In TrainTour ファイナルは渋谷WWW!
ポップな楽曲でフロアを揺らせる北海道・札幌出身の4人組The Floor。
2018年2月にリリースしたメジャー1stアルバム『ターミナル』をひっさげたIn Train Tourファイナルの会場は東京・渋谷WWW。歓喜の歌が響きわたるなかメンバーが登場する。
“明けない夜なんてないんだ”と歌う『Cheers With You!』からライブはスタート!
「北海道札幌、The Floorです。よろしくどうぞ!」
好調なササキハヤト(Vo)のボーカルに、多彩な音色を操る永田涼司(Gt)。
ミドルテンポの陽気なナンバーをコウタロウ(Dr)のドラムとミヤシタヨウジ(Ba)のベースが支える。
続くアルバム2曲目の『ドラマ』は、いつまでも消えない思い出を歌った切ない歌詞が印象的な疾走感のあるナンバー。
“笑って 泣いた一瞬のドラマ 君が忘れても忘れない”
メンバーも気に入っているというフレーズを会場もひとつになって歌う。一体感のある光景が広がる。
ダンサンブルなビートの『はたらく兵隊さん』。冒頭からトップギアの4人にこたえるように会場のテンションも急上昇する。
代表曲を次々に投入!
地元札幌、大阪と続いてこの日を迎えたThe Floor。「今夜は一晩中、The Floorの音楽で泳ごうぜ!」
横ノリのリズムが心地よい『POOL』。心臓の鼓動のようなバスドラムに合わせて、パーカッションを鳴らす永田涼司(Gt)。ササキが手拍子をうながすと、4つ打ちのビートに乗せて会場が大きく揺れる。
アップビートな『TWW』。
「もっともっと飛び跳ねられますか!?」
会場をあおるササキに対して、会場も手を振りあげてながらジャンプで応戦する。
メインソングライターである永田涼司のギターソロ。影響を受けたというSPECIAL OTHERS風の反復フレーズからメロディアスに展開するギターが、曲と一体となって盛り上げる。
続いてギターのイントロが流れた瞬間、会場から歓声が起こる。
「東京のみなさん!念のため聞いときますけど、まだまだ遊びたりないだろ!?遊びつくそうぜ!」なかば強引なササキの振りから、アップテンポな『リップサービス』へ。
ハイトーンから中音域まで伸びやかに歌いこなすササキ。恋人同士の嘘と本音を綴った歌詞を自在にメロディーに乗せて運ぶ。
ギターの残響音から、アルバムでもっともハードなナンバーである『煙』そして『灯台』。
ツアーやライブを通して磨きあげた4人のアンサンブルはすでに完成の域にある。パンクやニューウェーヴなどさまざまな要素を含む手の込んだアレンジを、誰かのまねではなく自分たちのスタイルとして完成させているのがThe Floorのすごいところだ。
「まだまだいけますか?今日はノンフィクションな1日にしましょう!」から続けざまの『ノンフィクション』へ。
“二度とは来ないこの一瞬”を焼き付けるように演奏する4人に客席も自然と手を振り上げる。
いくつもの顔を持つポップソングたち
この日のセットはここまでノンストップで進行。「今日はまだまだ長いので、ここらでゆっくり自由に踊りましょう!」というササキの言葉を受けて打ち込みのドラム音が鳴り響く『Wake Up!』。
コウタロウはシンセパッドを、永田はキーボードを演奏。
永田が好んで聴くというヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)にも通じるようなギターバンドの枠にとらわれない実験的でありながらポップな1曲だ。
“100年経ってまた会えたら 100年前の話をしよう”と歌う『Flower』。
The Floorの歌詞は、出会いと別れ、記憶の中の風景を歌ったものが多い。なかでも切ない中にキャッチーなサビを持つこの曲の歌詞はコウタロウによるもの。
会場が落ち着いたところで、ようやくMC。
「In Train Tourということで、僕たちThe Floorという音楽の電車に乗っているわけなんですが、みなさん乗り心地はいかがですか!?今日は最後までのこの素敵な空間がずっと続くといいなと思います。むしろ、それ以上行きたいと思うので、最後まで東京よろしく!」
ディレイのかかったギターからはじまった『パノラマ』。
“単純な物語じゃもう物足りない”という歌詞は急ピッチで駆け上がるThe Floorを見つめるファンの思いを代弁しているかのようだ。
