歌詞の背景と“僕”の思い
歌詞の大半は、一人で物思いに耽る“僕”の様子が描かれていることは分かる。
“僕”がどんなことを思っているのだろうか。
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春風で
揺れる花
手を振る君に見えた
新しい街の
この淋しさ
いつかは
思い出になるはずさ
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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ある春の日に、道端に咲いている花が風に揺られている様子を見て“君”のことを思い出す“僕”。
“君”は“僕”にとって特別な存在で、2人は、手を振り合えるような近しい距離の関係性だった。
しかし、淋しさを“僕”が感じていることが分かる歌詞から、現在は“君”と離れ離れになっていることが分かる。そんな淋しい気持ちにも終わりが来ることを、分かってはいるが“君”と会えない時間が苦しいのだ。
“君”は“僕”にとってどんな存在なのか
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噛み続けてたガムを
夜になって吐き捨てた
つまらない日々も
長い夜も
いつかは
思い出になるはずさ
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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「噛み続けていたガム」は淋しさや葛藤といった心に溜まったモヤモヤしたものを比喩した歌詞になっている。それを「夜になって吐き出した」ということは、自分の気持ちにある程度の整理がついたのだろう。
“君”がいなくてつまらない日々も、苦悩や葛藤に苛まれる夜も、月日が流れると“ああ、あんなこともあったな”と思い出して懐かしむぐらいの出来事になるだろうと予測している。
しかし、そんな風に思えるようになるのはもっと先のことで、“君”が側にいないことを悲しむ様子が伝わってくることから、“君”は“僕”にとって、特別で大切な存在であったことが分かる。
“君”に伝えられなかったこと
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ずっと
ずっと
隠してたけど
ずっと昔の
僕の答えをまた用意して
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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“僕”は恐らく大切な存在である“君”に自分の思いを伝えられないでいたのだろう。そして“君”は、“僕”が自分のことを特別な存在として見ていることに気づいてはいなかったのだろう。
では、「ずっと昔の僕の答え」とは一体どんな答えだったのだろうか?それは、次の歌詞から読み取ることができる。
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夢みたいなこの日を
千年に一回ぐらいの日を
永遠にしたいこの日々を
そう今も想ってるよ
≪忘れられないの 歌詞より抜粋≫
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“君”が“僕”に自分のことをどう思っているか聞いた時に、“僕”は本当の気持ちを言ううことができなかった。
“君”が“僕”に対して友達以上の感情を持ってくれているのかもしれない”と思えてしまうぐらい好意的に接してくれた日も、“君”と過ごした日々も全てが大切で忘れられない。
答えは、この歌詞に描かれた“君”への感情なのだ。こんな感情を描いた歌詞だから、タイトルを『忘れられないの』にしたのだろう。
“ずっと覚えたままでいると辛いから、すぐに忘れてしまえれば楽なのにという”感情は、恋愛面のみならずあることだ。
“忘れたいに忘れられない”そんな感情の起伏を描いた楽曲になっている。
TEXT 蓮実 あこ