10年にして初の日本武道館
PHOTO 浜野カズシライブ中のMCでヴォーカルのオカモトショウが「高校の音楽室で練習をしていた頃は、まさか、日本武道館で演奏するとは夢にも思っていなかった」と語っていた。誰もがバンドを始めた当初は、口では「夢は日本武道館、東京ドーム」と言いながらも、それを本気で目指している人など、ほんの一握りなのが現実だ。
それよりも目の前の楽しさへ夢中になり、何時しか音楽へ本気になり。その本気に結果がついて来るにつれ、先の言葉を真剣で考え出すのが一般的と言えようか。
OKAMOTO'Sもそれと同じ心の道のりを通ってきたのかは定かでないが、少なくとも、バンドを始めたばかりの頃は、目の前のお客さんたちを圧倒させることに喜びを覚えていたのではと想像する。だけど、何時しかそのパワーが同世代前後に留まらず、大人たちをも魅了。それが、デビューの道へ繋がれば、今の軌跡へと大きく広がっていった。
OKAMOTO'Sが初めてのCDを発売して以降。ハマ・オカモトが加入し現在のメンバーになってから、今年で10年を迎えた。1月には、通算8枚目となるアルバム『BOY』を発売。
本作は、彼らの中にある"夢見る純粋な少年性"を軸に据えて制作した作品。同アルバムを手に、OKAMOTO'Sは4月より全国ツアー「OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY LIVE "LAST BOY"」をスタート。同ツアーのファイナル公演として、バンドにとって10年目にして初となる日本武道館公演を6月27日(木)に行った。
10年目で日本武道館という道のりをどう捉えるかは、人それぞれだ。メンバー自身も、背伸びをした挑戦だったかも知れない。でも、けっして見栄を張ったわけではなく、「自分たちなら形を成せる」と信じたうえでの挑戦だった。結果、会場を埋めつくす人たちが日本武道館に足を運び、舞台上の4人へ熱狂を届けていた。
もう一つ、"らしいな"と思えたのが、10周年や初の日本武道館公演だからベスト・オブ的な内容を届けるのではなく、あくまでも最新アルバム『BOY』へ収録した曲たちを中心に据えたライブを行ったということ。
これも、「大切なのは特別感ではなく、何時もの自分たちの姿をリアルに伝えること」という姿勢の現れだろうか。たとえ会場が日本武道館という大きな場であろうが、彼らはけっして浮かれることはない。
いや、浮かれていたかも知れないが、青春の思い出を作ろうという集大成感ではなく、長い道のりを歩み続けるバンドだからこそ、日本武道館公演もまた、自分たちの年表へ刻んでゆく景色の一つという姿勢でいるところが格好いいじゃない。ここからは、この日の模様を駆け足で紹介していこうか。
OKAMOTO'Sのファン歴は関係ない
PHOTO 浜野カズシライブは、最新アルバム『BOY』の1曲目を彩った『Dreaming Man』からスタート。力強いビートを描きながら、楽曲は走りだした。攻めに徹した演奏とオカモトショウの煽る歌声に触発され、会場中の人たちも大きく手を掲げ、気持ちを一つに、互いに沸きだす気持ちをぶつけあいだした。
雄々しい気持ちを胸に、高らかに声を上げ激しく身体を揺さぶり続けた『Hole』。凛々しい歌声を魅力に、サビでは魂を開放するように歌いあげた『FOOL』と、序盤は、アルバム『BOY』の収録順通りに進んでゆく。
続くブロックは、ファンキーでソウルフルな楽曲を軸に構成。会場中の人たちの身体を横揺れさせた『NO MORE MUSIC』。気持ちの内側から興奮を呼び起こした『Higher』。眩しい光を集めるように届けた『NEKO』では、身体の芯に響くグルーヴに触発された会場中の人たちが、高く掲げた手を揺らし続けていた。続く『ハーフムーン』では、メロウなグルーヴミュージックを通し、OKAMOTO'Sはムード漂う空気も醸しだしていった。
スリリングな演奏の中へ跳ねるディスコビートを組み込んだ『Animals』の登場だ。心地好い緊張感を抱きながらも、オカモトショウの甘い歌声に親しみやすさを覚えていたのも嬉しいこと。気持ちが躍動してゆく感覚が、とても刺激的だ。
続く『偶然』では、ギターのオカモトコウキがピアノを弾きながらヴォーカルを担当。甘くメロウな楽曲を通し、触れた人たちを心地好いウネリの中へ落としていった。オカモトコウキはそのまま鍵盤を演奏。
とてもスタイリッシュでダンディな楽曲に魅力された『Phantom(By Lipstick)』でも、熱を持って上がり続けるグルーヴミュージックに身を預けながら、心とろける心地好さを覚えていた。
MCでは「中学の同級生で組んだバンドが日本武道館に立つことが出来ました」と嬉しさを語る場面や、「10年前からのファンも最近ファンになった人たちも同じOKAMOTO'Sのファン、ファン歴は関係ない」と、好きである気持ちを大切に思う発言も出れば、ハマ・オカモトは、「10年も活動していると特殊能力を手にすることが出来る」と前置きしたうえで、掛け声と共に舞台に炎を吹き出す特殊能力を披露。
