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思い出を想い続ける、サカナクション「忘れられないの」の意味とは?

サカナクションの7thアルバム「834.194」は、前作から約6年ぶりにリリースされた。その一曲目に収録された「忘れられないの」は、80年代前半を意識したPVが公開され話題になった。そんな大注目の楽曲の歌詞を読み解いていく。

忘れられない記憶

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忘れられないの
春風で
揺れる花
手を振る君に見えた
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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人間には、様々な物事を記憶し続けられる能力が備えられている。

どうでもいいことは簡単に忘れてしまうかもしれないが、自分の興味があるものや、“嬉しい”や“悲しい”といった感情を含んだ出来事は、たった一度きりの経験でも、一生忘れられない記憶として脳に刻み込まれる。

そしてそれは、ふとしたきっかけで記憶の部屋から呼び起されるのだ。

例えば、麗らかな陽気を浴びながら、新しい生命と時間を運んできた風に包まれた春の日。

これから何かが始まりそうな予感を感じている時に、何となく目にした花。



その花が風に揺れている姿を見て、かつて自分の大切だった人が、こちらに優しく手を振ってくれた記憶を思い出してしまう時がある。そしてその記憶が、楽しい記憶だろうがトラウマだろうが、自分の人生で“忘れられない”重要な一部であったことを知るのだ。

そんな“忘れられない”ものばかりで、人の人生は創り上げられている。

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新しい街の
この淋しさ
いつかは
思い出になるはずさ
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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これまでの生活から心機一転、新しい環境で新しい人生をスタートさせるとき、普段見慣れない場所と、知り合いがいない状況は淋しさが積もるものである。

しかし、いずれその淋しさも思い出に変わる。

そしてその思い出を、また街を出る時に思い出すのだ。と、人はそう信じることで、逃げないで前に進むことができる。

それはこれまで、忘れられない記憶ばかりを積み上げてきたからこそ生み出せる勇気だ。

思い出は常に過去のものであり、嫌な記憶でも懐かしさと共に思い出すことできる。

懐かしいという感情は、その出来事にあった元の感情に混ざり、少なからず別のものへと変える。そしてその変化が、心を前に向かせることがある。

これまでその変化を感じ取ってきた過去の経験が、自分を少しだけ前へ進ませてくれるのだ。

ずっと噛み続けてしまうガム

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素晴らしい日々よ
噛み続けてたガムを
夜になって吐き捨てた
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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絶対に忘れたくないと思えるほど、素晴らしい日を向かえることは、生きていれば必ずある。

そういった日を過ごした時は、何度もその記憶を反芻してしまう。

味がしなくなってもずっと噛み続けてしまうガムのように、思い出の新鮮さが失われても、反射的に何度も思い出してしまうものだ。

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つまらない日々も
長い夜も
いつかは
思い出になるはずさ
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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しかし、人生には退屈で味気ない瞬間もある。



それでもその瞬間を忘れなければ、いつか懐かしく思え、味が出てくる時が来る。その時こそ、記憶が思い出になる瞬間である。

過去の答えは

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ずっと
ずっと
隠してたけど
ずっと昔の
僕の答えをまた用意して
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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人生の道を歩んでいると、過去に起きた問題と似た問題に直面するときがある。



その時、過去に出した答えが生きる時がくる。

それがもし、思い出したくもない辛い記憶だったとしても、忘れなければ、いつか、その過去の答えが未来を創っていく。

忘れたくても忘れられない記憶は、忘れられない意味が確かにあるのだ。

忘れられない記憶と共に

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夢みたいなこの日を
千年に一回ぐらいの日を
永遠にしたいこの日々を
そう今も想ってるよ
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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人の一生には、多くの出来事が詰まっている。

その中では、退屈だと感じる日の方が多いかもしれない。

しかし、“楽しい”や“嬉しい”と思えた日を、“夢みたい”や“千年に一回ぐらい”と、其々に、より特別な感情を与えることで、何度も思い出せる“忘れられない記憶”にすることができる。

その記憶は、これから“辛い”という感情を含んだ日が訪れたとしても、支えになってくれるはずだ。



人間には、様々な物事を記憶し続けられる才能が備えられている。それは感情、つまりは人の心がもたらしてくれる特性なのだ。

もし、人が感情を捨て、あらゆる出来事を無機質に流すことが出来れば、“辛い”や“悲しい”を受け止めることもなく楽かもしれない。

しかし、それは人が人として生き続ける意味がなくなってしまう。

僅かな出来事も感情的に受け止め、“忘れられない”思い出にしていくことが、心を主体に生きる人間という生き物であり、日々を豊かにする心なのだ。

TEXT 京極亮友

2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。 日本の文学性を巧みに内包させる歌詞やフォーキーなメロディ、ロックバンドフォーマットからクラブミュージックアプローチまでこなす変容性。 様々な表現方法を持つ5人組のバンド。全国ツアーは常にチケットソールドアウト、出演するほとん···

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