9月9日をもってユニットが解散…みみめめMIMI
9月13日にデビューから4年間を凝縮したベストアルバム「みみめめMIMI BEST ALBUM 〜Bon! Voyage!〜」を発売した、みみめめMIMI。9月9日をもってユニットの解散となったライブ“みみめめMIMI FINAL LIVE 2017 ~Bon! Voyage!~”が東京・代官山UNITで開催された。
突然のユニット解散と、タカオユキとしても芸能活動を引退。今年7月にボーカル・タカオユキから発せられた衝撃のニュースは、ファンを大きく動揺させた。
映像と音楽の新たな融合をコンセプトにスタートしたみみめめMIMIの世界観は、タカオユキが生み出す青くて切ないメロディと詞に、イラストレーターのちゃもーいが描くキャラクター“MIMI”が加えられることによって完成する。
新曲がリリースされるたびにその表情やスタイルが変化していった“MIMI”の姿は、最初、内向きで胸の内の言葉にできない想いを歌うことの多かったタカオユキが、次第に前向きで明るい未来を歌えるようになった成長と重なる。
つまりみみめめMIMIというプロジェクトは、4年の歳月をかけて、ひとりの少女が大人の女性へと自立していく様を表現したことになる。もちろん、その少女とはタカオユキのことだ。彼女は、フィクションを歌えないタイプのシンガーだった。
いつもむき身で、苦しさや喜びを歌にしてきた。そしてついに大好きな自分と出会うことができ、新たな人生の旅路につくことを決断したのだ。
ライブの冒頭、過去曲のボーカルトラックをリミックスした神秘的なSEに合わせ、スクリーンにはこれまで描かれてきた“MIMI”がグルグルと走馬灯のように映し出されていく。そしてドラム、ベース、ギターのバンドメンバーとともにタカオユキが登場すると、「Mr.Darling」「瞬間リアリティ」「1,2.少女」が立て続けに演奏された。
メジャーデビュー前に発表した思い出の楽曲と、軽快なロック・ナンバーで会場の温度を一気に上げたタカオユキは、最初のMCで「今日はみんなに笑顔になってもらいたい」と言った。このラストライブに涙はふさわしくない。そう宣言するかのような笑顔で、観客にコール&レスポンスを求める。
続いてのセクションでも、エモーショナルなアッパー・ソングがこれでもかと飛び出してきた。「CANDY MAGIC」でも「1/2ぶんこ」でも、髪を振り乱しながら全力の歌唱を見せつけるタカオユキ。「相対性レプリカ」では激しく明滅する照明のなか、渾身のダンスで観客を圧倒する。そして一瞬の静寂が訪れると、ステージの中央にはキーボード。
引き語りから始まったのは、1stアルバム『迷宮センチメンタル』のラストを飾った「SAY-YOU」だった。
この楽曲は、夢の世界(音楽活動)に飛び込んだものの、自分のことが好きになれず朝まで泣いた日々を綴った曲だ。タカオユキはこの曲を作ったことによって、「(ファンと)心が近づいた気がした」と過去のインタビューで答えているが、それはファンにとっても同じだ。この日、最初の共感の渦が会場を包み込んでいく。絞り出すように歌う彼女の声に、多くの観客が涙を浮かべる。
2度目のMC。ここで初めて、今回の解散・引退に関してタカオユキが語りはじめた。
「自分でもびっくりするくらいの大きな反響でした」「皆さんから本当に温かい言葉をたくさんいただいた」「胸を張って新しい道を進んでいけます」「今日はみんなに、心からありがとうの気持ちを伝えたい」「だから、私、泣きません!」
決然と言葉を発する彼女の表情は、実に晴れ晴れとしたものだった。その空気は少しウェットになってしまった観客にも伝わっていく。彼女の毅然とした最後の勇姿に、改めて熱い視線が注がれる。
そしてライブは後半戦へ。
