悩みに寄り添う歌詞の温かさ
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息をするように 躓く日々に
エンドゲーム 腐っていたって
雲の上から 希望は降らない
期待さえもしなくなった僕に
伸ばしたその腕が
導いてくれたんだ
≪One 歌詞より抜粋≫
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こんな一節で始まるのが次世代ピアノロックバンドとして注目を集める4人組、SHE’Sの『One』です。
アニメ「メジャー セカンド」第2シリーズのエンディングテーマにも抜擢され、大きな話題を呼んでいます。
さっそく歌詞をみていきましょう。
歌い出しを飾るのは「息をするように躓く日々」というフレーズ。
何をやっても思い通りにいかないという非常に苦しい状況の描写から、楽曲はスタートします。
どんなに頑張っても、そしてどんなに希望が訪れるのを待っていても「雲の上から 希望は降らない」という現実を主人公は突きつけられます。
きっと誰しもが経験のある、打ちのめされてばかりの日常から生まれるどうしようもない閉塞感や不安感。
そんな「悩み」に寄り添い、共感するところから彼らが紡ぐ『One』の歌詞はスタートしています。
続く歌詞では「期待さえもしなくなった」主人公の身に、逆境を変えてくれるような出来事が起こっていきます。
自分の手で切り開いた「人生」
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ただ一つしかない道で
ただ一人の君に会えた
運命でも 奇跡でもない
僕らが掴んだ未来
≪One 歌詞より抜粋≫
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困難の中を生きている主人公に光を射してくれるような存在が現れたようです。
「ただ一つしかない道」という表現は、まさしく主人公の人生そのものを表していると言えるでしょう。
自分の目の前に広がっているいくつもの選択肢。自分の未来を決める分かれ道はたくさんあると分かっていても、進みたい道は「ただ一つ」しかないようです。
それは、幼い頃からの夢をかなえることでしょうか。
あるいは、大切な人を守っていくことでしょうか。
聴き手にも想像の余地を残しつつ、主人公の力強い意志を感じることができますね。
自分が思い描く未来で出会った「ただ一人の君」。
逆境の中を生き抜いていた主人公にとってそれは、人生を歩む原動力になるほどに素晴らしい出会いであったことでしょう。
続く歌詞では「運命」や「奇跡」といった言葉をあえて「僕ら」の人生には当てはめていません。
自分の道を進んでいける幸せな状況は、決して空から降ってきたような運頼りのものではなく、自分の力で切り開いてきたものなのだという強い信念を感じます。
言葉に向き合った歌詞に重なる想い
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ただ一言に救われ
ただ一日を生き抜いた
美しくて愛おしい この今が
どんな絶望でも 受け止めよう
君がいるから
≪One 歌詞より抜粋≫
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主人公から「君」に対する熱いメッセージが送られています。
君がくれた「ただ一言」に救われたのだと胸の内を明かします。
大切な人に伝える言葉は、どうしても悩んでしまうもの。
相手のことを大切に思うほど、それを発する勇気もたくさん必要になってきます。
しかし、決して飾らないたった一言で十分な勇気を与えた君。
それをもらって日々を戦いぬいた主人公。
そこから、伝えることが何よりも大事なのだと気づかされるのではないでしょうか。
加えて「言葉」そのものがもつエネルギーの大きさも実感し、思わずハッとさせられる歌詞に仕上がっています。
様々な楽曲を発表する中で歌詞に向き合い自らの思いを伝えてきたSHE’S。
『One』に登場する「言葉」に関するエピソードは、そんな彼らのアーティストとしての姿にも重なって見えるかもしれませんね。
TEXT ヨギ イチロウ