他のメンバーがやっても炎は出ず。ハマ・オカモトのときだけ炎が出ていたように、MCでコミカルな面を見せていたのも彼らの魅力の一つ。ちなみに炎は楽曲で使用することはなく、あくまでもこのMCのパフォーマンス用に仕込んでいたところも、なんとも贅沢じゃない。
BOYは、ずっと俺たちの心の中にいる
PHOTO Shun Komiyama後半は、最新アルバム『BOY』へ収録の、ダブな要素を活かした『NOTHING』からスタート。重くゆったりとしたグルーヴを場内へ作りだし、その上に塗り重ねたのが、1stアルバムに収録していた『マダラ』。この楽曲を通しサイケデリックなサウンドを投影、世界観を巧みに塗り変えていった。
『ART(FCO2811)』でサイコな感覚へ意識や身体をトリップさせれば、ヘヴィグルーヴな『SAVE ME』を通し、観客たちを大きなうねりの中へ呑み込んでいった。
続く『HEADHUNT』では、雄大な楽曲に身を預け、メンバーと観客たちが「ワオワオワオ」と叫びを交わす光景も登場。意識を高揚へ導くグルーヴナンバーを次々塗り重ねながら、満員の観客たちの感情をOKAMOTO'Sは恍惚へと連れ出した。
オカモトコウキのギターが唸ると同時に、楽曲は、力強く疾走するロックンロールナンバーの『BROTHER』へ。演奏が進むごとに、気持ちが滾り続けてゆく。客席には拳突き上げる様も生まれていた。次々と沸きだす興奮。その気持ちをさらに爆発させるようにOKAMOTO'Sは『ROCKY』を突きつけた。
感情のストッパーの壊れた観客たちが、メンバーらの煽りに触発され、拳を振り上げながら高らかに声を上げ続ける。身体も心も熱く触発され、楽しそうに飛び跳ねていた。
後半には、会場を揺さぶる大きな合唱も登場。何時しかそこは、ライブハウスにも似た、気持ちと気持ちをぶつけあい共に熱を生み出す闘技場と化していた。
「19歳のときからここまで、俺たちは突っ走ってきました。今の俺たちは、BOYから大人へ変わっていく狭間にいます。変わってしまう前の一瞬一瞬を詰め込んだのが、『BOY』というアルバム。でも、このバンドで活動を続ける限り、ずっとBOYでいていいんじゃなないかな。正直に、ピュアに音楽に向きあい続けていけばいい。BOYは、ずっと俺たちの心の中にいる。ずっと夢を追いかけ続ける、その気持ちこそがBOY。みんなの心の中にもある同じ気持ち、それがBOYなんだと思う」
本編最後に、OKAMOTO'Sは『Dancing Boy』を披露。跳ねた演奏の上で、思いを羽ばたかせるように。心の中に抱えたBOYを開放するように、オカモトショウは未来へ向けた自分たちの強い意思を高らかに歌いあげていった。
気持ちを解き放つように歌う声が何時しか翼となり、会場中の人たちの心にも翼を授けていたように、メンバーと観客たちが心を一つに、共に歩みたい未来へ向け、大きく心の翼を広げ、ピョンピョン羽ばたき続けていた。共に声を上げ、気持ちを舞い上がらせていった。
「俺たちは、心の中のBOYを信じているから、これからも(OKAMOTO'Sを)続けていくぜ!!」。無邪気に叫ぶその言葉を、素直に信じてついていきたい。そんな気持ちに心が包まれていた。
アンコールは『DOOR』からスタート。続く『Beek』は、彼らが10代の頃に作った楽曲。ロックンロールな楽曲からは、無鉄砲なエナジーが沸きだしていた。
最後にOKAMOTO'Sはダンシングナンバー『90'S TOKYO BOYS』をプレゼント。会場中を巨大なディスコ空間に塗り替え、熱狂の光景を描きながらライブの幕を閉じていった。
最後の曲の前に語った「俺たちの夢は世界制覇です。何処までも夢を追いかけていくので、これからもOKAMOTO'Sをよろしく」の言葉が、嬉しく胸に突き刺さった。
心の中でBOYが熱く叫び続けている限り、夢は何時までだって追いかけ続けられる。この日の日本武道館公演は、その意識を改めて宣言したライブにも思えていた。
PHOTO Shun Komiyama
TEXT 長澤智典
PHOTO Shun Komiyama
浜野カズシ
セットリスト
■<OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE “LAST BOY”>2019年6月27日(木)@東京・日本武道館セットリスト01. Dreaming Man
02. Hole
03. FOOL
04. NO MORE MUSIC
05. Higher
06. NEKO
07. ハーフムーン
08. Animals
09. 偶然
10. Phantom (By Lipstick)
11. NOTHING
12. マダラ
13. ART (FCO2811)
14. SAVE ME
15. HEADHUNT
16. BROTHER
17. ROCKY
18. Dancing Boy
encore
en1. DOOR
en2. Beek
en3. 90’S TOKYO BOYS