ポップからバラードまで、緩急織り交ぜたメドレー「Am i ready~兎なみだ~お絵描き~チョコレート革命~チャチャチャ~たからもの」に続き、みみめめMIMI屈指のシリアス・ナンバー「リライミライ」。さらに、これまでのライブのハイライトを何度も飾ってきたキラー・ナンバー「天手古舞」「サヨナラ嘘ツキ」が叩き込まれる。タカオユキの宣言どおり、このときの会場は歓喜と興奮が支配した。彼女は少しでも観客に近づこうと、何度もステージを往復しては、可能な限りその手を伸ばす。そして観客もまた、力の限りのジャンプと声で、この日この時間を盛り立てる。
「このユニットがなくなってしまっても音楽はなくならないので、みんなの心の中に生き続けることができたらうれしいです。ありがとう」
タカオユキは最後のMCでこう言って、記念すべきデビュー曲「センチメンタルラブ」で本ライブを締めた。この楽曲であえてスクリーンにMVが流れなかったのは、きっと「あのときの私はもういない」という強い想いゆえだろう。もう、4年前の“MIMI”の面影は、タカオユキにはない。その力強い幕引きには、大きな大きな拍手が贈られた。
万雷の拍手のなか、響き渡るみみめめMIMIコール。しばらくしてTシャツに着替えたタカオユキが再登場すると、「もう少しだけ歌わせてください!」と笑顔を向ける。そして演奏されたのが、この度リリースされるベストアルバム『みみめめMIMI BEST ALBUM 〜Bon! Voyage!〜』に収録された新曲「君にワルツ」だった。
「みんながいたから自分は変われた。誰かのために歌を作れる自分になれた」と語る彼女の感謝の気持ちが、爽やかなバンド・サウンドに乗せて届けられる。さらに「みんなの明日からの日々が晴れ晴れとしますように」とショートMCを挟んで「晴レ晴レファンファーレ」を披露。軽快なフレンチ・ポップであくまで明るく、元気にステージを駆け回る。
しかし、ドラマは最後の最後にあった…
「次の曲で本当に最後の最後になります。今日までみみめめMIMIを信じてついてきてくれて、応援してくれて、本当にどうもありがとう。これからもみみめめMIMIの曲を聴いて元気になってくれたらうれしいです。これからも、音楽を通じてみんなと繋がっていると信じています」彼女はそう語りながら、ついに言葉を詰まらせた。溢れ出てくる涙。鳴り止まない拍手。
そこで「青い鳥」が流れ出す。幸せを探して羽ばたいた青い鳥。「SAY-YOU」のアンサー・ソングでもあるこの楽曲は、彼女が自分自身を見つけた曲だ。自分はなんのために生きているのか。2ndアルバムのタイトルにもなった“きみのヒロインに なりたくて”という歌詞が、涙に震えた声で会場に響きわたる。
みみめめMIMIは確かにこの4年間、ファンにとっての“ヒロイン”だった。その相思相愛がタカオユキに自信を与え、夢を与えていた。そして彼女はそのことを、あますことなく歌にした。きっとそれは本人の望むとおり、ファンにとっても永遠の思い出として、心に残り続けるものになるだろう。
演奏を終え、タオルで涙を拭きながら名残惜しそうに観客にあいさつして回ったタカオユキ。最後、ステージの奥に消えてゆくとき見せた表情は、満面の笑みだった。「やりきった」という言葉がぴったりの清々しさが、そこにはあった。
PHOTO & TEXT BY 西原史顕
セット・リスト
2017.09.09@代官山UNITM1. Mr.Darling
M2. 瞬間リアリティ
M3. 1,2,少女
M4. CANDY MAGIC
M5. 1/2ぶんこ
M6. 相対性レプリカ
M7. SAY-YOU
M8. 「Bon! Voyage! メドレー」
Am I Ready?~兎ナミダ~お絵描き~チョコレート革命~チャチャチャ~たからもの
M9. リライミライ
M10.天手古舞
M11.サヨナラ嘘ツキ
M12.センチメンタルラブ
EN1.きみにワルツ
EN2.晴レ晴レファンファーレ
EN3.青い鳥