WEAVING ROOM
杉本雄治(Piano &Vocal)、奥野翔太(Bass)、河邉徹(Drums)の3人からなるWEAVERは、デビュー10周年が間近に控え、今年は様々な試みを積極的に実施。特にこの日のイベントタイトルにも歌われた「WEAVING ROOM」は、普段のツアーやイベントの内容とは違い、ミニマムな空間での"WEAVERの部屋のような、くつろげる音楽を披露する空間"をコンセプトとして、これまでアコースティックセットや弾き語りなどの、ある面実験的なステージを披露してきた。
ちょうど七夕の日にあたったこの日、ステージではこれにちなんで「星」や「月」といったキーワードに関連した曲を集め、WEAVERならではのスペシャルなステージを披露した。
WEAVERが誘う特別な空間に魅了された観衆
薄暗い部屋の中、わずかに青い照明が漂っていた、スタート前の会場。観客席の四方に置かれたモニターやプロジェクタは、ステージが始まるまでWEAVERのMVをずっと流し続ける。観客席からステージまでの距離の近さもあってか、この会場を埋めた観衆が皆ワクワクした表情を見せる中、WEAVERの曲「だから僕は僕を手放す」のMVのちょうど中間あたりで映像は消え、サウンドもフェイドアウト、続いてSEとともに河邉、奥野、杉本と順に観衆からの拍手に迎えられてステージに登場する。いよいよ皆が待ち望んでいたひと時が到来した。
SEが止まると、3人は左腕をまっすくに伸ばし、天を指差す。オープニングナンバーは、まさしくこの会場に訪れた一人ひとりを歓迎する「Welcome!」。楽器に向き合い、時には歌いながらも、しっかりと観衆の姿を見つめる3人。
二人称の物語をつむぐ彼らの楽曲が、さらにステージと観客席との距離を縮め、単に音楽を聴いている、あるいはライブを見ているだけではないと思わせる、特別な印象を与えてくる。そして「星」「月」といったキーワードがちりばめられたこの日のセットからは、幻想的な空気も会場に漂っていた。
「この日にWEAVERは今年、新しいことを始める第一歩にしよう、と年の初めくらいから話をしていて、ようやくそれを皆さんに届けることができる。だから嬉しい気持ちでいっぱいです」会場に駆けつけてくれた観衆への感謝の思いとともに、この日のステージに掛ける思いを語る杉本。
近日、奥野はアーティストのサポートベーシストとして活躍、杉本はミュージカルへの楽曲提供、河邉は小説家としてデビューと、WEAVERの3人はそれぞれ新たな可能性を見出しつつある。
そしてその兆しをWEAVERとしても見せるべく、行われたというこの日のライブ。七夕だけに、ツイッターで募集した「短冊に込める願い」を披露しながら、他愛もない話で"WEAVERの部屋のような空間"にくつろいだ雰囲気を運び込む3人。
その一方で、まさに"走る汽車"を連想させ、ロマンチックな旅へ皆を誘う「66番目の汽車に乗って」、ゆったりしたリズムの中で、自身の世界を思ったような「新世界」と、一見シンプルながら巧みなリズムチェンジで、一番届けたい部分をアピールする楽曲の数々が、観衆を魅惑の世界へ連れて行く。
この日は完全着席と断りを入れられていた観衆だったが、皆そのステージに思わず体を揺らし始める。そしてここまで見られなかった3人のワイルドな一面が見られる、激しいリズムの「管制塔」で、ステージはいよいよクライマックスを迎えた。
「誰も一人にさせない」WEAVERの「奇跡」を期待させるプロジェクトへ
「ありがとう!一緒に最高の星を降らせようよ!」杉本の一言から、この日最高の盛り上がりを見せた「Shine」へ。それぞれが、プレーをしながらも前を向く3人。その彼らのまなざしから、思いが聴く者にダイレクトに伝わっていく。「星」「月」とロマンチックなキーワードが随所にちりばめられたこの日のステージだが、改めてこのようなフレーズが同時に存在し、まさに自身の未来を感じさせる意思があったことを、改めて気づかせてくれる。
一番の盛り上がりでは杉本が観衆に向かって手招き、一緒にフレーズを歌い、思いを共有する。そして改めてこの日への感謝の気持ちと共に、3人は一度ステージを降りた。
3人がいなくなっても、会場は明るくならなかった。やがて周辺のモニターには、人気声優の花澤香菜によるナレーションに合わせて「夜空を見上げて、時々思う」という言葉から始まるひとつの物語が、映し出されていった。
世界初の人工流星が流されるという半ば信じられない話の中で起きた、とある学生のひと時の記憶、そしてこの物語は、このように締めくくられた。
「人が星を降らすことができるなら、人は奇跡を作り出せるということだ。
もしも君の世界を悲しみが包み込んだとしても、俺は夜空に流れ星を降らして、君に奇跡を見せてあげよう。
たとえ明日が来ないとしても、俺は君のことを、明日も愛している。」
これは、WEAVERの新プロジェクトである"流星コーリング"プロジェクトのイメージ。
河邉が書き上げた2作目となる小説"流星コーリング"より派生したもので、この後に続いてWEAVERがラストに披露した新曲「最後の夜と流星」は、そのイメージを踏襲して書かれたものだという。
こうしてWEAVERはこのステージで、彼らの"新たな第一歩"を示した。一方河邉は、ステージの中で語っていた。WEAVERという言葉の中には"WE"という言葉が含まれていること、この"WE"が示すものは、自分たちのスタッフ、そしてファンのみんなであってほしいこと。そして「(WEAVERとしては、その"WE"を)誰も一人にしない作品を作っていきたい」という願いを。
果たして、WEAVERはここからどんな「奇跡」をファンに見せてくれるだろうか?可能性は、まだ無限に広がっていきそうだ。
TEXT:桂伸也
セットリスト
『WEAVING ROOM〜Festival of WEAVER〜from YouTube Space Tokyo』2018/7/7 @東京・YouTube Space Tokyo
01. Welcome!
02. 夢じゃないこの世界
03. 66番目の汽車に乗って
04. 新世界
05. Beloved
06. Time Will Find A Way
07. 管制塔
08. Shine
09. 最後の夜と流星
★流星コーリング特設サイト
http://www.weavermusic.jp/ryuseicalling/