『初恋の嵐のラストワルツ』@新宿LOFT ライブレポート
2002年3月、作詞作曲も担当していたボーカルの西山達郎が25歳の若さで急逝。制作途中であった音源を残されたメンバーで続行して、同年8月メジャーデビューアルバム『初恋に捧ぐ』を発表。2011年9月、FM802のDJ土井コマキによる番組「MIDNIGHT GARAGE」の10周年イベントで、約9年半ぶりにライブを行なった。
以後、フェスなども含めてライブ活動を精力的に行ない、スピッツによるカバー楽曲「初恋に捧ぐ」も話題になった。2016年1月には未発表曲のデモ音源をもとに制作された2ndフルアルバム『セカンド』も発表。特殊な運命を辿ってきた彼らだが、今年7月7日の新宿LOFTでのライブ「初恋の嵐のラストワルツ」をもって、活動休止をする事に。
開演前、BAR STAGEでは沖ちづるが、西山が参加していた別バンドであるコモンビルの楽曲「睡眠」と初恋の嵐の楽曲3曲の計4曲を披露。ラストナンバー「カモンアゲイン」は西山の弾き語り楽曲であり、沖の弾き語りがよりマッチして響く。
本編には岩崎慧(セカイイチ)、かみぬまゆうたろう、石崎ひゅーい、山田将司(THE BACK HORN)、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)、金田康平(THEラブ人間)、小宮山雄飛(ホフディラン)、南壽 あさ子、真城めぐみ(ヒックスヴィル)、中田裕二、辻村豪文(キセル)、松本素生(GOING UNDER GROUND)、コヤマシュウ(SCOOBIE DO)、安部コウセイ(HINTO、SPARTA LOCALS)、百々和宏(MO'SOME TONEBENDER、geek sleep sheep)、クボケンジ(メレンゲ)、曽我部恵一(サニーデイ・サービス)、斉藤和義、堂島孝平という19人のゲストボーカルが登場。 ※登場順
演奏は隅倉弘至(Ba)、鈴木正敏(Dr)というメンバーと、木暮晋也(Gt・ヒックスヴィル)、玉川裕高(Gt・ex、コモンビル)、高野勲(Key)、朝倉真司(Per・ヨシンバ)がサポートを務めた。
ゲストミュージシャンとして、中森泰弘(Gt・ヒックスヴィル)、伊東真一(Gt・HINTO、SPARTA LOCALS)、石垣窓(Gt・フリーボ)も登場。
オープニングナンバーを飾ったのは、『セカンド』のオープニングナンバーでもある『どこでもドア』。音源では西山が歌っているが、この日は隅倉が歌う。
2曲歌った堂島とコヤマと岩崎以外は、1曲終わるごとにセット転換。隅倉も「今日は、たくさんゲストボーカルがいるので、転換が空いてしまわぬように、出来るだけ曲間を短くしないと、僕らもお客さんも大変なんで!」と笑っていたが、シンプルながらも誠に贅沢な構成でライブは進んでいく。
唯一、初恋の嵐の楽曲ではないナンバーを歌ったのが曽我部。2015年12月に発表されたスピッツの『ハチミツ』トリビュートアルバムに、初恋の嵐feat.曽我部恵一名義として「君と暮らせたら」で参加。
これがきっかけとなり、メンバーでも予期していなかったという13年半ぶりのオリジナルアルバム発表に繋がった。第二期初恋の嵐にとって、大切な楽曲。人生、本当に何が起きるかわからないという事を、このバンドはいつも教えてくれる。
鈴木や玉川も1曲ずつ歌い、26曲目となる本編ラストナンバーは『セカンド』のラストナンバーでもある「それぞれの結論」。音源同様、隅倉が歌う。「それぞれの結論しか出せない」という歌詞が沁みる。やはり活動休止は心寂しいが、ここまで続いた事自体が奇跡なわけで、この結論で良かったんだと自分に言い聞かせながら聴く。
アンコール1曲目は、未音源化楽曲「微妙にイかせてくれない」。アルバム「初恋に捧ぐ」のプロデューサーでもあった木暮が歌う。木暮と初恋の嵐が初めて出逢った場所が新宿LOFTだっという想い出も明かされる。
そして、3人が唯一一緒に演奏した事があるバンドマンも木暮。激しめの曲調もあり、良い意味で、今日が最後だという事を忘れさせてくれる。
続く「Touch」は松本と岩崎が歌い、そのままセッションへと雪崩れ込む。LOFTのコンパクトなステージに約30人のミュージシャンが上がり、気が付くとドラムを斉藤、ベースを曽我部、ギターを百々、菅原が演奏するという何とも豪華すぎる内容に…。
