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「ACIDMAN LIVE Extra Show "Second line & Acoustic & Rock"」で魅せた未来への展望。

カメラマン:Yukihide "JON..."Takimoto

「ACIDMAN LIVE Extra Show "Second line & Acoustic & Rock"」と題された、アコースティックライブツアーの追加公演が、4月24日、NHKホール(東京)で開催された。

ACIDMAN自身が自分たちの楽曲を新たな解釈で再構成したリアレンジ盤の第2弾である『Second line & Acoustic collection II』。そのリリースツアーとして行われた計8公演の全国ツアー「ACIDMAN LIVE TOUR "Second line & Acoustic collection II"」の東京公演が即日ソールドアウトになったことに伴い、設定されたものだ。

タイトルに「&Rock」とある通り、アコースティック形式のセットとバンドセットの両方でライブが行われると事前アナウンスされていた。フタを開けてみると、それは実に異例のステージだった。前半に「Second line & Acoustic」として13曲、10分舞台転換を挟んで後半は「Rock」として11曲。さらにアンコール。通常の2マン対バンのライブ以上のボリュームで、トータル3時間半を駆け抜けた。

2月21日に同じNHKホールで行われた全国ツアーの東京公演よりも、さらにシンプルになったステージセットに大木伸夫(Vo&G)が現れると、中央で深々と頭を下げる。定位置に腰を掛け、ギターをつま弾きながらルーパーを駆使して次々と音を重ねていく。会場は全員が着席して整然としていたが、一つ一つの音が重なるたびにその響きに引き込まれ、高揚感を増していく。やがて佐藤雅俊(B)と浦山一悟(Dr&Cho)が現れて楽曲の全体像が姿を見せる。“アコースティック”と言いつつ、音はアンプラグドばかりではない。ときにエレクトロであり、アンビエントであり、ときに元のアレンジを超えたスリリングな破壊力を呈する。その引き出しの多さには舌を巻くばかりだ。

変則的なドラミングで疾走する「イコール」、ラテンのフレイバーを忍ばせた「±0」、佐藤がアップライトベースに持ち替えて演奏する「type-A」。シンプルなセットならではの、3人の音の距離感が心地よい。多彩な意思をもって再構築されたACIDMANの楽曲の世界。「大きな流れの中にたゆたうような「REMIND」、カントリー風にシャッフルを利かせた「I stand free」、大木のギターと佐藤のベース、かき鳴らす2人の弦の音が絡み合う「swayed」。アレンジ力もさることながら、それを再現する3人のアンサンブルが巧みだ。原曲より激しさを増した「HUM」では、普段よりも少しリラックスして歌う大木の声ののびやかな魅力が際立つ。

楽曲の解釈を変えて楽しむこの「Second line」シリーズには、ゲストミュージシャンがたびたび参加するのも特徴。2月の公演でも「スロウレイン」にジャズ・ピアニストの板橋文夫氏、「リピート」にストレイテナーのホリエアツシ氏が参加していた。「その模様は、今後発売されるDVDで楽しんでください」としっかり宣伝も交えながら進行する中、「リピート」のさわりを奏で始めたところで大木が演奏を中断してしまう。「……だめだ。やっぱりホリエ君がいないと歌えない。声が震えちゃう!」そこでホリエアツシ氏が登場。ピアノとともに大木との絶妙のハーモニーを響かせる。

「楽しい。けれども、このセットでのライブがもう終わるのかと思うと、今日はさみしさのほうが勝つなあ」

MCでたびたび大木は繰り返した。それだけ今回のツアーが充実していたのだろう。刹那を感じるからこそ「いま」という瞬間の大切さが際立つ。大木はこんな言葉で表現した。

「どんなことにでも終わりが必ずやってくる。終わっていくのはさみしいし悲しい。でも、終わりを受け入れて、終わりを知って、終わりとともに生きる。それに気づいてから、日々がすごく楽しくなった」

そして奏でられる「季節の灯」。シンプルな照明がとても美しく、そのメッセージに寄り添った。NHKホールは最新の技術が音響にも照明にも仕込まれている。音と視覚を大事にするアーティストにはうってつけの会場だ。新しいアレンジをまとったACIDMANの楽曲が、照明の変化によって視覚的にも広げられていく。

