡浜の方言も取り入れた通称“お祭りソング”では、フロアに色とりどりの扇子が舞って、バンドとオーディエンスによる魂の綱引きを展開。そこで湧き上がる“おぉいちにぃのさんよいどぉ!”の声たるや、常日頃から瞬火が「宇宙一の客席」と呼ぶのも納得の熱さと一体感で、全くオーディエンスもバンドも同じき一つの魂、一つの迦陵頻伽なのだと確信させる。それが20年近くの長きにわたり、陰陽座が愛されるゆえんなのだ。

「陰陽座がいつ終わるか誰にもわかりませんが、死ぬまで生きると決めた以上、行くところまで行かないといけないので、これからもよろしくお願いします!」



 瞬火の頼もしい宣言の通り、20周年に向けて陰陽座の名を持つ迦陵頻伽の雄飛は止まることはない。6月14日には昨年末にバンド史上最大規模の会場であるパシフィコ横浜国立大ホールで行われたツアーの千秋楽公演を収めたBlu-ray&DVDが、7月5日には『迦陵頻伽』の12inchアナログ盤がリリースされ、6月18日には通算3度目となる台湾公演も敢行。夏にはオールリクエストでセットリストを構成する東名阪FCライヴも予定され、続いて新作の制作へと突入してゆく。「このアルバム『迦陵頻伽』を作って、これを超えられるのかと自分で恐怖しながらも、ブルブル震えてる場合じゃない」と瞬火は語ったが、常に数作先までの構想を携えている彼のこと、既に目算は立っているに違いない。美しき頻伽の聲は、それを求める人々の聲と重なり合って、より大きな輪となって輝きを増してゆくだろう。

■「愛する者よ、死に候え」(Live BD/DVD 『絶巓鸞舞』Official Preview)


このニュースへのレビュー

このニュースへのレビューを書いてみませんか?

このニュースへのレビューを投稿

  • ※レビューは全角500文字以内で入力してください。
  • ※誹謗中傷はご遠慮ください。
  • ※ひとつのニュースに1回のみ投稿できます。
  • ※投稿の編集・削除はできません。
UtaTenはreCAPTCHAで保護されています
プライバシー - 利用契約