「十五の僕」の手紙
拝啓 この手紙読んでいるあなたは どこで何をしているのだろう十五の僕には誰にも話せない 悩みの種があるのです
未来の自分に宛てて書く手紙なら
きっと素直に打ち明けられるだろう
曲の始まり、「十五の僕」の手紙はこんな書き出しから始まっていく。
幼い子供でも、立派な大人でもない15才という年齢。勉強や恋愛、友情や将来などいくらでも悩むことはある。不安や悩みで心が埋め尽くされてしまう日々だってあるだろう。そんな心の内を他人に打ち明けるのは、難しい。
でも、もし打ち明ける相手が未来の自分だったら。この悩みから抜け出す方法を知っているかもしれない大人の自分だったら。心の扉を少し開けて、そっと想いを託すことが出来るのかもしれない。
未来の自分へだからこそ話せる押し込められていた心の声
今 負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな僕は誰の言葉を信じ歩けばいいの?
ひとつしかないこの胸が何度もばらばらに割れて
苦しい中で今を生きている
今を生きている
押し込められていた気持ちが、言葉になって綴られていく。大人からすればまっさらで何もないから若さは輝いて、自由に見えるかもしれない。
でも若い本人達からすれば何もない不安とか、真っ白だからこその怖さがある。そして守る術を身につけていない柔らかい心は、人知れずひっそり傷ついたりもする。
そんな他人の目には映らず、自分の中だけに存在する物も、未来の自分への手紙だから話せるのだ。そして遠慮することなく、”こんな私はどうしたらいいのだ”と心の声をそのまま叫ぶことができるのだ
大人になった僕からの返事
拝啓 ありがとう 十五のあなたに伝えたい事があるのです自分とは何でどこへ向かうべきか 問い続ければ見えてくる
荒れた青春の海は厳しいけれど
明日の岸辺へと 夢の舟よ進め
「十五の僕」の真剣な手紙に、大人になった僕は返事を書く。「大人の僕」は、「十五の僕」が抱える不安や悩みを笑ったりはしない。
むしろ”今悩んでいることは無駄じゃないし、その先にはきちんと答えがある”と言ってくれる。
そう伝えられるのは「大人の僕」がきちんと悩みの先に居て、悩みから見つけ出したものは自分にとって必要な物だと思えているから。
悩むことを肯定してくれる言葉、そして悩み続けることの意味を伝えてくれる言葉は、きっと迷う心を後押ししてくれるはずだ。
青春と呼ばれる時期の苦しさや難しさを理解してくれるこの曲は、もがく子供達の心にそっと寄り添ってくれる。しかし、この曲は大人の心も大きく揺さぶる。
「十五才の僕」から届く大事なもの
今 負けないで 泣かないで 消えてしまいそうな時は自分の声を信じ歩けばいいの
大人の僕も傷ついて眠れない夜はあるけど
苦くて甘い今を生きている
大人になっても悩みや痛みは尽きない。どうしたらいいのか分からなくなったり、大切にすべき物を見失ったりもする。
そんな時、心に湧き上がるのは「十五歳の僕」と同じ、”何を信じればいい?”という自分への問いかけだ。
迷う度に問いかけて、問いかける度にきっと誰もが自分だけの答えを1つずつ見つけていく。
だから「十五才の僕」へと宛てた「自分の声を信じ歩けばいいの」と言葉は、「大人の僕」が問い続ける中で見つけた自分なりの答えであり、「十五才の僕」だけではなく今の自分にとっても支えになる答えなのだ。
この楽曲が描き出すかつて過ごした15歳という時を通して、大人は今を見つめ、そして今の自分にとって大事なものをもう一度自分の胸に刻むことができる。
アンジェラ・アキの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」
拝啓 この手紙読んでいるあなたが幸せな事を願います
この曲は、こんな歌詞で結ばれていく。これはアンジェラ・アキが「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」に触れた全ての人へと宛てた一文だろう。
アンジェラ・アキが届けてくれる「手紙」はきっと多くの人を励まし、そしてそれぞれの心に暖かく残るはずだ。