「ALMA」「FREE STAR」と、穏やかな高揚感と幸せな光に包まれてアコースティックセットは終了。以前大木が、この現実世界とは別に異次元のもう一つの世界が同じ時間軸で進んでいるという話をしていたが、もしかしたらこの「Second line & Acoustic」は、そのパラレルワールドに存在するACIDMANが奏でたものではないだろうか。舞台転換のための10分の休憩をはさんで、後半のバンドセットがスタート。流れてきたのは、2010年のアルバム『ALMA』のイントロダクションである「最後の国 (introduction) 」だ。オーディエンスはいつものようにクラップ。確かこの曲もパラレルワールドでの世界を描いたものだ。この曲が、アコースティックセットからロックセットへの入り口となるのは、なんだか必然のように感じられた。

ロックセットの1曲目は「World Symphony」そして「アイソトープ」。ステージ奥全体に広げられたスクリーンに、宇宙を思わせる映像が映し出される。アグレッシブなバンドサウンドが爽快に吹き荒れると、フロアから拳やOiコールが熱く突き上がる。全員が総立ちだ。アコースティックセットで深く深く内側に溜めていたエネルギーを一気に開放するかのように、むせかえるような狂騒の渦へと場内が一変する。

「実は今日が、4カ月ぶり、今年に入って初めてのロックステージです。Second lineがすごく気持ちよくて、このまま落ち着いたナイスミドルを目指そうかと思ったけれど(笑)、でも2曲やってみて、やっぱりロックは最高――!!」

大木のその言葉に、場内のテンションはまた爆発する。春を迎えた喜びの「式日」、生命の神秘を歌う「migration1064 」、愛らしいリフが心を弾ませる「アルケミスト」と曲は続く。気づけばSecond lineを含めて、過去のアルバムから非常にバランスよく演奏曲がセレクトされているのがわかる。

「インストゥルメンタルは好きですか」という大木の問いかけで「Slow View」がスタート。もちろん背景いっぱいのスクリーンに映像を伴っている。この曲はいつ聴いても、いつ見ても、圧巻だ。続く「2145年」は、原曲よりもエクスペリメンタルなアレンジで魅了した。ロックセットとはいえ、ただ飛ばしたり煽ったりするだけではないのがACIDMAN。普段ながらの音楽性のふり幅の広さを、いつものように見せつける。その世界観に、総立ちのオーディエンスもただ引き込まれる。

■ACIDMAN LIVE TOUR “有と無” Documentary film


続く3曲は、いまから14年前にリリースされた彼らのプレデビューシングル第1弾だった「造花が笑う」、最新のオリジナルアルバム『有と無』からシングルカットされている「Stay in my hand」、欠かせないライブアンセムの「ある証明」と、アグレッシブなナンバーを畳みかける。天井の高いNHKホールの、上空遥か彼方まで届きそうなほどの怒涛のシンガロングが巻き起こる。音楽を心から楽しむときは、昨日のことも明日のことも忘れて、ただこの瞬間だけが存在する。その空間だけに熱狂できる。ACIDMANのライブではとりわけ、その感覚をリアルに感じることができるが、この3曲も、まさにその瞬間の連続だった。

最後の曲に向かう前に、このたびの熊本地震で被災された方々への義援金に対する礼が述べられ、彼らなりの震災への想いを語った後に、大木はこう締めくくった。

「すべてのことに於いて、いつ終わりが来るかわからない。だから、誰かを嫌ったり、嫉妬したり、馬鹿にしたり、いじめたり、そういう時間がもったいない。楽しい時間を1分でも1秒でも長く生きていけるようにと思っています。どんなしんどいときでもにっこり笑って、そして大切な人が笑っていてくれたら、いい人生だと思えるんじゃないか」

アンコールでは、立ったままのアコースティックセットで新曲を披露。大木が親族の死に際して感じたことをストレートに言葉にした、愛にあふれたバラードだ。そしていつもの「Your Song」もアコースティックセットで演奏。表現方法の異なる2部構成のセットにパラレルな世界を垣間見たこの夜の充実感は、何物にも例えようがない。ACIDMANは異次元を行き来できるほど自由だ。来年の結成20周年メジャー15周年に向けて、彼らの表現はますます自由になる。リスナーも、もっともっと自由に受け取ればいい。「いまこの瞬間」を堪能しながらも、未来への展望が垣間見えた一夜だった。

(文/宮本ゆみ子)
作品情報
タイトル:ACIDMAN LIVE TOUR “有と無” Documentary film
発売日:2016年5月31日(火)
DVD:1枚組 PROV-3013 ¥4,000(tax in)

発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
販売元:FREESTAR / ユニバーサルミュージック合同会社

●ACIDMAN MOBILE / http://acidman.mobi/
●ACIDMAN OFFICIAL WEB SHOP / http://acidmanstore.jp/

ACIDMAN HP

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