メンバー紹介だけ、どれだけ時間かかるんだという中、松本を始めとして延々と謎のボケタイムが続く。
5年前、初ワンマンライブ「Storm of Last love」を東京、神戸の2箇所で開催された。2本目である神戸国際会館こくさいホールが選ばれたのは、西山の故郷が神戸であるから。
西山不在で故郷に錦を飾るという悲しき状況、それでも故郷に錦を飾れるという嬉しい状況…、何とも言えない想いでステージ上も客席もステージ裏も涙、涙であった。あの時は誰もが、これが最後のライブと想っていた。
それが、ここまで続いた今、祝祭でしかなかった。最初から終わりまで過剰な湿っぽさは一度も無く、小学生みたいにはしゃいでいるボケ合戦も、その場にいる全員が微笑ましく見守っている。
思わずコヤマが「3年後くらいに、また、やろうよ! やれる時にやっとかないと!」と言いだす。隅倉の「誰かがガタいったらやろうか! でも、正直なところ、やりきったかな」という言葉も本当に正直な想いであったと想う。
「西山がいい曲を作ってくれたから、みんな集まってくれたんだよ。後、マー君(鈴木)の人柄ね(笑)」…、それを隅倉が伝える。つくづく、いいバンドだなと感慨深くなる。
セッションの嵐が終わり、最後は隅倉が歌う。第二期初恋の嵐となってからは、初めて歌われる「カモンアゲイン」。開演前にBAR STAGEで、沖がラストナンバーとして歌った西山の弾き語り楽曲でもある。初恋の嵐は何が起きても、何度でも戻ってきたバンド。
「だけど最後はそうカモンアゲイン」という歌詞が心強く聴こえる。いつになるかは誰にもわからないが、また初恋の嵐は必ず「カモンアゲイン」してくれるだろう。明るく清々しい気持ちで、そう想えた真夏の夜の事であった。
(レポートテキスト:鈴木淳史/写真:西槇太一 )
また、この日会場で販売された、未発表音源2曲入りCD「宝物」の通販が本日よりスタートする。
「宝物」には、2016年1月に発売したアルバム「セカンド」にゲストボーカルを迎えて収録されていた『宝物』のオリジナルverと、『だんだんわからなくなる』のライブverの、いずれも西山達郎のボーカルによる音源が収録されている。
また、CDと同じく会場にて即完売となったTシャツ、トートバッグの受注販売も行われる。
ライブ概要&セットリスト
初恋の嵐 presents 『初恋の嵐のラストワルツ』2017年7月7日(金)
新宿LOFT
<セットリスト/ボーカル>
1.どこでもドア/隅倉弘至
2.だんだんわからなくなる/岩崎慧(セカイイチ)
3.雨宿り/岩崎慧(セカイイチ)
4.カントリーホーム/かみぬまゆうたろう
5.君さえ居れば/石崎ひゅーい
6.罪の意識/山田将司(THE BACK HORN)
7.君の名前を呼べば/菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)
8.No Power!/金田康平(THEラブ人間)
9.涙の旅路/小宮山雄飛(ホフディラン)
10.化粧に夢中な女の子/南壽あさ子
11.ブラインド/真城めぐみ(ヒックスヴィル)
12.Good-bye/中田裕二
13.さえない男たち/辻村豪文(キセル)
14.ジョイント/松本素生(GOING UNDER GROUND)
15.Body & Soul/コヤマシュウ(SCOOBIE DO)
16.宝物/コヤマシュウ(SCOOBIE DO)
17.真夏の夜の事/安部コウセイ(HINTO、SPARTA LOCALS)
18.Untitled/百々和宏(MO'SOME TONEBENDER、geek sleep sheep)
19.初恋に捧ぐ/クボケンジ(メレンゲ)
20.君と暮らせたら/曽我部恵一(サニーデイ・サービス)
21.星空のバラード/斉藤和義
22.君が待つ場所/鈴木正敏
23.果てしない想い/玉川裕高
24.あの娘のことば/堂島孝平
25.Nothin'/堂島孝平
26.それぞれの結論/隅倉弘至
En 1.微妙にイかせてくれない/木暮晋也
En 2.touch/岩崎慧(セカイイチ)&松本素生(GOING UNDER GROUND)&隅倉弘至
En 3.カモンアゲイン/隅倉弘至
オープニングアクト:沖ちづる