デビュー30周年を迎える彼女
渡辺美里がデビュー30周年を迎えた。1985年にデビューし、翌1986年に『My Revolution』が大ヒット。
これをきっかけに一気にスターダムを駆け上がり、この曲が渡辺の代表曲として定着した。
作詞を担当した川村真澄は、”ひとりでも強く自分でやっていける女の子”という像が渡辺と会って浮かんできたという。
独りで頑張っている若い人にぜひ聞いてほしい内容だ。
彼女に突如、起きた革命
My Revolution
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さよなら Sweet Pain
頬づえついていた
夜は昨日で終わるよ
確かめたい
君に逢えた意味を
暗闇の中 目を開いて
きっと本当の
悲しみなんて
自分ひとりで癒すものさ
わかり始めた
My Revolution
明日を乱すことさ
誰かに伝えたいよ
My Tears My Dreams
今すぐ
夢を追いかけるなら
たやすく泣いちゃだめさ
君が教えてくれた
My Fears My Dreams
走り出せる
≪My Revolution 歌詞より抜粋≫
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悩んでいる女性が一人。彼と別れてしまったのだろう、夜になると寂しくて彼のことを思い出している。
足音、空き地に倒れていたバイク、壁の落書き。彼と出かけた先で感じたものが生々しく蘇る。全てが楽しい思い出だ。
でも、それも昨日までのこと。自分には明日がある。自分の夢のために強く生きようと決意する。
簡単に泣いたらダメだと、彼が教えてくれた。夢を追いかけるために強くなろうと彼女が気持ちを切り替えたのは、まさに彼女に起きた”革命”だった。
素晴らしい表現力
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感じて Heart Ache
笑顔が多いほど
独りの夜がつらいね
わけあいたい
教科書のすき間に
書いてた言葉 動き出すよ
ホームシックの
恋人たちは
ユーモアだけを信じている
交差点ではかけ出すけれど
手を振る時は
きゅんとくるね
たった ひとりを
感じる強さ
のがしたくない 街の中で
≪My Revolution 歌詞より抜粋≫
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主人公の感情にグッと寄った表現や、情景を俯瞰した詩的な表現が交互に織り交ざった歌詞。それを渡辺の厚みのある声が歌い上げる。
川村が感じたような力強さやクールな印象が渡辺の歌声から伝わってくる。アイドルらが帯びる”女の子”らしさはない。
シンガーとしての完成された声に”女性”らしさが宿っているからだ。
それが小室哲哉のテクノサウンドと合わさることで、人工的で機械的、ドライで無機質な世界観を醸し出す。
”夜の街の中でひとりで走り抜けていくような、少し寂しさを背負った感じ”と川村は渡辺のことを表現したそうだ。
「寂しい」や「独り」というマイナスの要素だけでなく、「夜」や「走り抜ける」から連想される疾走感・スピード感的な涼しさも求められる。
それを形にして見せた小室はさすがとしか言いようがない。
大事にしたい価値観
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求めていたい
My Revolution
明日を変えることさ
誰かに伝えたいよ
My Tears My Dreams
今すぐ
自分だけの生き方
誰にも決められない
君と見つめていたい
My Fears My Dreams
抱きしめたい
≪My Revolution 歌詞より抜粋≫
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最近の女性は強い。”結婚”という幸せを選択せず、仕事や趣味などを楽しんで自分らしい生き方を選択する人も増えた。
社会のインフラの拡充も手伝って、ある程度のことは一人でもできる便利な世の中になった。
言いたいことを言って、ツラければ辞めればいいという考え方も浸透した。
でも“本当にそれでいいのか?”とこの曲を聴くと考えさせられる。簡単に逃げていたらいつまで経っても人は成長しない。
夢だけじゃなくて、痛みも抱えていかなければ。この曲が作られた約30年前のそういう価値観。大事にしていきたいと思う。
TEXT 田中利知