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映画「万引き家族」笑顔に包まれた嘘の家族。幸せとは何なのか考えさせられる傑作作品

日本の実際の社会問題であるネグレクトや年金詐欺を題材にした映画『万引き家族』。ただの犯罪映画の一言ではまとめられない偽りの家族の絆に、幸せとはなんなのかを考えさせられます。世界で絶賛された本作の魅力をご紹介します。
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世界が絶賛した是枝監督作品


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映画『万引き家族』は、2018年に公開されました。

是枝裕和監督は約10年の構想をかけてこの作品を作り上げました。

作品に対して国内では、犯罪を肯定しているようだと言った意見や、日本の誤ったイメージが海外に伝わってしまうのではないかと批判的な意見もありました。

しかし、海外の映画評論家をはじめとした多くの人々は、経済大国の一つである日本が、自国の経済や社会問題を隠さずに作品として制作したと高い評価を得ました。

その結果、監督と主要キャストは様々な賞を受賞。

中でも第17回カンヌ国際映画祭では、最高賞の「パムル・ドール賞」を受賞し、世界的にも大変な話題となりました。

作品の題材には度肝を抜かれましたが、キャストの超自然的演技は圧巻です。

映画として見ていたはずが、段々とリアルなドキュメンタリー作品を見ているような錯覚を起こすストーリーとなっています。

「声に出して呼んで」タイトル原案に対する想い



実は『万引き家族』というタイトルになる前は「声に出して呼んで」がタイトル案に上がっていました。

家族みんなが声には出さずとも、色々な感情を抱えているという意味から、このようなタイトル案があったそうです。

作中でも声には出さずに、口を動かして言葉を表現する場面が多いです。

ですが「声に出して呼んで」というタイトルでは伝えたい内容が伝わりずらいため、かなりダイレクトな『万引き家族』というタイトルになったようです。

温かくも悲しい本当で嘘の家族の物語



東京の下町の古い一軒家に、柴田治という男とその妻信代、息子の祥太、信代の妹の亜紀、そして治の母初枝の5人が暮らしていました。

実は全員血は繋がっておらず、赤の他人の寄せ集め家族。

贅沢とはとても言えない暮らしの中でも楽しく毎日を送っていました。

治と信代は仕事はしていますが、生活の足しにしかならず、初枝の年金をあてにし、治と翔太が万引きをして生計をたてていました。

ある日、寒空の下を治と翔太が歩いていると、団地のバルコニーにいる少女を見つけます。

寒くて可哀想だからと治は抱えて勝手に自宅へ連れ帰ってきてしまいました。

最初は返してくるようにと促していた家族でしたが、少女の身体中にある傷を見て、虐待をうけているとわかり、少女を「りん」と名づけ、家族として迎え入れます。

治は今まで翔太と2人で万引きをしていましたが、少女にも万引きを教え、言われるがまま少女も万引きをするようになっていきました。

しかし、そんな楽しい家族としての日々は長くは続きませんでした。

次第にそれぞれの隠していた事が明かされていきます。

犯罪で繋がる嘘の家族

▲家族に関するほのぼのエピソード/映画『万引き家族』カンヌ公式記者会見

柴田治 / リリーフランキー
家族内では父という立場で日雇いの工事現場で働いてはいますが、息子の翔太と万引きをすることで生計をたてています。

小狡いけど憎めないお調子者の父親を演じるのは、俳優のリリーフランキー。

彼が演じることで、哀愁というスパイスが加わり人間味あふれる父親像となりました。

柴田信代 / 安藤サクラ
家族内で母という立場でクリーニング工場で働いています。演じるのは女優の安藤サクラ。

出産前にオファーがあり、母親となる彼女の精神面から柴田信代を演じれるか不安だったようですが、うまく演じきってくれました。

田初枝 / 樹木希林
家族内では信代の母という立場でおばあちゃんと呼ばれています。演じるのは女優の樹木希林。

彼女はこの作品に挑むにあたり、入れ歯を抜いて役に挑んでいます。

気持ち悪いおばあさんにこだわった役作りを徹底し、髪も伸ばしたりと気持ち悪さに拍車がかかり、劇中でも印象深い役となりました。


他にも柴田亜紀役の女優松岡優や柴田翔太役に子役の城桧史、りん役に子役の佐々木みゆが偽装家族を上手に演じています。

俳優陣の見事な演技が、実にリアリティーを感じる作品になったと言えます。

また、子役の2人が大人たちに劣らないほどに役をまっとうしていたことで、作品の質が格段に上がったのではないでしょうか。

細野晴臣が奏でる作品に溶け込む音楽



映画を彩る音楽は、数々のアーティストや映画音楽などを手がける細野晴臣。

是枝監督とは初のタッグ作品でした。

劇中曲の全14曲を手がけ、オリジナル・サウンドトラックのCDも発売されています。

作曲・演奏・MIXの全てを彼が全て手がけた音楽作品です。

映画音楽というと、物語の展開やキャラクターの心情に沿って音楽のテンションも大きく変化しますが、この作品の音楽は異なります。

作品上のキャストの息遣いや自然音を大事にしており、映画音楽として珍しく音楽としての主張がほとんどありません。

映画を見終わった後に、音楽が鳴っていたかどうか思い出せないほど、一つの作品として自然に存在しています。

彼らは確かに家族だった

▲『万引き家族』大ヒット上映中!/本予告

犯罪を続けながら生活するという本来あってはならない状態でありながらも、幸せそうな家族。

彼らを見ていると家族とはなんなのか、血の繋がりだけでは言い表せないなにかが見えてきます。

貧困や教育など様々な問題を盛り込んでいる映画『万引き家族』。

複雑な題材ながら、感情移入してしまう物語の展開と、俳優たちの演技に引き込まれていきます。

お互いを想い、お互いを確かに家族だと言い合えた柴田家。

是非、家族を超えた絆で結ばれた彼らの物語をご覧ください。


TEXT 佐藤愛

1947年東京生まれ。音楽家。 1969年「エイプリル・フール」でデビュー。1970年「はっぴいえんど」結成。73年ソロ活動を開始、同時に「ティン・パン・アレー」としても活動。 78年「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者···

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