yamaって何者?そのキャリアに迫る
みなさんは、今話題急上昇中のアーティスト「yama」をご存知でしょうか。爆発的な知名度を獲得するきっかけとなったのが、こちらの楽曲『春を告げる』。
2020年4月のMV配信開始以来、再生回数を伸ばし続け、現在1500万回を超える再生回数を記録しています。
また各種サブスクサービスのランキングでも堂々のランクインを果たすなど、幅広いリスナーの獲得に成功しています。
聴けば一発で耳に残る歌い出しのメロディと都会的なピアノがなんともオシャレなサウンド。
そしてなにより天性の歌声による軽やかなボーカルの心地よさ。
そういった要素全てが楽曲の完成度を最大限に高めており、間違いなく現代の邦楽シーンを代表するポップソングのひとつとなっているでしょう。
きっかけはTikTok
そんな『春を告げる』ブームの主なきっかけとなったのが、動画配信アプリとして近年若者を中心に絶大な人気を誇るTikTokの存在です。
様々なアーティストの楽曲を引用し、ダンスの動画やクスッと笑える動画などを気軽に発信できるこのアプリ。
男女問わず若者のユーザーが非常に多いため、彼らにとっての新たなブームの発信地になりつつあります。
そんな中、楽曲の引用を通して徐々にその知名度を上げていった『春を告げる』。
楽曲がもともと持っていた完成度の高さが後押しし、SNS時代を象徴するようなスタイルでのヒットを飛ばしました。
ヒットの秘密はその「賢さ」にあった
短い動画の中で使用されることによって、大ヒットを生み出した『春を告げる』。
楽曲を分析していくと作詞作曲の面、つまりソングライティングセンスだけでは成立し得ない確かな「演出術」が見えてきます。
まず特徴的なのは、その歌い出し。
再生開始1秒からいきなり、楽曲の中で最も印象的な「サビ」を聴き手に届けます。
YouTubeやサブスクサービスなど、インターネットの媒体を通して長く楽曲を再生してもらう際にはやはりどうしても「出だし」のキャッチーさが重要になってきます。
この楽曲は出だしの部分たった数秒で聴き手の心をグッとつかみ、そのまま楽曲の世界観に引き込むことに見事に成功しています。
さらに、楽曲全体のビートを支える一定のリズム「4つ打ち」の存在も楽曲の楽しさを強調。
聞くだけで踊りたくなってしまうようなダンスミュージックのリズムを楽曲に取り入れ、聴く人をノリノリにしています。
ここ数年ブームとなっている「歌い手・ボカロ出身系」アーティストたちと肩を並べても違和感のない楽曲の作り込みと世界観の構築が見事です。
そんな見事な計算が光るこの楽曲を手掛けたのはボカロPくじら。
過去の作品では数多くの歌い手をゲストボーカルに迎えつつも、その存在はいまだ謎に包まれた部分の多い新気鋭のアーティストです。
コンピュータを使った曲作りに精通しているボカロPだからこその「賢さ」。
『春を告げる』のヒットを支えるヒミツは、そんなところにあるのかもしれません。
2019年4月1日に活動を開始。 作詞作曲編曲全てをくじら自身でこなしVOCALOIDを使った作品や、yamaやAdoなどのボーカルfeat.作品、また楽曲提供など精力的に作品を世に出し続けている。 2019年7月VOCALOIDアルバム「ねむるまち」を発表。2020年10月には、feat.とVOCALOIDを主としたアルバム「···
歌い手出身のyama、アーティストとしての軌跡
yamaがYouTube上でのアーティスト活動を開始したのは2018年。
ボカロ楽曲をカバーする、いわゆる「歌い手」として活動を始めました。
コメント欄を覗いてみれば『春を告げる』以前からその歌声に魅了された、古くからのファンの声がいくつも見られ、彼女が持つ才能の大きさを実感できます。
そして、彼女の名を大きく知らしめることとなったのが先述したボカロPくじらによるオリジナル曲『ねむるまち feat.yama』への参加でした。
こうして彼女の軌跡を追ってみると、決して脈絡もなく突然現れた無名のアーティストではなかったことがわかりますね。
YouTubeなどを中心に独自のコミュニティの中で存在感を放ち続け、遂に渾身のオリジナル曲がしっかりと多くのリスナーの耳に届いた。
