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不正と悪意にまみれた刑務所を生き抜いた壮絶な半生
1994年にアメリカで公開された映画『ショーシャンクの空に』は、刑務所を舞台に繰り広げられる人間ドラマをテーマにした作品です。
人気作家のスティーブン・キングの小説『刑務所のリタ・ヘイワース』を原作に、フランク・ダラボンが監督と脚本を務めました。
著者のスティーブン・キングは、保護観察中に死亡事故を起こして56年間も逃亡を続けた実在の人物であるフランク・フレッシュウォータースの事件にインスパイアされたそうです。
モデルがいるため、実話ではないかと思えるほどリアルで心を動かすストーリーに仕上がっています。
映画は1995年にアカデミー賞で7部門、ゴールデングローブ賞で2部門にノミネートされました。
映画ファンが一生に一度は観るべき映画として名前を挙げるほど、根強い人気を誇る作品の1つです。
なぜ高く評価されるのか、あらすじや見どころから本作の魅力を紹介します。
無実の罪で捕らえられた男の運命とは
1947年若くして銀行の副頭取を務める主人公のアンディは、妻とその愛人を射殺したという容疑で逮捕されてしまいます。
無実を訴えたものの、終身刑を言い渡された彼は、ショーシャンク刑務所に投獄。
そこは、主任刑務官と刑務所長による過剰な体罰が横行する劣悪な環境でした。
しばらく孤立していた彼でしたが、長年服役している調達屋のレッドに趣味の鉱物採集のためのロックハンマーを注文したことをきっかけに、2人は交友を深めていきます。
持ち前の知識を利用して刑務主任と親しくなったアンディは、刑務所内で一目置かれる存在に。
やがて、刑務所長の裏取引に使われた金の処理を任されるようになり、最悪な刑務所に変化をもたらしていきます。
そんな中、新しく投獄された若い受刑者との出会いによって、無実を証明する機会が訪れます。
刑務所長の駒となっている立場ではそう簡単に解放されない。
しかし、その裏で着実に脱獄のための準備を進めていきます。
無実でありながら、不正がはびこる刑務所内で必死に生きた男の苦労と強さに、きっと心を揺さぶられますよ。
豪華キャストの確かな演技力が光る!
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本作は、アメリカを代表する実力派俳優陣が共演し、巧みな演技を披露していることでも知られています。
主人公のアンディ役を演じるのは、映画監督や音楽家としての顔も持つ俳優のティム・ロビンス。
清潔さと知性を感じさせる印象が役にぴったりで、刑務所内で不正や暴力に汚されていく様子がよりリアルに表現されています。
主人公と仲を深めるレッド役は、俳優のモーガン・フリーマンが演じています。
安定感のある演技と哀愁漂う雰囲気に味があり、本作のみならずアメリカ映画界に無くてはならない存在です。
本作には派手なシーンは少なく、刑務所という狭い空間の中での人間ドラマにスポットが当てられています。
だからこそ、俳優陣の絶妙なキャスティングと、精細な表現に応えられるキャストの演技力の高さに圧倒されます。
おそらくあらゆるシーンで、”この2人でなければ本作は成り立たなかった”という感想を持つのではないでしょうか。
どん底から這い上がる強さに惹かれる
本作の一番の見どころは、刑務所という特殊な環境の中で生まれる複雑な人間関係です。
主人公は冤罪で投獄されているものの、刑務所に入れば悪者として雑に扱われます。
さらに、アンディの品の良さから他の受刑者に目をつけられて性的暴行を受けたり、刑務所長からは不正行為に利用されるなど、状況は最悪です。
しかし、19年間も続くつらく苦しい生活の中でも、親友と呼べる関係が育まれていきます。
しかも、若き白人の銀行副頭取である主人公・アンディに対し、親友となるのは長年服役する中年の黒人・レッド。
刑務所に入らなければ関わることもなかったかもしれない2人が、時間を共にし、相手の人柄やユーモアに触れることで関係を深めていく様子は、とても美しく感じられるでしょう。
また、主人公の発する言葉には名セリフといわれているものが多くあります。
それは、絶望と諦めに支配されてもおかしくない環境にいるにもかかわらず、彼の言葉からは、常に希望を大切にしていることが伝わってくるからでしょう。
彼は決して希望を捨てることなく、自分の居場所を確実に築いていきます。
自分自身を見失わず、最後まで希望を胸に抱いて前に進もうとする彼の強さを見ていると、どんな逆境や苦難が訪れても、希望さえ捨てなければ状況を変えられる、と思えるはずです。
そして、作中で散りばめられた伏線の回収や、主人公の脱獄計画など、ささいに思えた点にも全て意味があったことが後半になって気付かされ、観る人を驚かされる緻密なストーリー構成となっています。
すべての繋がりが明らかになるラストは、温かな感動を与えてくれるでしょう。
「そよ風に寄せる」が名シーンを作り出す
本作は音楽の使い方がとても効果的で、重要なシーンには必ず魅力的な音楽が流れています。
なかでも印象的な曲が、モーツァルトの「フィガロの結婚」で登場する手紙の二重唱『そよ風に寄せる』です。
1人で図書館の管理をしていたアンディが、中古図書として届いた荷物の中から見つけたレコードを刑務所中に聴こえるように放送したシーンで流れます。
静かなピアノの伴奏で始まる有名なアリアで、心が洗われるようなゆったりとした音色。
そして、2人の女性の高さの異なる伸びやかな歌声が混じり合う美しさは圧巻ですね。
殺伐とした刑務所で生きる受刑者たちが思わず聞き惚れたのも頷けます。
しかし歌っている内容は、浮気者の伯爵を懲らしめるため、伯爵夫人とフィアンセが偽の手紙を口述筆記するというものです。
一見、本作のストーリーに関係がないと思えますが、歌詞にある庭の木の下へ来るようにと誘う手紙の内容と主人公が友人に当てて残した手紙の内容がリンクする、面白い構成になっています。
アンディはこの曲を流した理由として「音楽は決して人から奪えない」と語ります。
心を豊かにする音楽は、彼が心に希望を抱くこと同じように、自身を勇気づける存在であると確信していたのでしょう。
不利な環境でも変わらず、希望を信じ続けた彼の内面の清らかさを感じさせる美しい音楽です。
「ショーシャンクの空に」は希望がみなぎる傑作!
映画界の名作ともいわれる『ショーシャンクの空に』は、頑張る人の背中を押してくれる最高の作品です。
現実でも、いじめやパワハラなど、理不尽に思える状況に苦しんでいる人も大勢いると思います。
悪くなるばかりの環境では、ただ耐えることすらつらく感じ、先が見えない不安に押し潰されそうになるかもしれません。
しかし、どんな時も希望を捨てず、状況を打破するために行動し続けることの重要さを、主人公の生き方から感じ取ることができるはずです。
映画『ショーシャンクの空に』を観て、自分の力になる素敵なシーンを見つけてみてください。
TEXT MarSali