平成ラブソングカバーズ supported by DAM
デーモン閣下とデュエット!?
──藤谷美和子さんと大内義昭さんの『愛が生まれた日』ですが、デュエットのお相手は、デーモン閣下さん?!May J.:はい。この曲、男性のパートがすごく難しいんです。女性のキーはそこまで音が高くないんですけれど、男性がその部分を一緒に歌うと、男性にしてはちょっと高いんですよね。さらに、男性だけのパートはすごく低いし。
だからレンジの広い人じゃないと歌えない曲だなって考えながら、誰がいいかなと思ったとき、“そうだ、デーモンさんだ!”と思ったんです。2012年に1度コラボさせてもらったことがあるんですが、じつはこのレコーディングの前にNHKの歌番組で再会して。やっぱりデーモンさんだな!と思ってお願いしました。
──あの……レコーディングのときのデーモン閣下はどんなスタイルでお越しになるんですか?
May J.:そのままですよ。悪魔のままで。
──悪魔とのデュエットなんですね。絶妙な男女の掛け合いが、すごくいい雰囲気を出していますよね。
May J.:そこはもう、デーモンさんが併せてくださいました。私は結構きっちりと歌っていたんですが、デーモンさんはそれに合わせながらも彼独特のねちっこさがしっかり入っているので、さすがだなって思いました。
──AIさんの『Story』は、比較的最近の歌という気がしますが、もう14年前の曲なんですよね。
May J.:そうなんですよね。これはすごく広い愛を歌った曲。今回のカバーアルバムはラブソングばかりなんですが、その中でも、彼氏彼女っていうラブだけじゃなくて、広い愛を歌った曲だなって感じます。
誰に対しても当てはまるというか。家族だったり仲間だったり。そういう広い愛をすごく感じますね。
──EXILEの『Lovers Again』も、ちょっと意外な選曲でした。
May J.:私ぐらいの年代の人たちはみんな聴き馴染みのある曲。当時のR&Bを彷彿させる曲ですね。2000年代に流行っていたR&Bはこれ、というお手本みたいな曲。今回カバーさせていただくにあたって、それを今のR&Bにしたらどうなるかなっていうのがチャレンジでした。
──今のR&Bというと?
May J.:たとえばサム・スミスとかエド・シーランといった、音数が少ない中でかっこよく歌いあげてるようなアレンジです。ピアノ1本とちょっとしたリズム隊だけ入れて、大人のR&Bに仕上げてみました。
──平井堅さんの『瞳をとじて』も切ないですね。
May J.:これは去年レコーディングしました。すごく難しい曲でした。キーがすごく幅広いんです。高い音は女性にはすごく高いし、低い音は低いし。何回も録り直しました。歌詞も、亡くなってしまった人を思って歌うというつらいテーマで、その世界観に入るのが大変でしたね。
──つらい、といえば、HYの「366日」も。
May J.:私はすごい好きな曲です。
──でも、歌っていて辛くなかったですか?
May J.:辛いです(苦笑)。このアルバムの中でいちばんどん底かもしれないですね。
──ですよね。先ほど、女の子はわりとさらっと過去の恋を忘れちゃう、っていう話がありましたが…。
May J.:この曲の主人公は、それは無理ですね。切り替えるなんてできない。私が想像したのは、誰にもわかってもらえないこの気持ちをどこにぶつければいいのって叫びながら空に向かって歌っているような感じなんですよね。
──これみんな、カラオケで歌っているんですよね。
May J.:人気です。
──ぶつけられない思い出をそこにぶつけているんですね。
May J.:歌い甲斐のある曲で人気があるんだと思います。最後のフェイクとか難しいテクニックも必要になる曲なので、すごく歌いがいがあるんですよ。
──歌いようによってはすごく軽くもなるし、とことんドロドロした曲にもなりますね。
May J.:確かにそうですね。
──でもこのMay J.さんのバージョンは、最終的に希望があるように感じました。
May J.:自分ではまったく意識していませんが、そうゆう気持ちは常に思っているので嬉しいです。ありがとうございます。
──中島みゆきさんの『糸』も、いろんな方がカバーしていますね。
May J.:AIさんの『Story』と同じく、本当に幅広い人たちが共感できるラブソングだと思っています。母と生まれたばかりの子どもにも当てはまるし、日々知り合っていく人たちとか一緒に仕事をしていく仲間だったりとか。
私は、この曲はライブで最後に歌う曲、というイメージがあるんです。今日という日に、ライブに来てくださった皆さんと繋がり合えるというのは本当に奇跡のようなことなんだなって思いながら、最後にしみじみ歌うイメージですね。
──確かに、ライブはその場に居る1人が欠けても成り立ちませんね。
May J.:そうですよね。とても奇跡的なこと。だからこの曲を、ライブのイメージで最後の曲にしました。ライブってすごいことだと思うんです。私もよくライブを見に行きますが、自分の好きなアーティストが同じ空間でその会場にいる私たちのためだけに歌うなんて、すごいことなんだって思うんですよね。
そのときにしか出さないその人の歌声、もしかしたらCDのときと違うことをイメージしながら歌っているかもしれないし。ライブを見に行くと、いつもそういうことだなと思って。私もそういうふうに大切に歌っていきたいなと思いますね。
──貴重な空間ですよね。このカバーアルバムのDisk2は、ライブアルバムなんですね。これを聴いたら、きっとみんなライブで、生で聴きたくなるでしょうね。
May J.:今年もツアーをやりますから、ぜひ遊びに来ていただきたいですね。
May J. / 【全曲試聴】「平成ラブソングカバーズ supported by DAM」 2019.4.17発売
May J.が選ぶビックアップフレーズ!
──ところで、今回の収録曲の中で、お気に入りの歌詞のフレーズは何かありますか?May J.:難しいですね。たくさんありすぎますよ。たとえば1曲目の『ハナミズキ』などは、私はずっと、歌詞の意味がよくわからなくて、いったい何を歌っているのかなって思っていたんです。じつは今でも、私には正解はわかりません。
もしかしたら自分は亡くなったんだけど、自分の好きな人がずっと幸せに生きていけますようにって天から歌っているかもしれないし、もしかしたら主人公本人は生きているんだけれど、誰かが亡くなって、その人が好きだった人に天国で会えますようにと願っているのかもしれないし。
──単なる男女の恋愛じゃない感じがしますね
May J.:そうですね。「君と好きな人が100年続きますように」っていうフレーズにはそういうのが込められているんじゃないかな。やっぱり正解はわからないけれど、そういう深い歌詞なんだろうなというのは感じます。
──インタビューは以上になります!ありがとうございました。
May J.ありがとうございました!
TEXT 宮本ゆみ子
PHOTO 大西基