長きに渡って音楽活動を続けており、根強いファンが多いことで知られる。
その名を知らない者はいないだろう。
そんな矢沢が今回発表した楽曲のタイトルに、思わずドキッとした方も多いのではないか。
『いつか、その日が来る日まで・・・』
…彼が今この楽曲を歌う意味は、何だろうか。
歌詞の中から探っていきたい。
ロックスターさえも意識する「旅の終わり」
----------------旅の終わり。
どんな旅も 終わる時が
かならず来る
思いがけず 遠くにまで
来たようだね
≪いつか、その日が来る日まで... 歌詞より抜粋≫
----------------
ストレートに人生の終わりを連想させるフレーズだ。
楽曲と同名のタイトルを持つ今回のニューアルバム。
1曲目のタイトルは『今を生きて』、そしてラストを飾るのが、こちらの『いつか、その日が来る日まで・・・』である。
おそらく、矢沢永吉の今までの人生や音楽活動を、一度立ち止まり編纂するようなイメージで制作されたアルバムではないだろうか。
辛い環境に置かれた幼少期。成長し、上京してから半世紀近くにわたり現在まで続く音楽活動。
我々が知る情報以上に、常人には想像できないような経験をしてきたことだろう。
そして彼は今、誰もがいつか受け入れなくてはならない「死」を意識する年齢を迎えた。
----------------彼は現在に至るまでロックスター・E.YAZAWAという理想を守り、それを体現し我々を楽しませてくれた。
歌はわが夢 愛は祈りだ
カオスだらけの 世の中
闇に向かって 走り続ける
いつかその日が 来る日まで おれは
≪いつか、その日が来る日まで... 歌詞より抜粋≫
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我々から見たら、彼の存在そのものがエンターテインメントなのである。
そんな彼の原動力として示された「歌」と「愛」というキーワード。
この2つが守られる限り、彼はきっと最後の日まで我々が憧れるE.YAZAWAとしてその生き方を貫くのだろう。
人は1秒先の未来さえ予測することが出来ない。しかし、その見えない先に向かって更に走り続けるのだという。
いやもう、“かっこいいぜ、さすが永ちゃん!”としか言いようがない。
今の彼が歌うからこそ、我々を更に心酔させる歌詞なのである。
矢沢に連れ添う「お前」の正体は
----------------そうして走り続ける矢沢の手を握る者。
握る手と手 離すなよ
お前だけが 頼りだぜ
はるばると行こう
≪いつか、その日が来る日まで... 歌詞より抜粋≫
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「お前」とは、何を、誰を意味するのか。
前項で取り上げた歌詞を踏まえると、「歌」「愛」「夢」などのキーワードが浮かぶ。
しかし、そんなストレートな言葉だけをここに込めたとは考えにくい。
そこに込められたのはきっと、彼の大切なものすべてではないだろうか。
家族、友人、仕事に携わる人々、彼の人生に影響を与え、関わってきた人々。
そして幼少期から現在に至るまでの経験や思い出。
それらがあったからこそ、現在の矢沢永吉の姿がある。歌がある。
彼が歌い続けるすべての理由が、「お前」に表されているのだ。
----------------そして何より、彼の音楽を待ち続けるファンの存在も「お前」の中に入れてもらえたと思いたい。
おまえと共に 歩いて行きたい
いつかその日が 来る日まで 俺は
いつかその日が 来る日まで 歌う
≪いつか、その日が来る日まで... 歌詞より抜粋≫
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彼の人生を、最後の「その日」まで見届けたい。
人は、人生の終わりからつい目を逸しがちだ。
しかし、彼はきっと視線をそらすことなく、最後までそこへ向かって走り続ける。
アルバムの最後に聞かせてくれた「いつかその日が来る日まで、歌う」という強い言葉。
矢沢永吉という男の今までの人生とこれからの生き方、そのすべてを表したフレーズだと言えるだろう。
TEXT 島田たま子