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【ライブレポート】アリーナワンマンを控えるフレデリック、新体制で迎えたワンマンファイナルで見せた年明けからの可能性


今年は5月にサポートドラマーとして活動していた高橋武が、正式メンバーとしてバンドに加入、8月にはメジャー2枚目となるシングル「かなしいうれしい」を、そして10月には4枚目となるミニアルバム『TOGENKYO』をリリースと、今後の大きな躍進が期待できる顕著な動きを見せたフレデリック。

その展望を裏付けるかのように、この日は2018年4月30日に、彼らの地元でもある兵庫・神戸ワールド記念ホールにて、バンド初となるアリーナワンマン公演『神戸・FREDERHYTHM ARENA 2018 〜KOKYOのTOGENKYO〜』が行われることが発表されている。

この日のステージもソールドアウト、その上昇傾向を表すかのように満員御礼のライブとなり、スタート直前にフロアはぎっしりと人が埋まった。

アナウンスでは「前方が密集する恐れがあります」などと聴きなれない注意が流れ、いかにこのステージが人々に注目されていたかを物語っていたかのようだった。


突き詰めて作られた楽曲、情熱いっぱいのプレー

スタート前の会場。真っ暗なステージの上には、イーゼルに乗せられた一つの柄が、上面から向けられた一筋のスポットライトで照らされていた。淡い色彩に彩られたその絵は、最新ミニアルバム『TOGENKYO』のジャケットにあるイメージ。ぽつりと置かれたこの絵が何を意味するのか?ステージとともにそれが明かされるのを、その絵は待ち構えているようでもあった。

やがて定刻を少し過ぎたころ、いよいよステージのスタートの時を迎えた。「フレデリック、始めます!」その声とともに、ベースの三原康司、ギターの赤頭隆児、ドラム高橋の三人が登場、遅れてボーカル、ギターの三原健司と、ついに役者はそろった。そして、序盤からいきなり走り抜けるような「オンリーワンダー」でライブは開始した。フロアの誰もが、腕を上げメロディから感じられるリズムに合わせて寸分狂わぬ動きを見せる。



間違いではない、メロディからのリズム。フレデリックの楽曲のメロディは、バッキングに合わせて適当に音階を辿って作ったようなものはなく、一つ一つのメロディラインがバッキングのハーモニー、リズムにキッチリとはまっている印象がある。そのため、メロディそれ自体から曲のリズム、キメのようなものが感じられ、聴く側としても、単に音を体に入れるだけでなく、ついリズムに合わせて体を動かしてしまう、そんな傾向が見えてくる。

この日も「KITAKU BEATS」「オワラセナイト」「愛の迷惑」とアップテンポなナンバーで序盤がスタートする中、観衆はそのメロディの展開に合わせてずっと体を動かし、時に歌の掛け合いをしたり、ジャンプしたりと、まるでその動き自体もフレデリックの、ライブの構成の一つとも思えるほどに印象的な光景を見せていた。

「迷惑だなんて…愛してるぜ!」健司が「愛の迷惑」の合間で叫び、また一つ大きな歓声を叫ぶ。その楽曲それぞれに巧妙さを見せ、「フレデリックらしい」と思わせる味を染み込ませた楽曲だが、健司の熱いパフォーマンスは、それをしっかりライブにつなげてくる。そんな健司に対し、高橋の刻むタイトなリズムに康司がグルーブ感たっぷりのベースラインと赤頭のシャープなギターカッティングが溶け合い、分厚いハーモニーを作り上げ、しっかりとフレデリックの世界を会場に構築していた。

「足りないものを埋める」ことで大きくなるフレデリック



序盤で見せたリズミカルでダンサブルなナンバーは、フレデリックの印象を聴く者に刻むアピール性の強いもの。対して続いた中盤では、スローダウンしてみたり、また巧妙なリズムを取り入れてみたりと、楽曲作りの部分で本領を発揮している部分がフィーチャーされる。例えば曲の表面的な部分を除いても、8ビートかと思えば16ビート、マイナー調の楽曲かと思えば、さりげなくメジャーコードをセンス良くちりばめてみたりと、単純によくある曲調のカテゴリでは括れない、彼らならではの音楽という印象が、どの曲にもある。



しかしその一方、70〜80年代のディスコ調のリズム要素が多く含まれるのも、彼らの楽曲の中では大きな特徴の一つ。そのリズミカルな作風は、聴いていると体を動かさずにはいられない。「うわさのケムリの女の子」から始まった中盤も、出だしの急激な盛り上がりとは対照的ながら、リラックスした雰囲気でまた違うフレデリックの魅力を見せ、「ディスコプール」「パラレルロール」とグルーブ溢れるステージに観衆は、意識を他に向けることができない状態にあった。

また演奏に合わせてグラフィックが生で反応するといったインスタレーションを巧妙に仕掛けられた、ステージ背面へ投影された、ヒップランドミュージック所属のINTとのコラボレーションによるプロジェクションマッピングも観衆の関心を大きくステージに向けさせ続ける要因として大きく機能した。

そしてステージは終盤、健司の煽りからステージはクライマックスへ。「この4人となったきっかけになった曲」と称される「かなしいうれしい」から、「シンクロック」「リリリピート」へと続き、彼らがメジャーデビューし注目されるきっかけとなった「オドループ」へ。

観衆は皆まさに“踊って”いた。いや、この曲を聴いて、踊らずにはいられなかった。あるいは、踊らされていたともいえるかもしれない。そしてこの日のステージは「TOGENKYO」で、まさに彼らの“桃源郷”を表現しつつ、エンディングを迎える。

さらに求められたアンコールにより、ラスト曲「たりないeye」を含む2曲を披露しステージは終了した。

「2017年最高のワンマンライブをやらせてくれて、ホンマにありがとうございました!」最後にこの日の礼を告げた健司。

この一年の歩みは「足りないものを埋めていく」ものだったと振り返ってる。

終始彼らの歌に合わせて体を動かし、声を上げながらライブを楽しんでいた観衆は、まさしくその「足りないもの」であり、この日詰めかけた観衆のその動きは、フレデリックと一体となり「足りないものを埋める」ことになったようでもある。

その「埋まった」光景は壮観だった。

だがそれでもまだ「足りない」と彼らは思っているようだ。

「足りない」と思うその思いは果てしなく彼らを大きくしていく。

この日はその一面が垣間見られたステージであり、逆にいえば、さらに彼らが大きくなっていくことを、予感させるものでもあった。



Text: 桂 伸也
Photo: Viola Kam (V'z Twinkle) / 渡邉一生


フレデリズムツアー2017 〜ぼくらのTOGENKYO〜

2017/12/21 @東京・Zepp Tokyo
セットリスト
01. オンリーワンダー
02. KITAKU BEATS
03. オワラセナイト
04. 愛の迷惑
05. うわさのケムリの女の子
06. ミッドナイトグライダー
07. まちがいさがしの国
08. みつめるみつあみ
09. ナイトステップ
10. スローリーダンス
11. ディスコプール
12. パラレルロール
13. かなしいうれしい
14. シンクロック
15. リリリピート
16. オドループ
17. TOGENKYO

encore
EN01. FUTURE ICE CREAM
EN02. たりないeye

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