公開日:2015年2月5日
本作のタイトルは「原点回帰」。噛み砕いて言えば初心に戻るという意味だが、彼らにとっての初心、つまり原点とはクラブである。
本作のミュージックビデオもその名の通り、先月2015年の年明けに渋谷T2で行われたニューイヤーズパーティーでの臨場感あるライブ映像になっている。会場の雰囲気、お客さんの熱気、ポールダンサー、LEDロボット、煌びやかなレーザー、その中心でパフォーマンスするCTS、どれもが今の日本のクラブカルチャーをそのまま投影したライブ映像といっても良いだろう。クラブという形態は、日本では1990年代以降、ディスコの衰退とともに頭角を現した文化の1つだが、最近では風営法に起因する様々な問題が顕在化し、クラブカルチャーそのものが風前の灯と言っても過言ではない。片や世界ではEDM(Electronic Dance Music)が大きな台風の目となり、それまでスタジアムミュージックの中心でもあったロックやメタルといったジャンルを押しのけ、数万人規模のフェスティバルが世界各地で頻繁に開催されるようになってきた。このEDMムーヴメントの最大の特徴としては、フェスに限らず、クラブでプレイされる楽曲がそのまま自国のヒットチャートに反映されているところだ。Avicii、Calvin Harris、David Guettaなど、アメリカのビルボードや欧州各国のヒットチャートに詳しい方ならすでにお馴染みのアーティストだが、彼らはコンポーザーであると同時にDJであり、主戦場はライブハウスではなくダンスミュージックの出発点、つまりクラブやフェスである。まずはここに世界と日本との間に大きな溝が存在していることを私達は忘れてはならない。要するにダンスミュージックの発展において、クラブカルチャーは切り離すことの出来ないテーマなのだ。
重ねて申し上げるが、CTSの原点とはクラブである。クラブカルチャーから産まれた存在と言ってもいい。
そこで彼らが目指しているもの、それは、ダンスミュージック及びクラブカルチャーの発展にあることは言うまでもないだろう。特にダンス後進国の我が国において、ダンスミュージックが市場で受け入れられることによって生ずる恩恵は決して小さくない。そのため、CTSが製作する楽曲は明確に日本のヒットチャートを狙ったものばかりだ。しかもそれは海外で人気の高いEDM系楽曲を安易にコピーするのではなく、今の日本の市場に分かりやすくローカライズしている点が素晴らしい。トランス、ハウス、ダブステップ、ドラムンベースなど、確かに海外で産声を上げたジャンルから多大なインスパイアを受けていることは事実だが、そこに日本人好みのスパイス(泣きのメロディ)を投入し、尚かつ日本語歌詞に徹底的にこだわることでカラオケ文化へのリスペクトさえも感じさせる内容に仕上げている。
これはかつて日本の製造業が欧米製品の模倣から独自の製品へと発展させていったように、CTSからは確かなものづくりの精神を肌で感じることが出来る。
今回のシングルで言えば、間奏部分に当たるところでMartin Garrixの「Animals」やArmin van Buurenの「Ping Pong」を彷彿とさせる演出が組み込まれており、これをJ-Popとして全く違和感なく聴かせるところに改めてCTSの職人芸ともいうべきローカライズ能力の高さを感じさせるものとなっている。
(ちなみに2014年度のDJmag誌におけるTOP DJ 100において、Martin Garrixは4位、Armin van Buurenは3位の実績を持つ。)
また、歌詞の世界観もデビュー当初からブレることなく、今回もポジティブでメッセージ性の強いものとなっており、まるで痛快無比そのものである。
ダンス系楽曲の場合、ここまでリスナーの内面に踏み込んでくるアーティストも珍しいのではないだろうか。
極端に言えば、きゃりーぱみゅぱみゅのように、もっと享楽的で記号的な歌詞にも出来るはずだが、あえてそれはせず、ロックやフォークのアーティストのように力強いメッセージを発信しているところはCTSの大きな魅力の1つである。
他方、One Ok Rockなどロック界隈では世界進出を意識して英語歌詞にこだわりを持つアーティストが増えてきたが、この点においてCTSは真逆の方向を向いており、あくまでも日本という自国の文化の発展に重点を置いていることが一目瞭然である。
日本の音楽市場では、かつて小室ファミリーがダンスミュージックを起点に一世を風靡していた時代があり、ブームの終焉と同時に草木は枯れ果ててしまったものの、ダンスミュージックに適した土壌はこのときすでに耕されており、あれから時を経た今でも肥沃なフロンティアであることに異論はない。
CTSはその大地(J-Pop)に新しい種(EDM)を蒔き始め、長らく不況の続いている日本の音楽市場において大きな花を咲かせようとしている。
同時にそれはクラブカルチャーを活性化させるものであり、今回のシングルで彼らが目指すゴールがより明確となったことは大きな収穫である。
メジャーデビューから1年が経ち、真価が問われる節目において、改めてCTSが提示した未来。
「自分次第 過去 未来」という今回の歌詞にもあるように、我々の未来はきっと僕らの手の中にあるのであろう。
CTS 1st Single「原点回帰」(配信限定)
2015/02/04 Release
https://itunes.apple.com/jp/album/gentenkaiki-single/id956019907
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