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【歌詞コラム】King Gnu『The hole』愛で心の隙間は埋められるのか

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人が誰かを愛するとき、その愛は自分の気持ちだけで成立するものだろうか。『The hole』のPVを見ながらこの楽曲の歌詞を読み解こうとすると、そんな葛藤に追い込まれる。King Gnuがこの曲で描こうとした「愛」の形はどんなものだろう。

公開日:2019年6月18日 更新日:2019年6月18日


この記事の目次 []
  1. ・彼らの歌う"愛"とは?
  2. ・誰かを愛した時、自分の世界は変わる
  3. ・守るべきは相手か、それとも…?
  4. ・大切な人の「傷口」になるということ
  5. ・彼らの"愛"は本物だった

彼らの歌う"愛"とは?


YouTubeにて突如センセーショナルなPVを公開し大きな反響を得たKing Gnuの『The hole』。

観る者を惹きつけるストーリーで高い評価を集めているが、注目したいのはやはりその歌詞。映像を見ながら言葉を噛みしめるように聴くと、一人でわーっと泣き出したくなるような煽情性がある。

彼らがこの曲で描こうとしたことは、人を愛するということは一体どういうことだろうか。
 

誰かを愛した時、自分の世界は変わる


----------------
晴れた空、公園のベンチで1人
誰かを想ったりする日もある
世界がいつもより穏やかに見える日は
自分の心模様を見ているのだろう
≪The Hole 歌詞より抜粋≫
----------------

例えば、誰かを好きになったときや、恋人同士になったとき、普段と同じはずの日常の景色がふと違って見えたことはないだろうか。

今まで何とも思っていなかったものに感動したり、妙に美しく見えたりすることがあるだろう。相手のことを考えるだけでどことなく優しい気持ちになれるものだ。

もちろん、世界そのものが大きく変わったわけではない。すべては、あなたの心の変化によるものだ。曲の序章を飾るこの歌詞は、そんな恋心を柔和に表現している。

恋の始まりは誰しも浮足立ってしまうものだ。しかし、そんなハッピーな状態は決して長続きすることはない。

相手を知れば知るほど、愛が深くなればなるほど、幸せな感情だけで解決できない事態に直面することになる。
 

守るべきは相手か、それとも…?


----------------
気づけば誰かの物差しで
人と比べた未来に傷ついて
身体にぽっかりと空いたその穴を
埋めてあげることが出来たのなら

逃げ出せばいいよ
全てを放り出せばいいよ
些細な拍子に
壊れてしまう前に

愛を守らなくちゃ
あなたを守らなくちゃ
消えそうな心の声を聞かせて
≪The Hole 歌詞より抜粋≫
----------------

愛する人が何かに傷ついているとき、何か大きな悩みを抱えているとき、あなたならどうするだろうか。おそらく多くの人が相手を慰めようとあれこれ試行錯誤することだろう。

しかしそれは果たして、愛する「あなた」のためにやっていることだろうか。その人に対する自分の気持ち、「愛」を守ろうとはしていないだろうか。

大切な人を救いたい、支えになりたい、理解したいと思うことは人として正しいことだ。誰だってそうしたいと願い、行動してしまう。

だが、それが本当に相手のためになるとは限らない。相手があなたに望むことはもっと違うことかもしれないし、そもそもあなたの救いの手を求めているとは限らないのだ。

それでも人は、何とか相手のために何かをしてあげたいと思ってしまう。相手のため、相手のためと思いながら、自分の気持ちを守るために行動してしまう。

その結果、相手が望んでいない助言をしてしまったり、何かを押し付けてしまったりして、更に傷つけてしまうこともあるだろう。

そしてそれが更に空回りすれば、強い言葉で追い詰めてしまったり、思ってもいないようなひどい言葉を投げつけたりしてしまう事にさえなり得る。

一度開いた心の隙間を埋めることは難しい。小さくすることができたとしても、いつかまた大きく開いてしまう事もあるだろう。

そして、相手のそれを埋められるのは自分であるとは限らない。その隙間を埋めるために、相手が違う誰かを求めることもあるのだ。

大切な人の「傷口」になるということ


----------------
この世界の
希望も絶望も
全て飛沫をあげて
あなたに降り注ぐのなら

あなたの正体を
あなたの存在を
そっと庇うように
僕が傷口になるよ
≪The Hole 歌詞より抜粋≫
----------------

この曲の歌詞で最も印象的な、「僕が傷口になる」というキーワード。“誰よりもあなたの痛みを理解したい”、“あなたをその痛みから守りたい”、“誰よりもあなたの側にいたい”という切実な願いが感じられる。

きっと自分なら、傷口を癒し塞ぐことができる。いたずらに傷を抉ろうとする何かから、守ることができる。そんな純粋無垢な愛情から生まれた言葉なのだろう。

しかし、傷口は扱いを誤れば治らずに悪化することがある。ふとしたことで再び裂けることもある。傷が治っても、それが痕になって永遠に残ることさえある。

一歩間違えれば、相手をさらに傷つけてしまうかもしれない。自分も辛い思いをするだろう。それでも、“ただ、誰より愛しているあなたの側にいたい”、“あなたにそれを受け入れてほしい”という痛切な願いが込められている言葉なのだ。

彼らの"愛"は本物だった


PVの主人公である2人の男女。複雑な関係ではあるが、おそらくこのキーワードがすっかり当てはまるほど愛し合っているはずの2人なのに、悲劇的な結末を迎えてしまう事になる。

どうか、映像の美しさだけに流されることなく、歌詞を口ずさみながらもう一度観てほしい。彼らの物語が、ただの悲愛ではないことを確かめて頂けないだろうか。

TEXT 島田たま子

東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。 その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Gt.Vo.)、勢喜遊(Drs.Sampler)、新井和輝(Ba.)、井口理(Vo.Key.)の4名体制へ。 SXSW2017、Japan Nite US Tour 2017出演後、2017···

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