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「運命は必然では無く偶然だ」と言い切ったYUKIの本心とは?

YUKIはかつて一世を風靡したバンド、JUDY AND MARYの元ボーカルである。『そばかす』という曲なら聴き覚えがあるかもしれない。バンド解散後、ソロになった彼女は、2017年3月頃にアルバム『まばたき』を発表したばかりだ。YUKIがソロになってから3枚目のアルバム『joy』に収録された『JOY』という曲がある。タイトルを区別するために、曲名は大文字だ。明るく踊れるアップテンポな曲だが、今回は特に歌詞について掘り下げてみよう。

YUKIの「JOY」



いつだって世界はわたしを楽しくさせて
いつか動かなくなる時まで遊んでね
しゃくしゃく余裕で暮らしたい
約束だって守りたい


「いつか動かなくなる時まで」「余裕で暮らしたい」と、歌詞の主人公の希望が並んでいる。「世界」は彼女にとって明るく楽しい場所で、いつまでも遊んでいたい場所なのだ。

しかし、『JOY』の主人公は余裕では暮らせず、約束も守れない。だから「余裕で暮らしたい」「約束だって守りたい」と願望をあらわにしている。

この願望を、アーティスト「YUKI」の身に実際に起こった事実と照らし合わせてみよう。例えば、JUDY AND MARY時代の名曲『Hello! Orange Sunshine』の作詞で陥った大きなスランプ。締め切りは何度も伸ばしたはずだ。

解散後、ソロになってからもつきまとう「JUDY AND MARYのYUKI」という肩書きには、彼女なりの苦しみがあった。

当時の苦しみをソロになって1枚目のアルバム『PRISMIC』の中で、『呪い』というタイトルの曲にしたためたこともある。

そんな風にYUKIは、世界は楽しいことばかりじゃないことを知っていて、だからこそ彼女はここで、主人公に託した自分の望みを叫んでいるのだ。

けれどこの望みは、誰にだって当てはめることのできる、日常的で些細なものにも見える。『JOY』が共感を呼ぶとしたら、この歌詞に集約されるかもしれない。

離れた二人をつなぐ呪文は「J・O・Y」


確かな君に会いたい
百年先も傍にいたい
どんなに離れ離れでも
ふたりをつなぐ呪文はJ・O・Y


サビに入ると、主人公は誰かと離れ離れになっていることが明かされる。「傍にいたい」ということは、恋人かもしれない。

しかし、つないでいる呪文が「J・O・Y」、つまり「楽しみ」だということは、「世界」のことをも指しているのだ。「君」は彼女の「世界」であり、運命の相手なのだろう。

ここで「運命」という言葉を使ったが、これにはまだ続きがある。歌詞の続きを追ってみよう。

YUKIの心の変化が垣間見える楽曲「J・O・Y」


いつも口からでまかせばっかり喋ってる
運命は必然じゃなく偶然で出来てる


2番に入ると、明確に「運命」というキーワードが現れる。全国ツアー『YUKI concert tour “Flyin’ High”’14〜’15』のファイナル公演では、YUKIはこう歌っていた。

運命は必然という偶然で出来てる」この違いは何だろうか?

かつて「運命」と「必然」は、YUKIの中で別々の言葉だった。しかし時を経て、ライブという環境で新たに歌うとき、「偶然」だった「運命」は「必然」になったのだ。

「偶然」の連続はやがて「必然」となり、「必然」は積み重なって「運命」になる。

この世界で歌っているYUKIの新たな発見であり、YUKIと世界をもっとうっとりさせる運命=JOYに対する、YUKIの心の変化でもある。

「いつだって世界はわたしを楽しくさせて」と歌い始めたときの彼女の願いが、わずかながらも明らかに形を変えて、私たちの前へ再び現れたのだ。

『JOY』を書いた当時よりも、もっともっと、YUKIは世界と運命を楽しんでいる。少なくとも、私にはそう見えてならない。

TEXT:辻瞼

▷YUKI オフィシャルサイト ▷YUKI Official Instagram @yukiweb.net_official

この特集へのレビュー

男性

ライライ

2020/12/09 22:39

この曲を初めて聞いて歌を好きになった。

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