今尚カラオケで愛される楽曲
カラオケに行ってランキングや履歴を見たとき、『シャルル』という楽曲に“???”となったことはないだろうか。若い世代を中心に高い人気を誇る、ボカロP・バルーンによる楽曲である。
故にボーカロイド・初音ミクによる歌唱のものが初出だが、バルーンこと須田景凪によるセルフカバーは現在3000万再生を突破している。
大人たちには中々馴染みのないボーカロイド曲だが、何故こんなにも高い人気を集めているのか。その歌詞に込められた想いを読み解きたい。
情緒溢れる世界観
シャルル
明るいライトな曲調に反し、その歌詞は叙情的で複雑な心を表している。
誰しも経験したことがあるであろう大切な人との別れ。共に歩む未来を思い描いていたはずなのに、そこに相手の姿はない。忘れてしまいたい、それなのに空っぽにできない感情。
ついなげやりになってしまうが、それでも今までの思い出を抱え、歩き続けなくてはならない。そんな様が目に浮かぶ。
今はもう離ればなれの「僕等」
どれほどの時を共有したのかはっきりと明言されていないが、この2人は別れの前からきっとすでに関係性が少しずつ壊れていた。
ずっと一緒にいた、そしてこれからもずっと一緒のはずだったのに、いつからか互いを想う気持ちはどんどん小さくなっていたのだ。
こんな風になってしまった「僕等」の気持ちはもう変えられない。それを誤魔化し偽ってまでは、一緒にいられない。
誰のせいでもない。お互いのちょっとしたズレを積み重ねた結果が「今」なのである。
この恋を抱え、生きていく
彼らはきっと、お互いを嫌いになって別れを選んだわけではないのだ。しかしその複雑な心は2人にしか理解できないもの。
誰にも正確には分からないし、彼らもきっと他の人間に分かって欲しいとは思わない。
お互いに愛を伝えあった幸せな日々には戻れない。彼らが望まなくとも、その記憶は薄れ、思い出も失われていく。しかし、共に日々を過ごしたという事実は、変わらずにお互いの心に残る。
そんな気持ちを噛み締めながら、彼らはきっとどこかでまた誰かと出会い、恋をする。未来へ歩き続けるのだ。相手に対して“もっとこうしてあげたら良かったなぁ”という後悔。互いにそれを許し合ったとしても、もうそれは何の意味もなさない。
そんな恋の終わり、大切な人との別れを思い浮かべながら、歌詞を噛み締めて一度聴いてみてほしい。
ボカロ曲に対するイメージがきっと少しだけ変わるだろう。
TEXT 島田たま子