その姿はまるで、大勢の召使いを従えた女王様のよう
真っ赤なビロードの幕に覆われたステージ、上空には巨大なシャンデリアも。豪華なステージ装飾に目を奪われる。暗くなった場内に流れだす妖しいワルツの調べ。その音色は、触れた人たちの感情を開いた扉のその先の世界へと誘う。やがてその音は猛々しい表情へと変化。激しい唸りへ導かれるようにメンバーたちが次々と姿を現した。フロアー中から沸き上がる絶叫。BAND-MAIDのライブは、『DOMINATION』から幕を開けた。
『DOMINATION』の演奏が始まったとたん、身体中の血が一気に沸き立ちだした。5人から繰り出される激烈な音の衝撃に刺激され、突き上がる無数の拳と絶叫。熱狂する観客の様を見て、もっともっと来いよと煽るように雄々しく歌う彩姫。その姿はまるで、大勢の召使いを従えた女王様のよう。
続く『Play』では、ギターのKANAMIとベースのMISAによる激しく絡み合う様な演奏で、観客たちの拳は更に天高く突き上げられ、咆哮にも似た絶叫を発する観客たちの姿が印象的だった。
激しく唸る演奏の上であげた熱い雄叫び。その声に触発され、『Spirit!!』ではさらに多くの拳の山が生み出される。激しさを抱いた演奏と、気持ちを鷲掴みにするメロウな歌。アグレッシブな表情と心揺さぶるエモーショナルな面を同時に伝えてゆく姿が、とても刺激的だ。
オイオイと声を張り上げ、騒ぎ立てる観客たち。熱狂へ激しい色を塗り重ねるように届けた『the non-fiction days』。激烈なリフビートに魂を煽られた『モラトリアム』でも、場内中から「オーオーオー」と大きな合唱が沸き起こる。彼女らの突きつける挑発的な演奏に触発され、感情がどんどん融解していくようだ。
BAND-MAIDのお給仕へようこそ。
「BAND-MAIDのお給仕へようこそ」。小鳩ミクのお馴染みの挨拶。続くアンニュイなハードロックナンバー『Alive-or-Dead』でも、彼女たちの演奏は、更に加速していく。沸き立つ感情、情熱的な歌に心が沸騰した『CROSS』。続く『Turn me on』でも、BAND-MAIDは激烈なリフビートをガシガシ刻みながら、もっともっと騒ぎ狂えと観客たちを挑発し続けていた。
フロアー中から沸き上がる絶叫と突き立つ無数の拳、『Don't you tell ME』でふたたび起きたギターのKANAMIとベースのMISAによる演奏のバトル。メンバーと観客たちが、そして、メンバー同士が触発しあい、場内へ大きな熱狂という核を作りあげていた。その核は際限なく膨らみ続け、どんどん熱を蓄えてゆく。
その歌声と演奏を零さないように、心で受け止めていた。
それまでの熱狂を優しく抱きしめるように流れたのが、ミドルテンポのロックナンバー『Daydreaming』。スケールあふれた演奏の上で、力強さを秘めながらも切々と歌い上げる彩姫。その哀切な歌声が、観客の気持ちを震わせてゆく。激しく攻めるだけではない、相反する心情も魅せることで、彼女たちの心模様へ、より強く惹きつけられていた。沸きだした熱狂は、続く『One and Only』が作り上げた激しい唸りの中に昇華されていく。
中盤には、KANAMIの奏でるアコギの演奏の上で彩姫が朗々と歌いあげる、2人によるアコースティック編成での『Puzzle』と『anemone』を披露。シンプルな演奏だからこそ、彩姫の感情的に搖れる歌声が余計に胸を突き刺してゆく。このセクションでは、それまでの喧騒が嘘のように、誰もが2人の歌と演奏へ引き込まれていた。その歌声と演奏を零さないように、心で受け止めていた。
女王様のごとく挑発し続けるBAND-MAID
静寂を切り裂くようにうねりを上げて突き刺さる『DICE』が観客の身体を直撃。ストレートでソリッドな演奏だからこそ、そこへ込めた意志がダイレクトに身体を刺激してゆく。
重く、激しく唸る『secret My lips』が作りあげた重厚なグルーブ。続く『CLANG』では、観客たちの「オーオーオー」の声が会場中を包み込む。荒ぶる演奏に触発され、熱狂の雄叫びを上げずにいれない。身体中の魂が燃え盛るようだ。熱した感情のままに湧き上がる声のやり取りを交わした『FATE』。その演奏に触発され、観客たちが上下に会場を揺らしていたのも印象的だった。
本ツアーで初披露となるインストナンバーを挟み、アニメのエンディングテーマにもなった『Carry on living』を投下。踏み込んだアクセルを緩めることなくお給仕は進行し、BAND-MAIDが初めて作詞/作曲を担当した『Alone』に突入した後も、女王様のごとく挑発し続けるBAND-MAIDが生み出す熱は、会場中に渦巻いていた。
メイドワールドに包まれるZEPP TOKYO
“おまじないタイム”と呼ばれるMCでは、小鳩ミクが「世界征服へ向けて、一歩一歩大きくなっていきたい」と改めてバンドの目標への意思を表明し、BAND-MAIDのお給仕では恒例になっている「萌え萌え」「キュンキュン」のコール&レスポンスに進んでいく。多くのご主人様・お嬢様がライブでのソリッドな印象とは異なる、ほんわかしたポップな世界観に度肝を抜かれつつも大きな声で、小鳩ミクの「萌え萌え」「キュンキュン」の声に反応する。メイドワールドに包まれるZEPP TOKYOは初体験だった。
その勢いのまま、小鳩ミクがメインボーカルを担当する『Rock in me』へ。小鳩ミクから発せられるポップな歌声と楽器隊が生み出すラウドでヘヴィな演奏のコントラストに、場内の一体感が最高潮に達し、“おまじないタイム”の影響力に脱帽した。
逆にご主人様・お嬢様を終始攻め続ける
ライブも終盤戦へ。彩姫の凛々しくもおおらかな歌声とハード&ワイルドな演奏に感情が沸き立った『I can't live without you』。激しく攻める演奏は、続く『you.』でも炸裂。「かかってこい!!」と観客たちをけしかけるように攻めた『FREEDOM』。『REAL EXITENCE』が飛び出す頃には、フロアー中がカオスな熱狂に包まれていた。最後に叩きつけた『Choose me』を通し、熱狂をビッグバンさせたBAND-MAIDのメンバーたち。
2時間半弱に渡ったライブ。でも、一度魂がバーニングしたとたん、その熱をずっとずっと引き連れたまま、気がついたら熱狂の中、全身汗だくで全てを出し切ってしまったかのように絶頂に達していた。
本来、ご主人様・お嬢様に仕えるメイドたちが、逆にご主人様・お嬢様を終始攻め続け、昇天させる、BAND-MAIDによるお給仕をぜひ一度体験をしてもらいたい。メイドの沼から抜け出せなくなるだろう。
TEXT:長澤智典
PHOTO:MASANORI FUJIKAWA