そんなバックグラウンドを持った彼女は、今後どんな風に成長していくのでしょうか。
今をときめくyama人気曲3選を紹介
SNSを中心に話題を呼び、今最も勢いに乗っているアーティストの1人、yama。今回はそんな彼女の歌声を楽しめる名曲の中から選りすぐりの3曲を紹介。これを読めば、あなたもきっと彼女に詳しくなれるはず。
「ねむるまち.feat yama」
yamaのキャリアにおいてひとつの転機になったとも言える『ねむるまち feat.yama』。
彼女の持ち味である歌声の表現力が最大限に活かされた楽曲となっています。
まさに歌い手として活動してきただけあって、その歌唱力は本物。
ボーカリストとしての進化が試されるような、落ち着いたバラードであっても堂々とその個性を発揮しています。
楽曲自体のクオリティも非常に高く、もはやその完成度はメジャーアーティストの域。
気怠い雰囲気のメロから一気に突入するサビの開放感。雰囲気をそのまま残しつつ駆け抜ける2コーラス目以降の展開の上手さは、数多くある邦楽ポップソングの中でも特に優れていると言えるかもしれません。
またサウンド面においてもそのセンスは抜群。
ビートを支えるクレバーで現代的なドラムのサウンドや、電子ピアノの音色が楽曲の世界観を見事に高めています。
「クリーム」
『春を告げる』に続き、2ndシングルとしてデジタルリリースされたのが『クリーム』。
MV公開直後から話題を呼び、現在は150万回を超える再生回数を記録しています。
前作とは一転し、落ち着いた音色が印象的な心地よいバラードに仕上がっているこちらの楽曲。
ボーカリストとしての実力を存分に発揮すると共に、アーティストとしての彼女が今後提示していく作品のテーマ性が明確になった楽曲でもあります。
『春を告げる』に引き続いて描かれた歌詞は、まさにその象徴。
じっくりと読み込んでいくと、キーワードや舞台設定など非常に近いものが登場します。
サウンド面も含めて、作品全体が「現代の若者」をターゲットに据えたアーティストであることが見えてくるかもしれません。
「Downtown」
2020年7月1日にリリースされたばかりの新曲『Downtown』。
タイトルの通り、まさに都会的な感覚を身にまとったオシャレなサウンドが印象的な楽曲です。
楽曲を手がけたボカロPくじらは、幾度にわたるyamaとのコラボレーションを経て、彼女の魅力を過去最大級に増幅させて描くことに成功しています。
彼女の歌声が持つ、やや「けだるい」印象にピッタリのバンドサウンド。
派手な管楽器系のシンセが映えるそのリズム部分には、ヒップホップの影響を感じさせるグルーヴィなビートが隠れています。
また、ゴリゴリと動くベースラインやリズムを刻むギターはまさに現代式。
オシャレサウンドの代名詞であったシティポップに代わる新しいサウンドとして音楽シーンを席巻した「ちょいワル」なサウンド。
いわゆるKing Gnuなどのストリート感あふれるバンドの音色を独自に解釈、見事に昇華しているように感じられます。
様々なジャンルを貪欲に取り入れ、才能溢れるボーカルの魅力で染め上げる。
そんな彼女の確かな実力すらも感じさせる楽曲に仕上がっていますね。
やがて音楽シーンを揺るがす存在に?
歌い手としての活動を経て実力を知らしめ、オリジナル曲では凄腕のアーティストたちをバックに従えつつ独自の魅力を追求し続けるyama。
確かな実力と十分な話題性を武器に、現代を代表するアーティストのひとりになっていくことでしょう。
さらに、彼女の注目ポイントは「SNS発」のアーティストであるということ。
地道なライブ活動やメディアとのコラボレーションではなく、あくまでインターネット上で活躍の場を広げ続け、現在に至る彼女。
人前に出ずともヒットチャートを賑わしていくそのスタイルは、今後の音楽シーンにおいても新しいアーティスト像のひとつになっていくかもしれません。
そんな新世代を代表する魅力を十分に兼ね備えた彼女が放つ作品たちは、これからも私たちを楽しませてくれることでしょう。
TEXT ヨギ イチロウ