2016年10月から放送されているアニメ【魔法少女育成計画】
中学2年生の主人公、姫河小雪は周りが精神的に大人になっていく中、ずっと魔法少女に憧れていた。スマホのアプリゲーム「魔法少女育成計画」をプレイして楽しんでいた小雪は、ある日突然本物の魔法少女になれる人物に選ばれた。
憧れの魔法少女になったことに喜びを覚え、固有魔法を使って人助けをたくさんしていたが、町に魔法少女が増えすぎたために数を減らすという通達を受ける。この時点からマジカルキャンディーを巡る命を懸けた闘いに物語は変わっていく…。
そのオープニングを歌っているのが、アニメでリップル役として出演している沼倉愛美だ。その曲名は『叫べ』。明るい魔法少女物語ではないこの作品だからこその、独特の表現が話題となっている。今回はアニメと楽曲から伝わる作品の壮絶さやキャラの心情に迫っていきたい。
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今 叫べ
見つめてる嘘ばかりの世界
描いてるアイという暗闇
心をなくしても
君だけは守り抜く
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最初の「今 叫べ」の部分だが、歌い方も叫んで訴えるように歌っている。これはキャラクターそれぞれの想いや、なぜ魔法少女を減らすために事実上の命の奪い合いをしなくてはならないのかという、目の前の理不尽に対しての悲痛な叫びだ。
「見つめてる嘘ばかりの世界」と既にこの「人数を減らすため」という安易な理由だけで、シリアスな闘いをしていないのが読みとれる。実際にストーリーが進むにつれて、選別や激しい闘いが見たいなどの裏の理由が出てきている。
この事に関して魔法少女達の考え方は様々で、闘いに乗り気な者から小雪のように反対派の者までバラバラだ。人を助けたいや仲間意識という心が闘いに発展することもあある。それ故に「アイという暗闇」という表現にも納得がいく。
この作品ではキャラクター同士の関係性も深く描かれており、特にラ・ピュセルはスノーホワイト(小雪)を守るために他の魔法少女と闘う覚悟をしている。
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明日酷い憎しみが
僕ら支配しようと
手を伸ばしてくるんだ
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当初の生き残る条件であった、キャンディーを集めるというルールもだんだんと命の奪い合いになっている。魔法少女同士の闘いが見たいという裏理由により、相当シリアスな戦闘シーンも増えていく。
キャンディーの数が最下位にしても、闘って誰かが命を落としても、どちらにしろ人数が半分になるまでは毎週誰かが命を落とす。こんなゲームを要求した運営側や仲良しだった魔法少女を手にかけた別の魔法少女に対して「酷い憎しみ」が生まれるのも無理はない。
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超えるべき嘆きの嵐され
許したくはない本性
そんなのツライコワイ 知らないで
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どんなに辛いことや悲しいことがあっても、自分が命を落とさないために前を向かなければいけない。これは彼女達にとって「超えるべき嘆きの嵐」なのだ。しかしどれだけ前を向いて進もうとも「許したくはない」という本性は隠しきれないだろう。
そんな苦しい毎日が「ツライ」いつ自分が狙われるか、死んでしまうことへの恐怖で「コワイ」もはやカタカナ表記になっているので、精神的にも相当厳しい状態なのが伝わってくる。
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見上げてる 叶わなかった夢
求めてる キズナという不実
命を捧げても
幸せを摑み取る
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「見上げてる 叶わなかった夢」は小雪の心情を表している。自分が夢見ていた、多くの人を幸せにする魔法少女が、自分が置かれている現状とはかけ離れている。作中でもその気持ちをラ・ピュセルに打ち明けている。1番魔法少女らしい小雪だからこそショックも大きいのだ。
中には命の奪い合いなどをせずに助け合おうと呼びかけている人物もいる。しかし自分の命が危ない状況の中、協力することを考えるのは難しい。「キズナという不実」とはまさにそのことだ。不実という歌詞から、裏で暗躍しようとしている魔法少女もいるかもしれない。
「命を捧げても 幸せを摑み取る」は途中追加された便利アイテムのことを示している。アイテムを入手できる代わりに、対価として寿命を払わなければならない、事実上の命の課金だ。しかし寿命を払っても生き残ろうとする必死さが分かる。
歌詞全体を見ていくと、苦悩しながらも立ち上がろうとする意志が感じられる。死と隣り合わせの試練を与え、生き延びた者が真の魔法少女になれるのではないか。この楽曲からは本当の意味の「魔法少女育成計画」が込められている。
キャラクターそれぞれに事情があり過去がある。固有の魔法を駆使しながら、どんな状況になっても強く前に進んでいく姿がこの楽曲から想像される。沼倉愛美自信もリップルを演じているので、この作品やキャラクターへの想いが強い。
最近では魔法少女というジャンルの作品も、シリアスなストーリーを軸としているものが増えている。主題歌も明るくキラキラした内容になるわけがない。だからこそ、歌詞に隠されている心情や伏線を感じ取ることができるのだと私は思う。
アニメも面白いが、楽曲に注目して照らし合わせてみるのも一興だろう。
TEXT:SHIN