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【インタビュー】あなたが、楽しく生きられますように―大森靖子 新作へ込めた願い (2/2)


あなたのこうしたい/こうなりたいを失う機会がなくなりますように



──今回のリリースを発表した1月20日のLINE LIVE配信では、「道重さんの“圧倒的かわいい”と、大森さんの“アンダーグラウンドな手数かわいい”が混ざり合う曲になっている」と仰っていましたね。

大森靖子:掛け算になったかなぁと思っています。道重さんっていうのは、「かわいい」を職業にされている方じゃないですか。そしてその「かわいい」を努力で手作りしている方なんです。自分はかわいい…かわいくないかもしれない…けどそうだからこそ、表情を完璧に練習するとか。


──それに対して、大森さんのかわいいはどういったものでしょうか?

大森靖子:私は「かわいい」までの距離がかなりあるんですね。「自分はかわいいって言ってはいけないんじゃないか?」っていうところから始まったうえで、そこを壊さないといけないところから、かわいくなるためにいろんな手数を踏んで、ハリボテをして……ハリボテしつづけてきて。「だから、自分をかわいいって言っていい!」という曲にしようというのがあって。


──「かわいい」の出発点が両極端なおふたりでいらっしゃる。

大森靖子:それから、「いつも元気なんて無理だもん」というセリフがあるのですが、「無理」って、文字にすると同じ言葉じゃないですか。
でも、道重さんと私の両極端なところから言うことで、二つの極限からのかわいいを見せられるので。
「かわいい」のベクトルは真逆なのに、同じことを言うことで、新しい説得力が生まれると思います。


──リスナーさんの中には「とはいえ、靖子ちゃんも道重さんも人前に出る職業だし…普通の私が、自分をかわいいって言ったら変なのでは?」と、苦しんでいる方もいると思うんです。そんな方たちが今この瞬間からかわいく生きたい場合、どのような言葉を掛けますか?

大森靖子:「かわいい」に限らず、「これは自分に似合わないんじゃないか」「キャラじゃないんじゃないか」「どうせ頑張ってもこれにはなれないんじゃないか」と思って逃しているもったいないことっていっぱいあるじゃないですか。


──つい自分を否定してしまうことってあります。

大森靖子:音楽で「人間を変える」とか「世界を変える」とかって言ったら大げさだから、そこまでは求めてないけど、その損している部分を減らすことっていうのはできると思ってるんですよ。そういうチャンスの損失を、絶対に減らしたいっていうのはあって。


──なるほど。「かわいい」というテーマのみならず、そういった視点からも作られているんですね。

大森靖子:そこを目指すかどうかって、その人の気持ち次第じゃないですか。
でも、絶対にできることを、できないのほうに合わせさせておいたほうが波風立たないから、できないのほうに合わせさせるパターンってすごい社会の中で多いなーって感じることがあって。


──大森さんの著作「超歌手(毎日新聞出版)」でも仰っていたような、「超エグい基本的人権の否定」ですよね。

大森靖子:そうそう。幸せのほうを否定するみたいな。


──そっちの方が無難にまとまるのでしょうね。

大森靖子:無難な幸せでも良いと思うのですが、「無難でいないと、人じゃない」くらいの感じじゃないですか。でも実際、完全にそこに当てはまる人なんているわけがないですよね。
だってひとりひとり違うんだから。


──むしろ、はみ出す部分にこそ、人のかわいらしさが出たりしますよね。

大森靖子:そういう部分を一個一個、自分以外の意見に賛同してあてはめていくことって、自分の良さを減らすことになると思うんですよ。
情報が短い文章になって、単純化して、消費され、簡単な共感をしていく…っていうリズムになっていくと。


──ロックアーティストが「みんな踊ってー!」と同じダンスをすることを煽るのもそういう感じじゃないかなって思ってて。

大森靖子:それが楽しかったら全然いいんですよ。でも、みんながこうしているからこう、っていうのじゃなくていいと思うし、あえてそっちにあてはめていくことは、幸せが減るなって思います。


──世の中の“正解”にあてはめていくことで、世間には認められても、本当の自分が消えてしまうんですね。

大森靖子:歌とかでも、よくぞこの言葉を歌ってくれた―!みたいなのがあるけど、でも、その言葉イコール自分だ!と思い込んでしまうと、本当はもっとたくさん気持ちがあったはずなのに、その言葉だけが自分になっちゃう。
そうじゃなかった自分の気持ちを自分から減らしちゃうのはもったいないなーって。


──たしかに、その時の感情にピッタリくる言葉を歌われると、「この歌、私のことを歌っている!」って盲目的になることもよくありました。

大森靖子:人が抱えている気持ちの総量とか、持っているものってもっと多いから。
簡単に「自分はこういう人間だ」「こう思っている」っていうのを決めなくていいなぁと思います。
「これも、これも、これも」って選び取るものが多ければ多い方がいいし。


