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「辞職」を発表したぼくのりりっくのぼうよみ 最後の全国ツアーに挑む!


ぼくりり 圧巻のパフォーマンスを披露!!

「ぼくのりりっくのぼうよみという“天才”を葬ろうと思っております」

9月21日にオンエアされた日本テレビ系報道番組『NEWS ZERO』の特集で衝撃の決意を告げていた、ぼくのりりっくのぼうよみ。《私はぼくのりりっくのぼうよみという“天才”を辞職します。

自分で作り上げたこの偶像を破壊することで、3年間の活動を全うしたいと思います。終幕までぜひお楽しみください》とのコメントとともに、来年=2019年1月をもってその活動に幕を下ろすことを発表した。

それから4日後、9月25日。


ラストツアー「僕はもう……」開催

ぼくのりりっくのぼうよみの全国ワンマンツアー「僕はもう……」の初日公演が、東京・渋谷WWW Xにて開催された。

上記の「“天才”辞職宣言」以降初のライブの場ということで、ソールドアウト満員のフロアには期待感以上にただならぬ緊迫感が立ち込める中、19時定刻にライブはスタートした。

これまでドラム/ベース/パーカッションなども加えて多彩な編成でライブを行ってきたぼくりりだが、今回のツアーではお馴染みのサポートメンバー=DJ HIRORON(DJ)&タケウチカズタケ(Keyboard)に加え、佐々木秀尚(Guitar)を擁した新たなバンド編成でステージに臨んでいる。

フロアの張り詰めた熱気をあえて躱すように、序盤はゆったりとした雰囲気の中で1曲1曲じっくりと披露していくぼくりり。

独特の空気に包まれる

「今日はみなさん、『どんな気持ちで来ればいいんだ?』みたいな感じだと思うんですけど……僕もだいたい似たような感じなので(笑)。よろしくお願いします」というMCの言葉に、会場には安堵感と同時に抑えきれない寂しさがあふれたような、独特の空気感に包まれていく。

「アコースティックに色々と変えてやっていこうかなと思っております」とぼくりり自身も話していた通り、アコギ/セミアコ/テレキャスとギターを持ち替えつつしなやかなフレーズを繰り出す佐々木のプレイが、精緻に研ぎ澄まされたぼくりりの楽曲群と相俟って、そのアンサンブルに豊潤な包容力と奥行きを与えていたのが印象的だった。

「朝焼けと熱帯魚」のボサノヴァ風アレンジなど、サウンド面でも新たな趣向が随所に盛り込まれていたことで、傷つきやすい少年を思わせる柔らかな低音がより一層フロアを包んだ。透き通ったファルセットに観客は心を奪われる。そこに生じた空白を切り裂くように言葉が飛び込んでくる。



心に刻んでゆく

圧倒的な技巧で繰り出されるラップは、心に直接文字を刻みつける。

静かなイントロのピアノから一転、ブラックなビートが刻まれるアッパーな楽曲「CITI」で、ライブは一気に熱を帯びていく。シリアスな寓話の如き物語性を帯びた「Butterfly came to an end」で観客の手がリズムに合わせて高く揺れる。



最新曲を続々披露!

先日配信リリースされたばかりの「輪廻転生」「僕はもういない」といった最新楽曲、ぼくりりの起点とも呼ぶべき楽曲「sub/objective」をはじめ、3年間の道程を自ら総括するかのように『hollow world』『Noah’s Ark』『FruitsDecaying』のアルバム3作品から重要曲をセレクトしていたこの日のアクト。



ぼくりりからの言葉

ライブ中盤、「ぼくのりりっくのぼうよみは、来年の1月をもちまして終了致します。これまでご愛顧いただいた皆様へのご挨拶として、今回のツアーで最後に全国各地を回ってこようかなと――」と語りかけるぼくりりに向けて、オーディエンス一丸の悲しみの声が湧き上がる。

語られる辞職理由

「僕がひとりの人間として生きていく上で、ぼくのりりっくのぼうよみっていう存在を、このタイミングで完結させることが一番、僕の人生にとって素晴らしいことなんじゃないかなって」――そんなふうにぼくりりは、改めて自らの言葉で「辞職」の理由を伝えていた。

「ぼくのりりっくのぼうよみという、『自由なアーティスト』を演じすぎて、自分が何をしたいのかよくわからなくなってしまって」「それを捨てることで、はじめて『“本当の”ぼくのりりっくのぼうよみ』を示せるんだと思います」

言葉を慎重に選びながら話す本人の様子からも、ぼくのりりっくのぼうよみ終幕へ向けての覚悟がリアルに伝わってきて、会場は物寂しく静まってしまう。

そんな中、「輪廻転生」でオクターバーを駆使して低音を重ねた歌声が天使と悪魔のユニゾンの如く不穏に響き、「僕はもういない」のタイトなアンサンブルと切なげなギターの音色とともに幾度も響き渡る《僕は 僕は 僕はもういない》という言葉が、非常に強力に観客の頭と心を震わせて残った。

真摯な批評精神とポップの極みを最短距離で結びながら、ひとりひとりの想いと密接にリンクする――そんな唯一無二の表現者・ぼくりりの在り方が、この日のライブにも如実に表れていた。

全8公演にわたって行われるツアー「僕はもう……」はこの後、新潟/仙台/札幌/名古屋/大阪/福岡の各都市を巡った後、10月30日の東京・恵比寿LIQUIDROOM公演にてファイナルを迎える。

そして、12月12日にはラストオリジナルアルバム『没落』とベストアルバム『人間』が同時リリースされる。



文:高橋智樹
フォト:川崎龍弥

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