普通って何?少年が知る大切なこととは
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映画『ワンダー 君は太陽』は、2017年にアメリカで公開されてから、大きな話題を呼んだ作品です。
日本では2018年に公開となり、涙が出るのに温かい気持ちになれるという感想が多く寄せられました。
原作はR.J.パラシオのデビュー作であり、世界各国で800万部を売り上げた小説『WANDER』。
街で頭部の骨格に障がいを持つ女の子に出会ったことをきっかけに、自分の取るべき行動を思い巡らした末、本作の執筆にあたったそうです。
『ウォールフラワー』のスティーヴン・チョボスキーが監督・脚本を務め、実写版『美女と野獣』の制作陣と共に、原作の魅力を昇華させた映画に仕上げました。
世界各国で高い評価を得る魅力について、あらすじや見どころからたっぷり紹介します。
人と違う少年の普通を超えた奇跡
10歳のオギーは、スターウォーズが好きで宇宙飛行士に憧れる男の子。
しかし彼は、遺伝子疾患のためにすでに27回もの手術を繰り返していました。
人と違う顔を引け目に感じ、学校に通わず母のイザベルから勉強を教わりながら自宅で過ごします。
そんな生活を変えようと考えたイザベルは、小学5年生への進級を機に、彼を一般の学校に通わせることを計画します。
校長先生は快く受け入れ、学校の案内役に3人の同級生を紹介してくれます。
不安はあるものの、オギーは自分で学校に通うことを決意。初めての学校生活が始まります。
ところが、不安は的中。登校初日から注意の注目を浴び、避けられたりからかわれたりといじめを受けるようになります。
お気に入りの宇宙飛行士のヘルメットをかぶり、自分の殻に閉じ籠もるオギー。
そんな彼を家族は支え、再び学校へ送り出します。
人との違いに悩む少年が、新たな一歩で大きな奇跡を起こす、感動の人間ドラマを描いた映画です。
実力派キャストの巧みな演技に感動!
本作はストーリーだけでなく、キャストの演技力も大きな注目を集めました。
主人公のオギー役を演じたのは、天才子役との評価を受けるジェイコブ・トレンブレイ。
オギーと同じトリーチャー・コリンズ症候群の子供たちを支援するNGO団体や小児病院を訪れ、子供たちに書いてもらった手紙を読み返しながら役作りを行ったそうです。
大がかりな特殊メイクを施し、表情での演技が制限される中でも、持ち前の表現力で熱演し高く評価されました。
これまで経験してきたどの役とも違う難しい役どころを、楽しく演じています。
そして、母親のイザベル役をジュリア・ロバーツ、父親のネート役をオーウェン・ウィルソン、姉のヴィア役をイザベラ・ヴィドヴィッチが演じています。
ベテラン俳優と若手の注目株が作り上げた家族像は、どの家庭にも見られるような温かみと不器用さを持っています。
等身大の家族の様子が観る人に現実感を与え、自身と重ねながら観ることができるでしょう。
また、ストーリーの重要な部分を担う子役たちも、将来有望な実力者揃い。
子供の多い現場らしく和気あいあいと撮影が行われたとのことで、その楽しい雰囲気がどのように作品に反映されているかにも注目してください。
少年の奮闘と勇気をもらえるメッセージが爽快
一番の見どころは、ストーリーの軸である少年の成長です。
人とは違う顔のせいで、外の世界から離れて暮らしてきた主人公。
それでも、クラスメイトと仲良くなりたいと願って、いじめにも懸命に挑みます。
そんな彼の原動力となるのが、家族の支えです。挫けそうになる彼を温かい言葉で励ましながら、そっと背中を押しています。
家族の存在の尊さは、障がいの有無にかかわらず誰もが忘れてはならないことです。
とはいえ、あまりに身近にありすぎて、家族が支えてくれていることがいかに幸せかを忘れてしまうこともあるでしょう。
オギーのように自分の手の中にある小さな幸せに気づくなら、難しい状況さえも乗り越えられる力になるのです。
本作は障がいを持つ人を取り上げた映画にありがちな、ひどい悲しみや重苦しさはありません。
むしろ、ユーモアを交えた前向きなストーリーで、清々しいさわやかな余韻を心に残してくれます。
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本作の面白いところは、原作で用いられている登場人物それぞれにスポットを当てる構成が、映画にも取り入れられていること。
1つの出来事を、主人公以外の視点からも観るということです。
そのように多面的な角度からストーリーをみると、主人公を取り囲む人たちの心情や、取った行動の真意がはっきりと見えてきます。
この構成によって、ストーリーに厚みが増し、原作に込められていたメッセージも浮き彫りになります。
それは、誰もが欠点や弱さという人との違いを抱えていることと、人との繋がりが力をくれること。
そして、少しの勇気を持って行動を起こすことで、思いもよらない幸せが訪れるということです。
人と違うということは決して恥ずかしいことではなく、それぞれに違うところがあるからこそ、すべての人が特別であることを教えてくれます。
『ワンダー 君は太陽』では、オギーと同世代の子供たちにも分かりやすいユーモアのあるシンプルさと、親世代も入り込めるメッセージ性のある複雑さを、バランス良く融合させています。
そのため、幅広い世代が同じように、この映画から幸せな気持ちを得られますよ。
「brand new eyes」は希望にあふれた心地よい主題歌
主題歌はビー・ミラーが歌う『brand new eyes』です。
タイトルには「新しい瞳」「新たな門出」という意味があり、映画の明るい雰囲気とリンクする楽曲となっています。
ビー・ミラーとは、人気オーディション番組「The X Foctor」で注目を集めた、若手歌手。独特なハスキートーンで人気を集めています。
この曲は、リズミカルな曲調がさわやかで、コーラスも曲の気分を盛り上げており、ワクワクするような期待感が高まるメロディ。
歌詞には、周囲の人のおかげで自分自身の魅力に気付き、前を向いて歩き始めた様子が描かれています。
ビー・ミラーの甘く伸びやかな歌声により、歌詞の持つポジティブなイメージが色濃く表現されているところが、大きな魅力です。
PVでは映画を象徴するシーンと共に、ビー・ミラーが街のあちこちで歌う姿をインサート。
映画の中の出来事が特別なことではなく、自分のすぐそばで起こっている日常であることを想起させるような内容で、曲の魅力をさらに引き上げています。
「ワンダー 君は太陽」はすべての人に自信をくれる名作!
人の絆を軽やかに描いた映画『ワンダー 君は太陽』は、それぞれの登場人物に自身を投影しながら観ることができる作品です。
差別や偏見をしたくないと思っていても、自分と異なる人を受け入れることは、必ずしも簡単ではないでしょう。
しかし、一般的に見られる「普通」と違うからといって、馬鹿にしたり拒絶していい理由にはなりません。
人と違うところはその人の個性であり、個性を持つ人すべてが特別な存在です。あなたがその一人であることを、この映画は優しく認めてくれます。
自分の弱さや欠点に落ち込む時にも、映画『ワンダー 君は太陽』を観ればきっと自信をもらえるでしょう。
TEXT MarSali