──大森さんが時々「子供を産んだからって女は母親という生き物に変わるわけではない」とおっしゃっていて、すごく勇気づけられるなって思います。

大森靖子:それでも、インターネットやテレビには極論が好きな人も多いから。
「女は自動的に母親っていう生き物になるわけじゃない」と言っているだけなのに、「いつまでも自分だけが可愛い母親が虐待をするんじゃん!!」みたいな叩きを受けたりとかもするんです。
「いやいや、それって極論じゃん?そんなことは言ってなくねえ!?もっとほかにも、バランスとかいっぱいあるじゃん!」って。


──両方あってこそですもんね。

大森靖子:色んな面があるのが自分じゃんって、よく思います。本来、自分っていうのをあらわすのに、そう簡単に一言できゅっと喋れるわけではないじゃないですか。それが仮に記事の見出しになって。
アーティストに限らず、政治家の方とかでも、ここだけ抜き出したら意味変わるよね、みたいな部分だけを抜き出して書かれてしまうこともありますよね。いや、全文(笑)って思います。全文読まないと無理じゃないですか。そのために時間費やして生きているわけだから。


──そこまでみんな余裕がないのかもしれませんね。

大森靖子:たしかに私も、音楽活動をする上では、短い時間の中で錯乱させたいって思うこともあるので、相性が悪い単語同士をぶつけることはあるんです。
というのも、弾き語りというのは、「その瞬間に飽きられると終わり」なので、一曲を全部聴いてもらったらやっと意味がわかるようじゃ遅いっていうか。音数も少ないし、必ずしも、曲自体を楽しめるものがあるわけじゃないし。


──「飽きられた終わり」の緊張感をもっているからこそ、目が離せないライブになるのかもしれませんね。

大森靖子:そういった状況を思い出すと、意外にみんなその、自分が弾き語りで気にしていたようなリズム感──飽きられたら終わり──で生きているのかもって思います。それが、すべての情報量の答えではないのになあ……。


「自分じゃダメかな」「今日の自分はだめだな」と思った時に聴いてもらえたら

──次は、2曲目「LOW hAPPYENDROLL--少女のままで死ぬfeat.平賀さち枝--」についても教えてください。先日、吉田豪さんのSHOWROOM配信へゲスト出演されていた際は、女性シンガーソングライターとして、平賀さち枝さんのことを一方的に意識していたとも仰っていましたが、実際に楽曲でご一緒してみて、いかがでしたか?

大森靖子:この曲は、映画「21世紀の女の子」の主題歌として、山戸 結希(やまと ゆうき)監督からのオファーがきっかけで製作をしました。「自分のジェンダーや人格がゆらいだ瞬間を作ってください」というご依頼がある中で、平賀さんとやってくださいっていうのを、山戸さんから受けたんですね。


──なるほど、監督からのオファーでコラボレーションが決まったんですね。

大森靖子:私、平賀さんについては、私しばらく共演もNGにしていた時期もあるくらい好きすぎて、やっぱりすごく意識している存在なので、向き合わなければいけないんだなあと思いました。


──そんな平賀さんと、今回は一緒に作詞されたんですね。

大森靖子:平賀さんが歌うパートは平賀さん、私が歌う部分は私が書きました。


──大森さんが特にこだわりを詰め込んだ歌詞はありますか?

大森靖子:この曲は、歌詞というより、曲にこだわりがありますね。「平賀さんは、音域とメロディはこれを歌ったら完璧」っていうところに当てに行きました。


──また、3曲目の「VOID(シン・ガイアズver.)」は2018年リリースの「クソカワPARTY -銀茜宴"シルバニアフェス"-」収録バージョンとは違ったものになっていますね。体が勝手に踊り出しそうになります!

大森靖子:ありがとうございます。


──それぞれ個性の際立った3曲ですが、大森さんが「ここから聴いてほしい!」というところはありますか?

大森靖子:えーと、道重さんとコラボレーションした「絶対彼女」から聞いてほしいです(笑)


──ありがとうございました!最後に、インディーズ時代から応援している方や、メジャーデビューで知った方、これから大森さんを知る方たちへ一言お願いいたします!

大森靖子:みんながいつも楽しく生きてってくれればそれでいいなーっていう気持ちがあります。「絶対彼女 feat.道重さゆみ」が、楽しく生きるための1枚になれれば嬉しいです。「自分じゃダメかな」「今日の自分はだめだな」と思った時、そこもいいじゃん!と思える曲になっています!

──本日はたくさんお話を聞かせていただき、ありがとうございました!



TEXT Megumi Nakamura
Photo 片山 拓

超歌手。新少女世代語彙力担当。 型破りというより型などいらん、なぜなら"超"歌手だから。 アイドルじゃないのにアイドルフェスにでたり、フジロックのステージにアイドルをあげて一緒に歌ったり、自殺防止イベント、花見、そのへん、寺、映画をつくり映画館を巡るなど、だいたいどっかでギタ···

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