パンキッシュな『SING!!』、定番フレーズからたたみかけるサビでフロアの熱気は急上昇する。一糸乱れないグルーヴで、縦へ横へと会場を揺らせる4人。
続く『ハイ&ロー』はアップテンポのスカ調からグッドメロディーのサビへ。
陽気な曲調と対照的な“足元に散らばっている平凡を並べたら それを幸せと呼べる日が来るかな”という歌詞が切ない。
「泣きながら踊る」というThe Floorのコンセプトを体現したような1曲だ。
必殺の名曲「イージーエンターテイメント」
ライブも終盤へ。電子音が会場に鳴り響くと、スケールの大きなイントロから『イージーエンターテイメント』へ。「頭の中をからっぽにしようぜ!」
The Floorを代表する1曲は、四つ打ちのダンサンブルなビートにフックのあるメロディーを兼ね備えた曲だが、そこで歌われる歌詞は意外にもシリアスだ。
“顔のない鳥 さあ歌ってよ 輪になってダンスを”
“僕らきっと笑顔になれりゃ嘘だっていい”
The Floorの4人は、ただフロアを揺らせることだけを考えているわけじゃない。
彼らが語る“泣きながら踊る”というコンセプトは、自分たちの世代が抱える現実や虚無感から目をそらさない、という確固たる意思に裏打ちされている。
“イージー”な娯楽でも、“顔のない鳥”でも、いま一瞬でも笑えるように、人生を肯定できるようにと彼らは歌う。
一見して普通の20代であるThe Floorの4人がこれほどまでにポップであること、泣けること、聴き手を躍らせることにこだわる背景には、そんな理由があるのではないだろうか。
ステージを動き回るササキや永田とジャンプする客席。その瞬間、間違いなく渋谷WWWのフロアは揺れていた。
出発点を奏でるThe Floor
アルバム『ターミナル』には人が集まる場所、出発点という意味が込められている。ホームの雑踏や発車のアナウンスのサウンド・コラージュからの『寄り道』。
“いつまでも君と二人 踊り続けて生きて行こう”
“狭い部屋で立ち尽くして”いた日々から、フロアを揺らせているこの瞬間へ。それさえも記憶の中にとどめてThe Floorは進む。
ギター弾き語りから、ササキの青春を詰め込んだという『18』へ。
「高校3年生のときにはじめてバンドって格好いいなとライブハウスで見て思って、それからたくさん時間がかかったけど、東京渋谷WWW、最高の景色です。ありがとう!」
前へ、前へと飛び込んでくるボーカル、もっと大きなステージで観てみたいと思わせる堂々とした演奏だった。
「The Floorというバンドに出会ってくれてありがとう。最後の曲です」と言って奏ではじめたのはアルバム最後の曲『ファンファーレ』。
青春の心の揺れをそのまま歌い上げることで生まれる圧倒的な共感と推進力。メンバーのロマンチストな一面と、北海道出身というスケールの大きさ。
自分たちのすべてを置いていくかのようにThe Floorの4人はステージを去った。
夢の果てに向かうストーリー
アンコールでは、ソウルフルなサビの『夢がさめたら』と『Wannabe』を披露。The Floorを有名にした『Wannabe』ではひときわ大きい手拍子が会場から起きる。
“夢の果てに向かうストーリー 終わりはないのさ”という歌詞はこれからの4人の姿を映しているようだった。
この日、会場には遠く沖縄から駆けつけたファンも。
“君が居るからさ 怖いもんはないよ”という言葉は、自分たちをここまで連れてきてくれたファンへの率直な思いと重なる。
「また必ず会いましょう」という言葉を残して、The Floorによるメジャー初のIn Train Tourファイナルは終幕。
アルバム『ターミナル』で刻まれた彼らの現在地点。多くの出会いを重ねながら、彼らの旅は新たな目的地へ続いていく。めぐり来る季節を駆け抜けながら、The Floorはこれまで以上にフロアを揺らせ続けるに違いない。
TEXT:石河コウヘイ
Photo:MASANORI FUJIKAWA
セットリスト
01.Cheers With You02.ドラマ
03.はたらく兵隊さん
04.POOL
05.TWW
06.リップサービス
07.煙
08.灯台
09.ノンフィクション
10.Wake Up
11.Flower
12.パノラマ
13.SING!!
14.ハイ&ロー
15.イージーエンターテイメント
16.寄り道
17.18
18.ファンファーレ
19.夢がさめたら
20.Wannabe